まず端的に主張の骨格をあらためて列挙したい。
■北欧各国の経済構造は、武器輸出で保たれてきた。
→武器輸出国でみれば、だいたい第十一位をキープしている
ものの、北欧各国の経済規模からして、世界シェアにおける比
率はかなり大きいものである。スカンジナビアン氏は、武器輸
出国のみを挙げているが、北欧経済の現状からして武器輸出国
第十一位という数字はとてつもなく大きいということを隠蔽し
ている。
■北欧各国の社会保障政策の「変更」と財政危機
→北欧経済も、世界経済不況のあおりや、バブル経済破綻を
向かえ、従来の財政危機突破として、財政再建化と社会保障改
悪が行われた。例、スエーデンの社会保障改悪制度。この制度
は、七十年代の政策よりも後退した政策であり、改悪と負担増
によって財政再建化は図られているに過ぎず、北欧はうまく言
っているとバラ色に描くのは間違いである。スカンジナビアン
氏は、社会保障改悪と財政赤字の関係をおさえず、バラ色にし
か描かない。
■アメリカ帝国主義の限界について
アメリカ帝国主義は、戦後パクスアメリカーナとドル体制で
世界市場を席巻できたのは、六十年代までで、製造業や自動車
産業などでは、日欧帝国主義の不均等発展でアメリカ市場その
ものが食い破られている。なお、グローバル経済やITなどによ
るアメリカングローバルスタンダードや新たな市場争奪は、日
欧帝国主義への巻き返しであったが、結果的にバブル破綻に追
い込まれてしまっている。
そもそも、アメリカ経済は70年代以降、ケインズ財政政策
が破綻し、レーガノミクスの経済政策が継承されているが、財
政赤字はさらに巨額の債務を抱えている。また、ドルの脆弱化
はさけられない。
こうしたなかで、アメリカ帝国主義は戦争によって矛盾を打
開しようとしているのである。もちろん、イラク戦争の泥沼化
は、余計にアメリカ経済の矛盾を抱えていくことになるだろう
が、イラク戦争によってイラクフセイン政権によるユーロ決済
は阻止できたのである。
ITバブル崩壊→世界恐慌という情勢を、イラク戦争と有事に
強い「ドル」でアメリカ帝国主義は乗り切っているが、その繰
り延べはイラク戦争泥沼化を招き、より深い矛盾を突きつけて
いる。
そのなかで、アメリカ帝国主義は国内では、社会保障の解体
と軍拡路線をいっそう推進している。スカンジナビアンのよう
な、修正資本主義的なお説教ではこのアメリカ帝国主義の暴圧
はやむことはないのであり、アメリカ労働者階級によるアメリ
カ社会主義革命しか根本的な道はないのである。
■現代帝国主義について
スカンジナビアン氏は、アメリカ帝国主義や日欧帝国主義の
政策に対して、帝国主義とはいわず、新自由主義と濁して指摘
するわけだが、スカンジナビアン氏は、北欧をモデルとしなが
ら帝国主義に対する修正・改良的な道があるように説教してい
るのであるが、この資本攻勢をそんな修正主義・改良主義では
乗り切れないと私は指摘してきたのである。昔でいうならばス
カンジナビアン氏はカウツキーであるのだ。修正主義では乗り
切れない根拠として、北欧がバラ色ではないこと、矛盾を抱え
ていることをつきだしたが、スカンジナビアン氏はこれを絶対
容認できないということなのである。スカンジナビアン氏は、
根本的に資本主義的政策様式では、労働者の解放はありえない
というマルクス主義そのものの解体をも主張してもいるのであ
る。
スカンジナビアン氏の主張は、マルクス主義ではなく、改良
主義でしかなく、右翼社会民主主義でしかない。
スカンジナビアン氏に問う。スエーデンの財政再建化と社会
保障改悪はセットでくまれたが、これについてどう総括するの
だ?
■スカンジナビアンの非マルクス主義性
そもそもの対立軸を、新自由主義対社民という図式に当ては
めようとするスカンジナビアン氏の思考そのものが、ナンセン
スなのである。
あくまでも現代帝国主義の運動としてアメリカは資本攻勢を
かけているのであり、アメリカブルジョアジーの延命として運
動しているのである。とくに、ソ連の解体以降、残存スターリ
ン主義体制諸国や、新植民地主義体制諸国にむけた市場争奪を
激しく展開しているのがアメリカ帝国主義そのものなのだ。そ
してアメリカ国内では資本攻勢を強め、社会保障縮小→軍拡に
ひた走り、金持ち優遇政策を採っているのである。こうした帝
国主義は労働者にとって利害はないゆえに、アメリカ帝国主義
打倒をアメリカ労働者階級は掲げて戦うべきなのである。北欧
のようなあり方を説教しても、根本的解決にはならないのだ。
スカンジナビアン氏の主張は、マルクス主義でもなんでもなく
、現代のカウツキー主義・ペルンシュタイン主義・右翼社民な
のである。彼の骨格に、資本主義的生産様式の破棄がないのは
、そのためである。反動も反動、極反動なのが、反革命たるカ
ウツキー主義者らの正体なのだ。いやしくも、科学的社会主義
を掲げる日本共産党に、カウツキー主義的立場で軍師気取りで
あれやこれやを説教しまくり、原則的マルクス主義を主張して
こられた、寄らば大樹の陰さんや銀河さんに悪態をつくという
のが、スカンジナビアン氏のあつかまさなのである。スカンジ
ナビアン氏は、反マルクス主義である民社党に由来する社会主
義青年フォーラムあたりで吹けばよろしいのだ。
スカンジナビアン氏が原則的なマルクス主義ではなく、修正
主義に他ならないのは、北欧礼賛で明らかだろう。
原則的マルクス主義者は、帝国主義の限界と、修正主義の反
動性をいやというほどみせつけられてきたのだ。アメリカ帝国
主義の分析をあたかも新自由主義礼賛であるように曲解しなが
ら、修正主義の反動性を覆い隠すほど、卑しいことはなかろう
。マルクス主義的アプローチのひとかけらもないあなたは、共
産党に由来する団体と接点があろうとなかろうと、右翼社民・
カウツキー主義の極反動だということに変わりはなかろう。