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「科学的社会主義」討論欄

石原慎太郎氏と民主主義学生同盟

2013/4/5 櫻井智志

 私は、3月30日付け本欄「左翼から右翼への転換とマルクス主義の方法の問題」において、以下の記事を記載した。

【再掲】
①「慎太郎が高校一年生の時だった。学生運動が盛んになろうとしていた48年に、民主学生同盟にいち早く入り、学内に社会研究会を作った。日本共産党へのヒロイックな気持ちにかられていた時、母は”大衆のために両親や弟 を、そして地位も財産も捨て、獄につながれても後悔しない自信があるなら、私は反対しないが、その覚悟をしてほしい。それならお父さんが、どんなに反対しても、私は賛成する”と言った。この言葉にそのあくる日から慎太郎は学生運動を離れている」
 慎太郎は後に「主義主張が母親の意見で変わるなんてウソですよ」と否定的に語っているが、慎太郎は若い時から「家族」を大事にするタイプだった。

②この話で出てくる民主学生同盟は、日本共産党との関係はやや微妙である。日本共産党の幹部であった志賀義雄氏(徳田球一氏とともに獄中に十八年いて非転向を貫いた)が、ソ連の核実験の時に、共産党主流派と対立してソ連を支持した。そのために志賀義雄氏、中野重治氏、佐多稲子 氏らとともに共産党を除名され(主体的には離党して)「日本共産党日本のこえ」を創設した。このときに共産党の青年組織であった民主青年同盟(民青)と別に結成されたのが民学同である。

③大江健三郎氏、江藤淳氏らとともに「若い日本の世代の会」を結成して安保反対の意思表示もしたことがあった。

【訂正と補遺】
 ①の記載は全文そのままである。
 ②は、事実関係では否定するつもりはないが、石原慎太郎が参加していた「民主学生同盟」は1948~9年のことであり、志賀義雄はその頃日本共産党幹部で共産党を支える立場にあった。つまり「民主学生同盟」と「民学同」とは時代をわずかだがずれた組織なのである。「民学同」は1963年前後に結成されている。なお、国会図書館に保存されている機関紙によれば、「民主学生同盟」ではなく「民主主義学生同盟」が正式の呼称のようである。
 なお、①の文は東京新聞牧太郎氏の随筆に拠っているが、「民主学生同盟」という呼称は、『サンデー毎日』が「五つの道をゆく”石原慎太郎批判”」と題し、9ページの特集を組んだ(1 956年9月9日号)に掲載されている中に出てくめものを牧氏は踏襲されている。
 民主主義学生同盟は、1948~9年に機関紙が国会図書館に保存されている。これらについてご教示いただいた畏友牧梶郎氏に心からお礼を述べたい。石原氏の参加した「民主主義学生同盟」は左派系の組織であるが、高校一年の石原慎太郎氏が参加したことは事実である。ただ、どの程度の規模の組織なのか、成立から消滅までどのような経緯を辿ったのか、それらについては小生にはわからない。ウィキペディアなどインターネットで検索しても、民学同は1963年の志賀義雄氏と関連のある組織のことしか掲載されていない。唯一の例外が国会図書館に機関紙が保存されている一件のみである。そこには以下の記述が ある。

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学生戦線. 民主主義学生同盟機関紙 [1号(1948.11.7)-終刊号(1949.3.5)]
民主主義学生同盟[編]
詳細情報
タイトル       学生戦線. 民主主義学生同盟機関紙
著者
民主主義学生同盟[編]
大きさ、容量等     マイクロフィルム
注記          本タイトル等は最新号による
注記           プランゲ文庫
注記          「青年の旗」と「労働青年」と合併し「民主青年」となる
注記          ロール・コマ番号: G8: 089-106
注記           原資料の出版事項: 東京 : 民主主義学生同盟
巻次           [1号(1948.11.7)-終刊号(1949.3.5)]
NDLC           ZZ26
資料の種別        新聞
資料の種別        マイクロ資料
刊行頻度         旬刊
刊行状態         不明
言語(ISO639-2形式)   jpn : 日本語
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007132366-00
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③「若い日本の世代の会」は正しくは、「若い日本の会」である。主な参加者として、大江氏や江藤淳氏、石原慎太郎氏以外にも、谷川俊太郎氏、寺山修司氏、浅利慶太氏、永六輔氏、黛敏郎氏、福田善之氏らが参加している広範な規模であることもわかったので補足させていただく。