<帝国主義の理論>
レーニンの分析と対比させて、ローザ・ルクセンブルグの帝国主義分析にも触れて おこう。 ローザは、社会総資本の蓄積問題について「マルクスの矛盾」を批判(ローザの 「批判」については、いまは、マルクスの再生産表式の分析の理論的意義を理解でき ず、そこに直ちに「歴史的現実」による批判を持ち込もうとした点だけを指摘してお こう)し、この批判にもとづいて、総資本の蓄積にとっての不可欠の条件として、資 本化されるべき剰余価値部分の販路と、これに対応する現実的蓄積のための素材的要 素の確保をあげている。そしてこの二条件の確保のために資本制生産は不可避的に非 資本主義的な領域を必要とし、そこからこの資本主義的蓄積の発展が必然的に帝国主 義を結果すると論じた。ローザの分析は、ホブソンのそれと結論において全く異なる とはいえ、その前提はほぼ同一のものに帰着せざるをえなかった。(ローザに関して はローザ『資本蓄積論』、トム・ケンプ『帝国主義論史』、またローザのマルクス批 判の反批判としてはロスドルスキー『資本成立史』第一巻等をあげておこう)。
<帝国主義と民族、植民地問題>
ローザの『社会民主主義の危機』を批判した「ユリウスの小冊子について」では、 「帝国主義の時代にはもはや民族戦争はありえない」とする見解に対し、「帝国主義 強国に対する民族戦争は、ありうることであり、・・・それは、不可避であり、進歩 的、革命的である」、これを否定することは社会排外主義につながると批判している。 また、ローザが、社会排外主義と日和主義との結びつきにふれていないこと、勝利と 敗北とどちらがよいかという議論を展開していることなどをあげて、「分裂をおそれ、 革命的スローガンを完全にいいきることをおそれている」ドイツ左派の弱さを指摘し ている。