投稿する トップページ ヘルプ

「科学的社会主義」討論欄

社会ファシズム論・政治的虚無主義を乗り越えて

2006/06/19 音 重子 30代 給与生活者(連合系労組役員、社会市民連合代表幹事)

 共産党など左翼が、社民党や民主党などの中道寄りの勢力に対して、「ああいうのがいるから、対立軸がハッキリしない。あれらが消滅すれば、敵がひとつ(自民党、反動勢力)に絞られて分りやすくなる」というのが、「社会ファシズム論」ないし「社民主要打撃」論です。

 小泉批判をしていた積りが、いつのまにか、民主党批判、そして選挙ともなれば最終盤には社民党の悪口ばかりを言い出すのが共産党のここ数年間のパターンです。

 民主党が政権を取ったら我々は埋没してしまう。あるいは、社民党に票を食われてはいけない。そんなけち臭い根性が見え隠れします。

 2004年の参院選は自民党+公明党の与党はあまり減らず、共産党の減少分がそのまま民主党へ行った形でした。 だから、共産党は、民主党、そして社民党の支持層の票を取ろうと、2005年には「たしかな野党」というキャッチフレーズ を掲げた。

 たしかに、政権交代だけを掲げていたのでは民主党にとっても自民との違いがハッキリせず、結局いつまでたっても野党のままでいる危険が高いのはたしかです。また、そうはいっても、当面、民主党が野党第一党である以上、それなりにふんばってもらわないといけない。この意味からも、民主党へ注文を付けつづけることは非常に重要です。

 しかし、自民党・小泉批判よりも他野党批判が先行するようになるのはいかがなものか?

 2005年参院選は、民主から共産への票の移動。そして、2005年は、民主は得票率は後退したが、共産も伸びなかったのです。

 結論は簡単です。「自民を減らすしかない」のです。自民党を減らす以外に、共産党の議席が伸びる可能性はゼロに近い状況が生まれているのです。

 自民を減らすにはどうすればよいか。一つは、共産党が自民党支持者を寝返らすことです。もう一つは、無党派層を掘り起こすことです。

 前者のためには、どうすればよいか?実は、自民党との違いを出したほうが良いのです。左派的な理念がまずいのではない。それを具体化するビジョンが不足しているのが問題なのです。自民党支持者とて、いまの小泉政府で良いと思っている人はそう多くない。しかし、野党もだらしがないから、じゃあ、利益誘導や地縁・血縁に引っ張られてしまう面も多い。

 後者のためにはどうすればよいか?これも、どういう政治をするか、打ち出すべきなのです。極小政党であっても「政権を取ったらこうする」というビジョンがなくてはならない。限られた分野でもいいから、とにかく、打ち出しをしていかねばならない。そして、やはり、開かれた党作りです。革命軍式の唯一前衛党論、民主集中制を放棄し、江田先生が目指した、横に連携するような政治勢力へ転換することです。いろいろあってよい。これが現代の成熟した民主主義にマッチしています。それにより、有権者のアレルギーを弱めるのです。インターネットで党の見解と違ったことを言ったから除籍、などというスターリン主義では、伸びることはなくとも、衰勢への道をまっしぐらです。

 企業・団体に頼らず、自前の組織と資金で党を運営している点でかつては非常に新しく見えたのですが、今は、むしろ非民主制という古さも目に付くようになってしまった。

 共産党執行部が「軸がない」と民主党を批判するのは正しい。しかし、共産党自身も、宮本顕治さんの時代には良いか悪いかは別にして明確にあった軸が霞んでいる嫌いはあります。人に「お前は・・」だという場合、実は自分自身がそうだから相手もそうだと思ってそういうという心理があることが良く知られています。共産党執行部の自信のなさを払拭しなければならない。そのためにも一に党内民主主義の確立、二にビジョンです。党内で様々な意見が出ればアウフヘーベンが行われ、良い政策も出てくるでしょう。

 次に、いわゆる市民派の間での、政党に対する不信、ひどいばあいには「政治的虚無主義」になりかねない傾向について考えてみます。

 日本社会党は大裏切りをした。さりとて、共産党にはアレルギーがある。民主党もはっきりしない。結局、それなりにラジカルな問題意識をもって活動している市民派が政治へのエネルギーを結集できていない状況はある。もちろん、自民党は、小泉後も厳然たる利益誘導政党である。

 既得権益擁護への不信感もあるでしょう。市民派の労働組合アレルギー的な面も否定は出来ない。

 一方、共産党の非民主的な側面に対する批判を避けようとする向きも市民派の一部にはある。共産党に擦り寄ることで、統一戦線をつくろうとする向きです。

 しかし、私には、どれもあまり生産的には見えないのです。

 私は以下に、我々社会市民連合も含めて、取るべき態度が以下に凝縮されているように見えます。

「私たちは、既成政党に対する不信感から、食わず嫌い的に新自由クラブや江田氏と社会市民連合の行動を批判するのではなく、その主張・行動を含めて積極的にとらえ、見極めた上で、協力すべきは協力し、しかし批判すべきは厳しく批判していくという態度をとりたいと考えています。」(参加民主主義をめざす市民の会 代表 田 上 等さんの、江田三郎さんへ公開討論会申し入れ書:http://www.eda-jp.com/books/usdp/2-3-1.html

 共産党の非民主制は厳しく批判せねばなるまい。近代政党ではあっても「現代政党」足り得ない。一方で、外部資金に頼らない方式は評価すべきである。市民派の自発性と、自主性が部分的には共産党にも実現している。しかし、ひとたび、中に入ってしまうと党中央とは違ったことは言いにくい。その辺をどう改善させていくか。

 一方で、もちろん、協力すべきは協力するのは、旧来からの私の持論でもありますので敢えて踏み込みません。

 これは、社民党や民主党、国民新党などに対するときももちろん同様です。是々非々での緊張関係が必要です。そういう中から、より良い政治が生まれてくると思います。何党が政権を取ろうが油断はしてはいけない。逆に自民党政権でも諦めてはいけない。

 私は、共産党にも社民党にも民主党にも胡麻を擂る積りは毛頭ない。しかし、全面否定する気もないし、是々非々の態度です。

 それから、大衆に擦り寄りがちな既成政党に引っ張られる必要は全くない。逆にスタンスをしっかりして政党に注文をつければよい。

 組合に対してもそうだと思います。とくに連合系組合、民主党の組織内議員を持つような組合だからといって、アプリオリに見下した態度を取る人が市民派にもいますが(自分は、組合の恩恵を受けて運動も出来ていることをすっかり忘れていたりする)、それは誤りです。そうではなく組合員が市民活動にも参加しやすいような環境を整えていくのもまた大事なことです。また、組合の労働者の権利獲得の運動ももちろん理解を示し、支えていく必要があります。その辺は、お互い様だと思います。