1、 中核派というセクトがある。50年も前に革共同が創立されてから、幾度かの分裂を経て今日に至っているのだが、革マルとの激しい殺人的内ゲバを繰り返して来たので有名だ。
このセクトはなかなかユニークな革命論をもち、日本中階級的矛盾が噴出する寸前で、火を付ければ、今にも革命情勢がやってくるという、打ち上げ花火的革命論を叫び続けて、早や、40年の月日がたとうとしている。当時の20代30代の血気盛んな若き革命家たちももう60代70代を迎え、革命的情勢が到来することもないままに自分の方がすっかり年老いてしまった。(本多書記長も生きていれば、もう75歳くらいだ。)つまり、論理的には破綻ということだ。(40年の歳月は重い)
まあ、彼らの主張は客観的情勢に根ざすのではなく、主観的感情論というか激情論とでもいうようなもので、只ただ激烈な言葉の羅列と論理の飛躍と勝手な断定としか思えない代物だった。(激情など40年ももつわけがない。)
しかし、はるか30年前のある意味懐かしいアジ演説調の主張に、久々にこのサイトで触れることとなった。
言わずと知れた、連合氏の主張である。それもそのハズで、彼は元中核派(現役ではないのかな?)だったということなのだ。
彼の主張も、やはり、具体的なデータや根拠を示さないままに、一面的な自己の議論を激烈な言葉で飾り立てて、真実であるかのように装っている。以下にその議論を見てみよう。
2、まず、社会民主主義的改革改良路線と言うものは、さしあたりは社会民主的・・という形容詞がつくが、それと、実際の社会民主主義政党とは混同されるべきものではないということを指摘しておこう。
つまり、正確には民主的改革改良とでも言うべきものなのである。
ただ、欧州では社会民主主義政党やその政権と結びついてみえることが多いので、さしあたりそう呼ばれている。
さて、ではどう考えるべきか、、
A、まず、その制度そのものである。どういう制度があり、それがどう変遷しているのかということが論じられなければならない。(改善、改悪などなど)これは当たり前のことだろう。
B、その改革改良の社会的推進力、つまり、社会的推進勢力はなにか?という問題を論じていく必要がある。ここには政党も入るが、それだけではなく、労働組合や広範な市民運動団体や農民団体、ボランテイア活動なども含まれるだろう。これも当然だ。
C、そして、その制度を実施した行政主体の問題がある。つまり、政権の問題である。
D、最後にその改革改良への敵対、妨害勢力の問題がもちろんある。
今日では、それは独占資本家階級を中心とする反動勢力である。
以上のようなことを、区別しつつ、論じなければならないだろう。
なぜなら、以下のような実例があるからだ。
実例1、英国の例。早く、1830年代の救貧法改正、工場法(1933、47改正)、鉱山法(1842)、公衆衛生法(1848)等の一連の改革が行われた。その推進勢力はもちろん労働運動だったが当時の政権は自由党政権だった。その後、第二次大戦後の45年7月の選挙後の労働党アトリー政権のもとで本格的な社会福祉政策が実施され、<ゆりかごから墓場まで>といわれるような一連の改革改良がなされていくこととなった。
実例2、日本の例。戦後一貫して、保守自民党政権が存続しているが、医療などに民主的改革改良の制度がみられる。実際、WHOの評価では日本の医療制度は先進国中1~2位である。(日本は中程度福祉国家ということか)しかし、それでも、その推進勢力は社会党総評ブロックや共産党であった。(決して自民党が社会民主主義政党だったのではないし、良心的だったのでもない)そして、妨害勢力は常に、財界・資本家階級である。
連合氏の主張は以上のようなさまざまな要因を含んだ民主的改革改良(つまり、少なくともA,B,C,D,の角度から議論する必要がある。)を一面的にしか考えようしないものであり、実際驚くことに、Aの制度そのものがどう変遷したのかと言うことには全く触れようともしないのだ。
