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「現状分析と対抗戦略」討論欄

部外者Uさんへ

2006/09/01 原 仙作

 部外者Uさん、はじめまして。丁寧なコメントをありがとうございます。
 さっそくですが、いくつかの項目にわけてお返事します。

1、
「この前提が無党派に対しての説得力を著しくそぐものになっている。」とのご指摘ですが、そのような印象をお持ちであれば私の不徳のいたすところと謝るほかありません。
 この指摘で部外者Uさんが仰りたいことは民主党、社民党、共産党の3党だけではなく、新党日本や新社会党、新党大地などの他の野党も考慮に入れて検討するべきで、それらの党が考慮されていないことが、無党派への説得力を削いでいるということでしょう。
 私の構想でも、投稿の表題を見ていただければわかるように全野党の選挙協力なのです。ただ、2004年の参議院選の選挙結果という新聞発表のデータを用いた場合、選挙区ごとの新社会党などの得票数は表示されておりませんし、新党日本なども当時はまだ存在しておりません。仮に、これらの政党すべてを考慮に入れた得票数を計算するということになると、非常に面倒なことになるがかりか、得票計算の信憑性の問題も出てきます。
 まず、昨年の衆議院選の得票実績を用いなければならず、衆議院選の得票実績を選挙区割りが異なる参議院選に組み替えるという作業が必要になります。特異な選挙戦となった昨年の衆議院選のデータを2007年の参議院選の得票予想に使うことの是非の問題もあります。そのうえ、昨年の総選挙のデータを用いても新社会党などの得票分を全国にわたって表出することはできません。もし、やろうとすれば地方選レベルの得票にまで踏み込まねばならないでしょう。また、それを全選挙区で採りだしたとしても、その数字を国政選挙レベルの得票数に換算するには技術的な問題も発生してきます。
 こういうわけで、新聞発表された2004年の参議院選の得票実績をそのまま使うほうが、簡単な説明で全体図を説明できるうえにデータの信憑性も簡単に確保できるわけです。この記述方法を採用した結果、新社会党や新党日本などの政党が数字上の表示からは欠落するという欠点が生まれてきます。そこで、この欠点については、「2」の(2)で「新社会党などの選挙協力区もあるはずだが、新聞表記には見えないため、ここでの考察からは抜け落ちている。」と説明しているわけで、決して、新社会党などの政党を無視しているわけではありません。しかも、各党への議席配分は「一例にすぎない」とも述べており、例示した議席配分や候補者の政党にこだわっているわけではないことも示しています。
 部外者Uさんは、この欠落について「この部分をあえて計算に入れないというのはずさん極まりないと言わざるを得ない。」と批判されますが、具体的な得票計算手順の難しさを考慮していないという点でいささか言い過ぎの批判という感じがします。
 というわけで、私の真意は全野党の選挙協力にあることを理解してください。

2、
 いくつかの選挙区について、すでに実績のある選挙協力をあげて部外者Uさんは次のように批判されています。

「結論として言えばこういう社民・新社や無党派の動きに対して日本共産党がどのような態度をとったか。その態度をみて社民党支持者・新社会党支持者・無党派支持者がどのように感じたか。この変数を考慮しないで単純な算術計算の通りになると思うのならただの机上の空論ではないか。」

