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「北朝鮮問題」討論欄

「アメリカ」と「ルーズベルト」は別のもの

2006/12/25 オーガ

 フランクリン・ルーズベルト大統領は1945年、63歳で 病死した。対独戦の勝利を目前にしての急死であった。もしも 彼が対日戦の勝利をも見届けて、もう数年生きていたなら、戦 後アメリカ政治はどうなっていたであろうか。
 有名なニューディール政策は、大戦の勃発により、1940 年以来変容を余儀なくされた。アメリカでは軍需品の大量生産 と兵員の大幅増により大量の失業者を吸収できるようになった 。軍需と軍事に大きく舵を切ったのであるが、ルーズベルトの 死により、その舵は元に戻されないままである。
 敗戦後の日本の方向性を決定づけたのは、アメリカの統治政 策であるが、これを推進したのは彼の副大統領で、彼の死後、 大統領に昇格したトルーマンであった。またその対日統治策の 骨子はルーズベルト存命中の1944年頃にはまとまっていた らしい。だから敗戦後の日本を変えたのは「アメリカ」という よりは「ルーズベルト」といった方が正確であろう。
 ルーズベルト後のアメリカを託されたトルーマンであったが 、フェアディール政策を打ち出すものの、十分な成果は得られ なかった。それ以降の戦後のアメリカ大統領で、ルーズべルト のように新たな社会改革を提唱したのは、CIAに暗殺された ケネディ大統領ぐらいだろうか。後はただの俗人大統領ばかり だったような気がする。
 大戦中に舵を切られた軍需・軍事路線で、景気と雇用が確保 されたからといって、これを見直すこともせず、今日に至るま でその路線を「保守」し続けているだけである。そのためアメ リカはたえず新しい「敵」を必要としている。予算の中で必要 以上に軍事予算の割合が多いならば、立派に軍事国家であろう 。日本なら、「工事のための工事」に予算を必要とする手合い といったところだろうか。
 「アメリカ」は「ルーズベルト」ではない。「ルーズベルト 時代のアメリカ」が特別に良い国だったのであって、「アメリ カ」は本来大して良い国ではない。そう考えた方が、現代を考 える上で、よほどわかりやすくないだろうか。「アメリカ」と 「ルーズベルト」とを、はっきりと区別するべきであろう。
 革新主義のセオドア・ルーズベルト、ウィルソン、フランク リン・ルーズベルトと続いた、アメリカの社会改革の流れは、 フランクリン・ルーズベルトの早すぎる死によって途絶え、そ の方向性を見失ってしまったまま、今日に至っている。今のア メリカ、そして日本、また世界の国々に必要なのは、1度途絶 えた社会改革の流れを取り戻し、これを新たに発展させていく ことではないだろうか。