そのほかにも自己の主張を裏付ける、客観的データなどは全く”ゼロ”なのである。このような議論など私は始めてみた。
実際を見てみよう。
3、(12月4日付け科学的社会主義欄の連合氏の投稿より引用)
・・北欧社民が瓦解しているのは、これまでの国家独占資本主義政策=社会福祉国家体制が、経済政策的にも財政政策的にも、限界が生じてきたということです。つまり、それを基盤としてきた経済体制がもたなくなってきたことを示しています。
それが証拠に!!、長く政権についてきた北欧社民党!の支持が低迷し、財政危機を理由に福祉国家を転換しようとする保守側が選挙で勝利することがしばしばあるようになっているからです。つまり、北欧社民は、資本家から福祉国家の転換を迫られているということなのです。・・・
a,北欧社民はすでに瓦解しているのだそうだ。全く言葉だけは激烈だ。しかし、北欧社民とはなんだろうか?そんな政党は存在しない。ノルウエーなら労働党だが、どこの国のことを言ってるのかも定かではない実に雑駁な議論である。
b,国家独占資本主義=社会福祉国家体制なのだというのも一面的な断定にすぎないが、それが経済政策的にも財政政策的にも限界が生じてきたのだそうだ。
Q1,ならば聞こう、一体どこの国のことかね?
スエーデン、ノルウエー、フィンランド、デンマークの4カ国はともに、EUの健全財政基準を上回り、独仏伊英等の諸国より財政は健全であると言うことは常識だと思っていたが、連合氏はどうやらそうではないらしい。
連合氏よ、常識として、新自由主義を掲げる、米国は双子の赤字で苦しんでいるし、また米国に追随する新自由主義の日本の財政赤字は天文学的なものであることを覚えておくことをお勧めする。
Q2, そして聞こう、ならばなぜ、社会的負担がより少ないはずの日米両国は北欧諸国のような健全財政をたもてないのかね?
なお北欧4カ国の健全財政を疑うなら、YAHOOで検索することをお勧めする。(もともとEU基準を超過達成している優等生なんだがね)
私はあなたと違って、できるだけ、具体的データを提供するつもりだからだ。
c,それが証拠に!!!(ついにやっと証拠らしきものを提出するのかな??と思ったら、)長く政権についてきた北欧社民党の支持が低迷し、・・保守側が選挙で勝利することがしばしばあるようになっているからです!?
北欧社民党などという党は存在しない。実に粗雑極まりない主張だ。
もともと、スエーデンを除くほかの3カ国は社民勢力は常勝ではない。
保守党側との政権交代はいつもある。
現在デンマークのみ、保守党政権だが、ノルウエーは労働党が去年の選挙で勝利して政権を奪回している。フィンランドは社民党、中央党、スエーデン国民党(国内少数民族派)の連立政権となっている。
スエーデンでは、現在、( )内前回比
社民党146議席(13増)、それに対し、保守側は穏健党56(27減)
自由党48(31増)となっている。現在社民党、左翼党(共産党)緑の党の連立政権である。政局は安定している。(保守側2党との議席差が大きい。)
それが証拠に!と大上段にかまえた主張がこの体たらくなのだから全くがっかりさせられる。
それでは聞こう。
Q3、具体的にどの国のどのような制度がいつ頃大きく改悪されたのかね?以下、各国ごとに提出しなさい。
Q3aスエーデンの場合。(私はスエーデンの例を参考にすべきとの立場)
Q3b,ノルウエーの場合。
Q3c,フィンランドの場合。
Q3d,デンマークの場合。
これは2のAの制度そのものとその変遷についてで、議論の核心なのだが、連合氏の主張には驚くことにこれが全くないのだから話にもならない。(粉砕どころか完全な自爆・自滅の主張だね。)議論の入り口にも達していないのが連合氏の主張なのである。
他にもいろいろあるが、ま、仕方ないので連合氏が議論の入り口に立つのを待つとしよう。