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「北朝鮮問題」討論欄

やはり北の脅威は幻です

2006/08/07 どろ 50代 会社員

 2006年8月6日読売新聞が北朝鮮ミサイルの解析結果を報道しています。
 それによれば飛行距離は当初発表の約半分の300~400Km。着弾地点はいずれも航行禁止海域内に位置し、半径約50キロの円内とみられるとか。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060806i102.htm?from=main1

 これは6発のミサイルが半径50Kmの範囲に散らばった落ちたというなら、着水点は最大で100Kmも離れているわけです。
 北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込むのならば在日米軍基地と自衛隊駐屯地を狙うことになりましょうが、目標から50Kmもはずれるようではお話になりません。こんなに精度が悪くては戦術ミサイルとして使い物にならないのが明らかです。
 テポドンが失敗だったとか命中精度が悪いことはすでにミサイル発射翌日の7月6日、アメリカの軍事シンクタンク「グローバル セキュリティ」が解析していたのでいまさらという気もしますが。

http://www.globalsecurity.org/wmd/library/news/dprk/2006/060706-nkir2625.htm

 着弾地がランダムだとすれば、確率的にはその7~8割が山か田んぼに落ちることになります。北朝鮮が保有しているミサイルのうち日本に届くノドンは100~300発と言われていますから、人に危険が及ぶ範囲に着弾するのは30~100発です。このレベルの攻撃をもしも日本が受ければ殿くらいの被害が出るか、大戦時の空襲と比較してみましょう。

 私は以前姫路という地方都市の空襲被害を調査したことがあります。
 1945年6月22日、海軍の紫電改製造工場が爆撃され、工場と周辺地域一帯が壊滅、250名の死者がでました。
 この時B29から投下されたのは500Kg爆弾250発です。

 ノドンCのペイロードは最大で約700Kgとされていますから、姫路空襲に使われた爆弾より一回り大きいことになりますが、2倍もの威力はありません。
 すると30~100発の全弾が集中的に一地域に着弾しても、その被害はせいぜい姫路空襲と同程度。つまり一地方都市どころかその中の小さな一区画に打撃を与えられるほどの威力でしかないのです。実際には命中精度が悪いので一発ずつバラバラに着弾しますから、被害程度は数十分の一に低下するはずです。

 ヒズボラはイラン製FAJR-3ミサイルをイスラエルに向けてすでに2000発近く発射していると見られますが、人口が希薄な地域に着弾していることもあって死者は数十人。大きな経済的被害もありません。
 イラン・イラク戦争で双方は北朝鮮製スカッドミサイルを何百発も撃ち合いましたが、お互いにほとんどダメージを与えていません。
 ミサイルとはそういうものでしかないのです。

 ついでに言えばロケット兵器は旧ソ連や米軍がやったように、集結した敵部隊に向けて集中的に大量投射するしか効果的な使い道がないのです。それには弾道ミサイルは高くつきすぎます。北朝鮮はバカな選択をしたものです。

 ノドンが心理的脅威のほか何の役にも立たないことは、北朝鮮自身がよくわかっているはずです。そんなものを撃ち込んで戦争状態を作り出し、経済制裁や軍事制裁の口実をつくるほど彼らは愚かではないと思います。そもそも戦略的に何の意味もない日本攻撃に北がどうして踏み切らねばならないのでしょうか。
 現実世界は戦隊もののドラマとは違います。意味もなくいきなり戦争を仕掛けてくることはありません。それが軍事常識です。

 もしも日本の右翼政治家が唱えるようにミサイルが脅威であれば、どうして米軍が安全なワシントンにある第一軍団司令部をノドンの射程内に位置するキャンプ座間へわざわざ移動してきたりするでしょうか。ノドンが張り子の虎であることを一番知っているのは軍事関係者です。

 ここでミサイル発射についての自衛隊準機関誌「朝雲」の論評を紹介しましょう。

>平壌放送は、ミサイル発射は自主権であり(日、米の)制裁には戦争でこたえると威勢のいいことをまくし立てている。
>だが、今の北朝鮮にいったい何が出来るか。
>命中精度も悪く、核弾頭を積めないミサイルを撃ち込んでも袋だたきに遭うだけだ。
>戦闘機も飛べないほど燃料に困っているのに戦争をちらつかせて威嚇するなどお笑いぐさだ。
http://www.asagumo-news.com/toki/sungen060713.html

 そう、お笑いぐさなのです。
 これが軍事的には常識で、正しいのです。
 福祉や教育予算を圧迫するMDはまったく不必要です。
 北朝鮮のポンコツノドンより、知識に乏しい国民をおとぎ話のような脅威論で怖がらせて軍拡容認世論をつくろうとしている勢力の方が、よほど脅威だと私は思います。
 幻の脅威に怯える国民の心理を巧みに利用して、ミサイルディフェンスをはじめとする軍拡政策を推進しようとしている政府・与党の計画を許してはなりません。