日銀は、今日(14日)、ゼロ金利を解除します。その前提は、デフレ脱却と経済の順調な成長です。しかし、その経済成長が「大本営発表」ではないか、と私には思われるのです。
内閣府の公表する実質GDPの数字が実感から乖離していると思う方は多いと思います。
私はその原因は、輸入物価の上昇だと見ています。GDPは内需項目(投資、消費)に輸出額から輸入額を差引いた純輸出額をプラスして計算します。昨年度は、名目の純輸出額が6兆3500億円と対前年度比で28.8%減少しています。ところが実質値では純輸出額は16兆3800億円と18.9%の大幅な伸びになっているのです。狐につままれたような話です。(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe061-2/jissuu.html)
これは輸出価格が2.6%上昇したのに対して、原油高などによって輸入物価が11%も上昇したからです。つまり輸入品のデフレータ(≒物価上昇率)が大きくなったため、デフレータで割り返した実質輸入額が異常に小さくなったのです。そしてこれが実質GDPの控除項目である実質輸入額を異常に小さくし、結果として実質GDPを大きく押上げることになったのです。大体、2%(10兆円)くらい実質GDPが底上げされています。昨年度の内閣府公表の実質GDPの成長率は3.2%ですから、輸出入品の物価上昇の影響を除けば、実質成長率は1.2%の低成長ということになります。
10%も経済が成長していた時代なら取り立てるほどの影響ではないか知れませんが、今日のような低成長では経済成長の大部分が「大本営発表」なのです。
そして輸出物価があまり上昇せずに、輸入物価が上がっているということは、当然、原材料を輸入して、製品を輸出している企業は苦しいということです。実際、企業が広島県内へ進出してきてくれても、結局労賃を抑えるために、派遣しか雇わないという場合も多いと、広島県中部のある都市の市議は証言します。
そこへゼロ金利解除となればどうなるか?とくに借金をしている企業のバランスシートを一挙に悪化させかねない。不安は尽きません。むろん、そもそもゼロ金利自体の直接的な効果は薄かったとの見方も出来ます。内需が低迷する中で企業は投資を控え、銀行の貸し出しも減ったからです。しかし、一方で、だからこそ、ここで解除したら余計悪くなる、とも見ることが出来ます。
そもそも、内需が低迷した根本原因は、金融庁の日本の伝統を無視したグローバリズム改革であり、また小泉政府の緊縮財政、とくに庶民への増税と社会保障カット、地方の公共事業カットです。そして総理が継続・充実したお金持ち減税は、実体経済への効果は薄く、むしろ投機資金を増やして村上ファンド事件の背景ともなったと思われます。こうした構造を根本から打破することが先決です。ゼロ金利は異常な政策ですから、解除はいずれはしなければなりませんが、まず、低成長の現実を直視した上で、実体経済、とくにお金持ちよりも中小企業や生活者を財政面で梃入れする対策をとり、本当に景気が良くなってからにすべきです。
さて、戦前日本の軍国主義高揚の背景には浜口総理・井上蔵相(元日銀総裁)のデフレ政策強行があります。経済が破綻する中で「侵略以外生きる道は無い」と人々は思い込んでしまった。
「いつかきた道」を繰り返さぬためにも、国民は政府・日銀の経済政策に厳しい監視の目を注がねばなりません。