「経済制裁は当然」。北朝鮮・金正日政府によるミサイル発 射実験に対して経済制裁を日本政府が発動したことに対する共 産党・志位委員長のコメントです。
「ちょっと待て」と思います。同時に訪中していた民主党の 小沢代表が、経済制裁に対して慎重な姿勢を示したのとも対照 的です。
共産党は、ついに、この問題では小沢民主党より「右」にな ってしまったのでしょうか?
北朝鮮脅威論を煽る大手新聞、そして自民・公明政府に対し て屈服してしまったのでしょうか?
制裁をやむをえないとの立場になるとしても、国連決議なし の制裁に「当然」とするのは、国連中心主義を掲げる共産党の 立場からの逸脱ではないでしょうか。
そもそも、北朝鮮に日本を攻撃する意図はない。もちろん、 ミサイル発射そのものはピョンヤン宣言違反であり、批判され るべきです。しかし、日本を攻撃して戦争を仕掛けようとは思 っていない。国内の求心力高めようくらいの話です。アメリカ はアメリカで、北朝鮮を利用して、日本をアメリカに経済的・ 軍事的に従属させようとしている。また小泉政府もアメリカ従 属を正当化するために北朝鮮を出汁にしている。こういう構図 があります。また、金正日政府は、アメリカから身を守ろうと して実験をしている面もある。先制攻撃をアメリカがしてきた ら、反撃するぞという脅しです。アメリカの核を含む先制攻撃 を辞さない姿勢は、金正日政府のそうした対応の背景になって いると思われます。
そこの部分に触れることなく、「制裁は当然」とは、何事で しょうか? 共産党もまた、北東アジアの緊張を高める側に回 ってしまったのです。
そのようなことで、どうして「護憲」を語れるでしょうか? ひょっとして共産党が主張する「護憲」とは、ためにする「護 憲」であり、民主党などと差別化するために、形式的に掲げた だけのものなのでしょうか? そうした疑念が拭えません。こ れは「やむをえない」という語った福島社民党にも当てはまり ますが、まだ、表現が弱い分、罪は軽い。
「護憲」の共産党でさえ、「たしかな野党」の共産党でさえ 、国連決議なしでの制裁を「当然」とした、それも、アメリカ による先制攻撃戦略を批判すること抜きでのそうしたコメント の、歴史的な罪は重い。
共産党は、有権者により罰せられることになりかねません。 来年の参院選でいくら「護憲」を叫んでも、「制裁を当然とす るくらいなんだから、民主党で良いじゃん」ということになり 、大敗しかねません。弱者の味方をしているのも結局、票稼ぎ のためのパフォーマンスと、目の肥えた無党派有権者には見透 かされ、入れてくれるのは、ゴリゴリの支持者だけになりかね ない。この危機的な状況を志位委員長は認識すべきです。
不破・志位執行部は、これまでも、消費税減税の旗を投げ捨 て、国旗国歌法制定を促す見解を出すなど、軸を薄めてきまし た。その結果は「じゃあ、民主党で良いじゃん」という有権者 の反応です。
いろいろな場面で、戦いの場から共産党は逃亡してきた不名 誉な歴史がある。しかし、それで票が増えたかといえば逆で、 減ってきた。ただ、社会党など他党がそれ以上に有権者の期待 を裏切ったので、たまたまそれなりの勢力を確保してきただけ のことを忘れてはならない。
志位執行部は、性根を入れるべきです。闘う姿に、共感して 多くの人がついてきた。先輩たちの財産を台無しにするつもり か。
一方で、朝鮮総連総会に出た政党を批判した萩原遼さんを除 籍したことは撤回するとおもいきや、していない。そういう意 味でも筋が通らず、破綻しています。
社民党や民主党は怪しからんと、2005年総選挙では他野党攻 撃に走った志位執行部。しかし、自信がないから、共闘しよう としないのではないか? もし、野党共闘すれば、今の低下し た理論水準では、民主党や国民新党の論客に勉強不足を暴かれ てしまう。左からは新社会党やラジカル市民派にその日和見振 りを暴かれてしまう。そのことを恐れているのではないか?
理論水準低下が、結局、感情的な「護憲」論であり、「たし かな野党」論に結果し、他方で、あっさり「制裁は当然」とぶ れてしまうことになるのです。
理論水準低下の原因は、結局、民主集中制と唯一前衛党論を 背景に、党内議論も、そして他流試合もあまり行われず、その 結果、アウフヘーベンが起きないことに尽きます。異論を持つ ものをすぐ排除してきた結果、異論を言う元気もない人々ばか りになってしまったとも言えます。その結果、ひからびた歌に 固執し、世間と乖離した。そして自信をなくした挙句、世間に 擦り寄るという醜態です。だが、擦り寄るということは、馬鹿 にしていることの裏返しです。「こいつら、何を言っても分ら ない」ということなのです。
小沢一郎さんは、政権をとるためには、他と差別化すること が近道と喝破し、慎重姿勢を示した。政権をとる気迫も、庶民 のために戦争を防ぐために体を張る気力もない、ひからびた歌 手に成り下がった志位委員長。
「固定した、狭いイデオロギーにたって、革命だ、反独占だ と叫んで、抵抗だけに終始していることこそ、いきいきとした 歌を忘れ、誰も耳を傾けようとしない、ひからびた歌手になり 下っているのではないのか。」(江田三郎先生「社会党は“歌 ”を忘れよ」http://www.eda-jp.com/saburou/seiji/21.html )
これを、
「固定した、狭いイデオロギーにたって、観念的な「護憲だ」
「たしかな野党だ」
と叫んで、民主党批判だけに終始していることこそ、そしてそ
の挙句に北朝鮮ミサイル発射に右往左往して制裁を後押するこ
とこそ、誰も耳を傾けようとしない、ひからびた歌手になりさ
がっているのではないか。」といいかえればよい。
共産党は”歌”を忘れよ。歌を忘れ、現実に即した冷静な議 論を大いに党内外で活性させることこそ今必要ではないでしょ うか?
江田先生は、ブラントの東方外交に注目していました。安保 破棄=ドイツで言えば、NATO脱退は難しくとも、東欧とも仲良 くすることで、ドイツの地位を向上させていく。日本でいえば 、いまこそ、東アジアの緊張緩和にリーダーシップを取ること こそ、採るべき道と、正々堂々主張すべきなのです。
社会市民連合は、江田先生の遺志を受け継ぎ、最左翼であっ たはずの共産党の右転落にも動揺することなく、一方で、しか し、民主党や社民党、国民新党の皆さんとも一致点で幅広く連 携することで、一歩でも二歩でも平和な北東アジア と自主・ 独立の日本、そして庶民の生活向上を実現していくことを改め て誓います。