 「この変数」を計算上、どのように考慮したらいいのでしょうか? 都市部と地方では違うでしょうし、首長選などでの選挙協力の経験のあるところとないところでも違うでしょう。私の主張は、これまでの各選挙区の実情を考慮したものではありません。主要な点は共産党がこれまでの態度を変えて全野党の選挙協力に積極的に応じるようになれば、どのような可能性が開かれるのかを一律の基準で示したものです。その一律の基準どおりにいくか、それを上回るか、下回るかは、与党の作戦や各野党の指導部の作戦や熱意の如何、あるいは、部外者Uさんの指摘される「変数」によっても変わることで流動的だというほかないものです。
 しかし、流動的だという現実があるからといって「机上の空論」ではないでしょう。共産党が変わり積極的に全野党の選挙協力に応じれば、来年の参議院選では私が一律の基準で示した全体図(与党の過半数割れ)の方向へ大きく前進するはずだからです。
 なお、部外者Uさんはいくつかの選挙区での社民党や新社会党の選挙協力をあげて、そこでの共産党の態度を問うていますが、部外者の私が答えられる問題ではありません。問題は、これまでどうであったかということよりも、これから共産党が変わることです。変われば、各選挙区での協力関係や候補者調整をどうするかは各党間の協議にゆだねられるべきことで、私などの部外者がとやかく言うべきことではないでしょう。

3、  私が提案した改憲の発議を封印するという政策協定は、共産党を念頭においたものです。部外者Uさんは、できない政策協定よりも、「自公政権が有利にならないように野党連合との間の候補者調整は行うという方が」いいと提言されていますが、それも一つの案で、私の提案よりさらに柔軟なものです。部外者Uさんの提案を共産党が実行できれば非常にけっこうなことです。
 しかし、候補者調整も共産党にとっては選挙協力の一種であり、国政選挙における選挙協力には政策協定が必要だと理解するでしょう。こうした共産党の考え方を前提にして、基本政策が違えば選挙協力はありえないという「石頭」に一石を投ずるつもりで出したのがあの提案なのです。その意味では、私の提案にこだわっているわけではありません。政策協定なり、選挙協力の仕方は当面の主要な政治課題(政権協定ではない)との関係では無数にあるのだということを、あの提案で訴えているわけです。
 なお、部外者Uさんが問題にしておられる共産党による新社会党への回答について述べれば、3点にわたる共産党の回答はいずれも間違っていると思っています。

4、
 「石頭」の共産党指導部に柔軟な選挙協力の必要性を理解させるにはどうすればいいのかということですが、これは難問です。現在の共産党の状況を見ると、とりわけ、むずかしいことです。話し合いの窓口を作ろうという新社会党への回答や「平和共同候補」の呼びかけへの論評でもわかることですが、共産党は本音の拒否理由を明らかにしていません。
 協力関係構築のための話し合いの窓口くらいつくるのは当然のことです。これらの呼びかけの内容に照らせば、どういうやり方が議会の中で与党の改憲策動を封じるのに有効なのかを提示したうえで、これらの呼びかけが有効ではないことを共産党は説明すべきなのです。
 ところが、党勢拡大一本槍の政治方針があるだけで、その方針でどれだけ有効に改憲策動にたたかえるかという点すら示そうとはしていません。来年の参議院選では改選議席より1議席多く獲得することが全てになっており、国会内での改憲の動きがどうなろうが、そんなことは全く眼中にない有様なのです。それほどに、共産党指導部は余裕を失っています。
 思うに、志位-市田体制になってから、国政選挙で5連敗、統一地方選を含めれば6連敗ですから、来年の統一地方選、参議院選で敗北すれば志位-市田体制ももたないという「危機感」が指導部にはあるのでしょう。
 党の指導部を民主主義的に交代させるという組織的システムがない場合、党の顔を交代して攻勢的に打って出るという選択肢がありませんから、選挙戦で連続的に後退すると、勢い、亀のように手足を引っ込めて自己(指導部)防衛体制に入るほかないのです。来年の参議院選での1議席増という目標は、国政上では何の意味も持ちませんが、党指導部防衛という点でのみ有効性があるのです。
 そういうわけで、亀の甲羅を脱がないかぎり、共産党の指導部が頭を切り換える契機は来年の参議院選となるはずで、我々は、与党を過半数割れに追い込みながら、護憲派議員を増やし、かつ、共産党指導部に頭の切り替えを迫るという、やっかいな作戦、投票行動をこなさなければならないわけです。どうにも、「前衛党」がお荷物になっている状態です。