政治・経済の危機が深まれば、野党への支持が高まる。こういう考え方が あります。「危機待望論」です。
「うそとごまかしが明らかになれば、政治の大きな激動はさけられない。」 (日本共産党・第24回党大会決議案)
が好例です。あるいは、矛盾が蓄積すれば革命へ暴発する。これが 「窮乏革命論」です。
わが党だけが正しい社会主義政党である。これが「唯一前衛党」論です。 共産党は前衛党であることは綱領で放棄しましたが、しかし、実際には 「たしかな野党」を掲げている。他野党から票を掠め取ることを目的としている 批判されてもしかたがない。「われわれだけが正しい」というものです。
「危機待望論」ですが、危機が深まれば革新への支持が伸びるのか? 革命がおきるのか?
日本は、高度に発達した資本主義国です。たしかに矛盾は深刻だ。 しかし、そうはいっても、全部が全部生活が苦しいわけではない。 ロシアのように、国民の大多数が窮乏している状況ではない。 非正規雇用が若者で5割というが裏を返せば5割は正社員で働けている。 非正規雇用の若者についても少なくない割合が親の庇護でそれなりの豊かな 暮らしをしている。将来に不安を抱きつつもです。だから今の矛盾が そのまま革新の躍進につながることはない。
しかも、今の革新の政策はスローガンは良いが、具体策となると 心もとない。そうなると、地縁・血縁やマスコミの影響で自民党 ということになってしまう。
もっと状況が悪化すれば、良いかというとそんなことはない。 悪化すれば、右翼と創価学会が伸びるだけである。せいぜい、 民主党が伸びてくれれば御の字としなければなるまい。 ジェンフリバッシングや排外主義が高まり、革新はむしろ 居場所をなくしていくと考えるべきだ。
これと関連して社民党や民主党が衰退すれば共産党が 伸びるという論もある。しかし、2005年総選挙を見よ。 民主は大敗したが、その票は共産にはこなかった。 却って得票率は減った。増えた投票数の多くは自民党か、 造反組が獲得した。世の中全体が右傾化すれば、共産党も 居づらくなる。
今のような社会では改良を勝ち取っていくことが、新たな 運動の求心力につながる。改良まで行かずとも改悪阻止 でも良い。そこで、改めて運動のありがたみを実感して 団結力が増していくのだ。昔、革新首長が多く出て 実績を上げたときこそ、革新は躍進したことを想起されたい。 好循環を作り出すことへ努力せねばなるまい。
それと関連して唯一前衛党論は、あちこちで悪臭を放っている。 共産党は、自党派が仕切る運動以外は、最近まで「偽左翼」 のレッテルを貼って排除してきた。
自分が、広島県原水協、広教組や自治労を分裂させておきながら、 あとから「共闘しよう」と形だけ呼びかけ、断られると「反共」 と騒ぎ出す。そして、「共産党と国政レベルで組める政党はない」 とのたまう。そして選挙協力を主張した党員を排除する。一人相撲の 連続ではないか?
いったん分断してしまったものはなかなか元に戻らない。 しかし、わたしは現代社会では「いろいろあってよい」と 思うのだ。
自治労枚方市職労では、
「「とにかく非組合員を作らないようにしています。新入職員には 『どちらの組合でもよいから加入してください』と説明します。 組合に加入せずに、組合が勝ち取った制度の恩恵だけを享受するのは、 やはりダメですからね」と津田委員長は話す。」 http://www.jichiro.gr.jp/shinbun_kiji/1875/1875_03.htm
ということだ。
とにかく、いろいろあってよい。いろいろな流れがあってよい。 それらが、しかし、一旦緩急あれば、連携していけばよい。
政党であろうが、市民運動であろうが同じことだ。
政党が分かれているのが問題ではなく、軸がそれぞれ意外とはっきりせず、 そして、肝心なときに共闘ができないのが問題だ。それぞれが己を 磨きつつ、しかし、一旦緩急あれば思い切った共同をする。選挙協力も 全部一致にこだわらなくて良い。「護憲」もあれば「打倒自民」でも良い。 国会内でいえば、パーシャル連合でよい。是々非々でよい。
運動体の統一は議論されてきたが、私は、無理な統一よりも連携が良いと 思う。昔のように俺が正しいと殴り合ってきたことが問題なのであって、 いろいろあってよい。
日本は、大学進学率も5割を超えている。文字の読み書きができない人が 多かった昔のロシアとぜんぜん違う。「俺たちが正しい」と思い上がって、 指導し、仕切る時代ではないのだ。
共産党員が仕切るある大都市の自治体労働組合では、組織率が低いという。 分会から活動を作ることもない。分会や支部の活動をさせたら、共産党 以外の流れが起きて、ひっくり返ることを恐れているのだ。しかし ひっくりかえったっていいじゃないか?それで組合が盛んになればそれでよい。 労働者のためになる。広島県職労は共産党から社会党に主導権が変わってから組織力も強くなったと友人から聞いた。いろいろあることを認めない共産党が主導権を握っているようではだめなのだ。共産党自身が排除を止めない限りは。
「前衛党」を放棄しつつしかし「俺らが唯一正しい」が残っている。 「大衆迎合」も大衆を馬鹿にしている証拠だ。 9条擁護を掲げながら、「海外で戦争する国にしない」 というポスター。なんじゃこりゃ?国内でだって戦争をさせてはいけない。 国内が戦場になって持つような国では日本はない。戦争をしない外交を 徹底させるのが政治家の役目ではないのか?大衆に迎合しつつ実際は 馬鹿にしているこの政党の腐った幹部には総退陣願いたい。
スターリン主義的規約ももうだめである。党の外で党と違う見解を述べては いけないというが、今の時代は、「他流試合」も必要だろう。そうしてこそ、 アウフヘーベンも起きる。これこそ、社会主義ではないのか?違うことを言ったから 排除するという態度は今でも健在である。
社会市民連合は、開かれた社会主義を目指す。いろいろあってそれでよい。 それらを連携させていくこと。そして議論の場を提供し、弁証法を 実践させていくこと。それにより市民によるビジョンを提示し、 政党政治に影響を与えること。これがわれわれ社会市民連合の目標である。