米国は05年9月に、バンコ・デルタ・アジア(BDA)を
北朝鮮によるマネーロンダリング(資金洗浄)に便宜を図った
疑いがある金融機関として、米国金融機関との取引を禁止し、
これを受け北朝鮮関連資金約2,500万ドル(約30億円)
を凍結したが、北朝鮮はこの凍結に対抗して非核化措置の履行
を拒否したのであった。
その間、日本の安倍政権が北朝鮮のこの動向を非核化措置の
不履行だと盛んに言い立て、各方面に一層の制裁を働きかけて
いたことは周知のところである。
ところが、本月15日、マカオ金融管理局の報道担当官がB
DAで凍結されていた北朝鮮資金が、マカオから米連邦準備制
度理事会(FRB)傘下のニューヨーク連邦準備銀行に届いた
ことを明らかにし、今後、ロシア中央銀行を経て同国の民間銀
行にある北朝鮮関連口座に入金されることになった。
02年に寧辺からIAEA(国際原子力機関)の査察官を追
放して核開発を再開、昨年10月には核実験を強行した北朝鮮
であったが 北朝鮮は4月20日に国際原子力機関(IAEA
)のエルバラダイ事務局長に書簡を送り、「BDAに凍結され
ている資金が実際に解除されたことが確認され次第、直ちにI
AEA事務代表団を招請し、2月13日の合意による寧辺核施
設の稼働中止とそれに対する検証監視手続き問題を討議する準
備ができている」と言明していたように、16日には、IAE
A代表団を直ちに招請したのである。したがって、今年2月1
3日の6カ国協議で合意した「初期段階措置」の履行も現実的
になったといえる。
つまり、北朝鮮が核施設を活動停止・封印し、IAEAによ
る査察再開を受け入れる一方、5カ国は北朝鮮に重油5万トン
に相当するエネルギー支援を実施し、また30日以内に、米朝
国交正常化,日朝国交正常化,朝鮮半島の非核化,経済・エネ
ルギー協力,北東アジアの平和・安全メカニズムなど、5つの
作業部会が開催され、初期段階措置実施後に北東アジアの安保
協力のため閣僚会議を開かれることになる。
こうなると、安倍政権が繰り返し主張している「拉致問題の
解決なくして日朝国交正常化なし」というドグマをどうするか
が外交上の重要課題となってくること必至だろう。米朝国交回
復しても、日本は「拉致問題の解決なくして」と、あくまで「
埒の明かない」呪文を唱え続けるのだろうか。