国連安保理事会、北朝鮮非難決議については、世界中の
政府が、まあ、こんなところだろうと、とりあえず安堵してい
るようである。それについて私は次のように思う。
(1) アメリカは日本より中国。
ブッシュ政権は日本よりも中国の面子を立てた。結局のとこ
ろ、国連憲章第7章外しにアメリカが歩み寄り、日本もこれに
従って、決議は成立した。中ロの主張が形の上では通った訳で
ある。北朝鮮は即座に、これを拒絶することを宣言した。今後
の展開が、北朝鮮が六ヶ国協議にスンなり戻るという形になる
とは到底思えないが、少なくともこれで見えてきたことは、ア
メリカは極東問題の処理は当面、中国に負担させる戦略である
という説が本当かも知れないということである。ブッシュ政権
はその当初、イラク、イラン、北朝鮮を悪の枢軸と称した。北
朝鮮を攻撃の対象とすることは、その同盟国である中国を敵と
することを意味する。ブッシュ政権は、当時、その唯一、最強
の軍事力をもってすれば、中東とアジアでの二正面作戦が可能
だとでも思ったのであろうか。しかし、その後の展開は、イラ
クの泥沼に足を取られ、窮地に追い込まれていることは、世界
中が知っている。この上極東でのトラブルの負担を引き受ける
余力はないというのが、実情ではないのか。少なくとも、日本
の憲法九条廃棄が実現し、董w)・u?{の自衛隊が制限のない軍
隊となり、アメリカの軍事力として使えるようになるまでは。
一方、中国経済の目覚しい成長は、アメリカの資本にとって
、政治的覇権を争う敵としてよりも、経済的利益を追求するマ
ーケットとしての魅力の方が、はるかに大きくなったのではあ
るまいか。
最近アメリカの財務長官が更迭された。ウォール街金融界の
代弁者としてゴールドマンサックスのポールソンなる人物が新
しく就任した。マスコミでは彼が豪腕の経営者として報じられ
ているが、ウェブ情報では、彼は、トップクラスの財界人であ
るだけでなく、米財界切っての中国通であるとのことである。
中国との往来の経験、人脈の豊富なことは、並でないとのこと
である。右派キリスト教、ネオコン、軍事覇権優先でスタート
して、現在行き詰まって落ち目のブッシュ政権を、「資本の論
理」の代弁者としてのポールソンが、果たして救えるのか、見
ものである。
一方、今回の「非難決議」で、いいようにダシに使われた感
のある(勿論日本政府もそれ位のことは織り込み済みであった
ろう。)日本はどうなるのであろうか。最後までブッシュのポ
チを演じた小泉の後継者が政権を担えば、先行き、更に滑稽な
ことになるかも知れない。例えば阿部政権ができたとしよう。
北朝鮮制裁、靖国参拝、嫌韓、嫌中をマスコミに煽らせ、この
まま憲法九条廃棄めざして突き進むであろう。そして気が付い
たら、アジアでの政治的リーダーシップは中国が握り、中国市
場にはアメリカ資本がしっかり入っていたということに成りか
ねない。経団連が靖国参拝に異を唱えるのは、それを心配して
いるのかも知れない。
(2) 金正日は核兵器開発に執心する。
今回、中国が北朝鮮の説得に失敗したという説がもっぱらで
ある。私も、当たらずと言えども遠からず、だと思っている。
しかし、中国の「失敗」や「面子」よりも、何故こんな「無謀
」をあえてしたのか、その理由が問題だと思う。昔1964年、中
国が初めて核実験を行った時、中国の副首相、陳毅が「我々は
、ズボンを履かなくても、核兵器は持つ」と言ったという新聞
記事を読んだことを記憶している。当時の貧乏国、中国が核兵
器など持てるのかという見方に反論したものである。アメリカ
と敵対し、ソ連の下に付くのも潔しとしない中国としては当然
だったのかも知れない。
今の金正日は、それと似たような心理状態なのではないか。
アメリカに対抗し、中国の干渉も排して、父親の金日成が残し
た金王朝を維持するための軍事力としては何が必要か。「先軍
政治」に束縛された、この二代目独裁者の思考には、軍事以外
の政治的選択肢の有効性は受け入れられないのであろうか。
通常兵器、航空機、戦車等は劣化する一方であり、その更新
、調達は財政上、全く不可能である。北朝鮮にはウラニウム資
源がある。核爆発物は既に入手した。後はミサイルを完成すれ
ばよい。そこで、発射実験。以上は単なる類推ではあるが、い
づれにせよ、北朝鮮の行動が政治的動機、(瀬戸際外交)だけ
によるとは考えにくい。その結果としての政治的デメリット、
政治的リスクが余りにも大きいからである。そこには核兵器開
発の執念があると考えるほうが自然ではあるまいか。
だとすれば、中国もそのような隣人とは、とても付き合いき
れない。そこには中国自身がいづれ、金正日の失脚を画策する
する可能性が考えられる。余りにもリスクが大きい朝鮮半島の
問題の暴発を避け、ソフトランディングを図るとすれば、それ
が最も効率的ではある。