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「北朝鮮問題」討論欄

「国連憲章第七章制裁決議」提案に思う

2006/07/15 どろ 50代 会社員

 いつもは他の掲示板に投稿している者ですが、当掲示板の常連である長壁さんに促されてこちらにも投稿させていただきます。

 報道によれば制裁決議を巡る国連での交渉に決着がつきそうだとのことで、ホッと胸をなで下ろしています。日米と中ロの理性による歩み寄りが実現しそうだからです。
 日米が国連憲章第七章にもとづく制裁決議をあきらめ、その代わり中ロは非難なしの議長声明から一歩進んで非難決議(但し制裁なし)を提案、日米がこれに同意する見込みとか。

 これはこれで良かったけれど、日本が国連決議第七章にもとづく非難決議を積極的に推進したのは、日本の戦後史を画する一大事件だったと私は思っています。

 「国連憲章第七章」は「平和への脅威」「平和の破壊」や「侵略行為」に対する武力制裁を認めています。湾岸戦争も、イラク戦争も、ソマリア介入も、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争介入も、すべてその軍事行動の根拠は「第七章」でした。

 こんな決議の提案者になる以上、万が一北朝鮮に武力制裁を行うとなった場合、後方支援だけですむはずがない。真っ先に国連決議を実行しなければスジが通りません。ですから日本政府の「第七章決議」提案は、北朝鮮を攻撃する国連軍の先頭に自衛隊が立つことを内外に宣明したのと同じ意味をもつでしょう。

 よしんば日本にその意図がなくとも、北朝鮮をはじめとする他国は、日本が「第七章決議」を唱えたことを以上のように解釈したに違いありません。こんなものに中国が賛成するはずがありませんし、韓国が怒ったのも当然です。北朝鮮からしてみれば対等な対話の拒否であり、平和的解決努力の放棄に他なりません。少なくとも北朝鮮にそう言わせる根拠を与えてしまったことは間違いありません。

 いや、ことは対北朝鮮だけで終わりません。
 「第七章」決議がもしも通れば勿論、通らなくても、いや提案したというだけで、今後は国連決議にもとづく世界中の重武装PKFに自衛隊を派遣しない理由に乏しくなってしまいました。そうでなければ、日本は自分のときだけ世界に支援を求めておいて、他人のことは知らん顔なのかと非難されてしまうでしょう。
 「第七章」決議の提案という事態は北朝鮮非難決議という範囲にとどまらず、対外的武力行使についての国是を転換し、早急な憲法改変を促す重大な問題だったと思います。

 そもそも北朝鮮は日本を侵略したのではなく、武力攻撃したのでもなく、その意図を宣言したのでもありません。
 中距離弾道弾実験が不穏当な行為であるのは間違いありませんが、これだけをもって武力制裁の理由とするには国際常識から見て根拠薄弱です。
 まして国際紛争を解決する手段として武力を行使しないと言う憲法をもつ我が国が軽々しく武力制裁を主張するなど、許されることではありません。

 しかしこのこと、その意味をメディアは伝えない。
 国民もよく知らずに制裁だ、制裁だと無責任に囃し立てている。
 この事態はなんなのでしょうか。
 若い自衛官たちが毒ガス漂う凄惨な戦場でのたうち回る報道に接してから、こんなはずではなかったと後悔しても遅いのです。
 本当に恐ろしい時代になったものです。

 今回、日本政府は中ロに妥協して「第七章制裁」の文言を取り下げるようですが、二度とそのような恐ろしい提案をさせないため、日本共産党をはじめとする野党には国会において「第七章制裁決議」のもつ意味を明らかにし、それが日本からの戦争宣言であり、憲法違反の提案であったことを追及していただきたいと思います。

 もちろん私もできる範囲で周囲に伝えたいと思っています。
 長々としたまとまりのない文章を読んでいただき、ありがとうございました。