北朝鮮は、国家財政規模が3,300億円(2005年)であるが、対日・覚醒剤・偽札・偽タバコなどの密輸で650億円、イランなどへの武器・ミサイルなど軍需品密輸で500億円、合計1,150億円(国家財政の約35%)に上る物品、それ加えて贅沢品が船舶検査などの臨検で封鎖され、しかもアメリカによる金融制裁(マカオの銀行口座凍結)で、かなり厳しい状況にある。
北朝鮮の金正日は、中国の唐家セン国務委員と会談した際、6カ国協議への復帰の条件としてアメリカによる金融制裁の解除を求めたと伝えられているが、アメリカは北朝鮮に対する金融制裁は、マネーロンダリングという不法行為に対するアメリカの国内法による発動であり、核問題とは無関係だとして拒否したという。アメリカ国内法の適用というのがイマイチ分からない。
かって小泉政権は、2001年9月に「日朝平壌宣言」という道理ある交渉の足場をつくりながら、北朝鮮問題の解決のうえで、しかるべき役割をはたせずに今日に至った。逆に、「北朝鮮の脅威」をあおりたて、有事法制の強行にこの問題を利用することによって、逆に軍事的緊張の悪循環をつくりだしさえしたのである。
ところが、今回の事態と日本の対応についても、元防衛庁長官の石破なんかは、(1)「周辺事態」と認定して「船舶検査法」を発動し自衛隊が臨検に参加するとともに、「周辺事態法」に基づき米軍に後方支援を行い、(2)「船舶検査法」は相手船舶に対する要請・説得が中心であるため、自衛隊に強制措置の権限を持たせる特別措置法を新たに制定せよ、などと政府に迫っている。
もつとも、自衛隊による臨検は「船舶検査法」で規定され、給油など米軍への後方支援は「周辺事態法」で定められているので発動にあたっては「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」(周辺事態)と認定することが必要であるが、、自民党内ではこのほか、米軍だけではなく、臨検を実施するすべての外国軍に後方支援を行えるよう特措法の制定を検討する動きさえあるようだ。
周辺事態法の発動など軍事的措置は、安保理決議そのものに反するし、事態を一層悪化させるだけであることは自明なはずなのに、何故か。米日の共同作戦くさい、なんて考えるだけで憂鬱になるネ。 10/26