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「現状分析と対抗戦略」討論欄

問題提起 9・11テロ後のおかしなことと市民・労働者 の課題

2006/09/12 さとうしゅういち 30代 広 島瀬戸内新聞経済部長・社会市民連合副代表(労働者)

 「社会市民連合」の組織変更により、副代表となったさ とうです。よろしくお願いします。

 前代表幹事音重子さんに代わり、今後、経済財政政策を中心 に広報を担当させていただきます。当連合は、現在、代表の三 井マリ子さん、平和への結集担当の池辺幸恵さん以下、女性7 5%という形で、政治を変える市民の連合体として発展途上に あります。当連合では、数少ない男性としてですが、それなり の問題提起を行い、議論を活性化することに協力したいと思い ます。

 さて、本題に入ります。

 9.11以降、外交とか軍事以外に暮らしの身近なことで、 「おかしいこと」が多くなったような気がします。

 ひとつは、たとえば、私も、市役所とかその外郭団体との付 き合いが あるので、分かるのですが、主婦、学生、高齢者な どをボランティアで使っているようなことが結構ある。ボラン ティアといえばよいことのように思えるのです。

 平和とか、街づくりとか、文化とか、そういう領域でのボラ ンティアはありかもしれない。

 しかし、それを、住民生活に不可欠なサービスにまで拡張す るのはいかがなものか?結局、それは労働力の使い捨て、過激 に言ってしまえば女性や若者、高齢者からの収奪ではないのか ?

 そして、賃金を受け取って働く労働者の職を奪うことになる のではないか? 小泉さんになって、地方の切捨てが進んだこ とがこういうことの背景にあると思います。もっといってしま えば、小泉さんは財政が危ないと叫びながら、一方で2003年-2004 年には、35兆円のドル買い為替介入を行っています。

 多くが、アメリカ財務省債券です。おかげで、ブッシュ大統 領は「対テロ戦争」を、財政破綻を恐れずに遂行できるのです (民間銀行も、小泉さんの号令の元、中小企業から融資を引き 上げ、米国債購入を増やしています。)。
 一方で、地方を切り捨てる。その結果がこのざまではないで しょうか?なんということはない。

 円安で儲けた輸出大手企業と戦争で儲けたアメリカの軍需産 業に、日本の庶民から所得移転しただけです。中小企業も、今 、円安とオイル高のダブルパンチで原材料費が上がっているの に、転嫁ができず、苦しんでいます。

 男女共同参画も小泉政権の目玉商品でした。今までの自民党 政府が、男性の業界団体や労働組合の利益を守ってきたことへ のアンチテーゼとして一定の期待感を醸し出しました。

 しかし結果はどうか。男女の賃金格差など縮小しない。そし て、男性でもフリーターが増え、「みんなで沈む」ことになっ てしまった。
 女性が多い、医療や介護などの労働現場の条件は決して良く ない。
 そして、復古勢力のバックラッシュです。小泉さんや豊中市 当局などネオリベも、復古勢力が、小泉さんの失政を覆い隠し てくれるので、好都合ですから、女性の利益を守ろうとはしま せん。踏んだりけったりとはこのことです。

 気が付けば、ネオリベと、復古勢力だけが政界で勢力を伸ば している。
 旧来革新といわれた人たちや、亀井さん、綿貫さんら保守の 中のリベラルが肩身の狭い思いをしている状況です。

 目先をうまくごまかされ、「してやられた」わけですが、根 底には、アメリカに追随しての経済利権分捕り合戦=「対テロ 戦争」遂行があると私は断言したいと思います。

 これらの問題に対して、人々が「おかしい」と声を上げてい くことが必要だと思います。また、そういう声を、革新とか、 平和運動とかそういうひとたちがきちんと組織していく必要が ある。

 私は、革新政党とかそういうひとたちの問題点として、(私 も含めてですが)如何にも新聞記事をつなぎあわせたような演 説とか、あるいは党首の言っていること丸写しとかそういうケ ースが多すぎる。そうではなく、自分の仕事とか、地域とか家 庭とかそういうところでの経験を活かした演説ができないもの か?

 また、そうでないと観念的になってしまうのではないか?市 民をひきつけられないのではないか?増税反対とか、憲法改悪 反対とかは「正しい」。しかし、「正しいこと」を言うだけで は、どうもひきつけられないのではないか?

 「アンチ自民」だけだったら、実は小泉さんで十分なのです 。人々は、小泉さんの「殺されてもやる」という、背水の陣( 自民党は120議席の惨敗という噂もあったという)に感じる ものがあったのではないか?

 なんとしても、自民党政権を倒す、という姿勢を示す。自民 党議席の最小化をぜひとも図らねばならないと思います。

 そして、自分たちの経験から、世の中を自民党に変わってこ うすべきだという天下構想を示すべきではないのか?それが遅 れたがために、野党は小泉さんにお株を奪われてしまったので す。敢えて、批判は避けません。政権交代を叫び、政策の訴え がおろそかになった嫌いのある党。最初から「唯一の野党です 」といった態度で、小泉政権を倒す気力も見られなかった党。 反省していただきたい。

 私は、社会市民連合を最初に作った江田三郎先生をいつも思 い出します。

 江田先生は、60年安保で中央大学で警官隊の放水の中、最 後まで学生をかばった。一方で、自民党をなんとしても倒そう と、野党共闘を積極的に提起したのです。おそらく、放水の中 頑張った必死さが、野党共闘論にもつながったのだと思います 。この必死さが、今の野党には決定的に欠けているように見え ます。もちろん、真面目にやっておられるつもりでしょうがど うも袋小路に入っているような気がします。

 政策で言えば、たとえば教条主義的に「増税反対」「公共事 業カット」を言うのは簡単です。
 しかし、私は、もっと、自民党の「小さな政府」路線(民主 党は小さな政府といいながら、年金の充実など大きな政府につ ながることを主張しており、矛盾が見られる)に対抗して「大 きな政府」というビジョンがあってもよいと思います。少々増 税しても介護も医療も安心して受けられ、労働者もそれなりに 飯が食える、地域でも、たとえば環境や福祉型の公共事業をや って、中小企業の振興を図る、といったことがあってもよいと 思います。

 そして、もし、質問されれば、「アメリカも欧州も日本より はるかに大きな政府だが、経済成長は日本をはるかに上回って いる」と答えればよい。今、多くの人々が、左派勢力が本当に 世の中を変える気があるのか、「本気度」を疑っているのだと も思うのです。

 私は、「社会市民連合」としては、敢えて「大きな政府」と いう選択肢を示していくべきではないかと思います。そういう ものを求める人々のネットワークをつくっていくことが必要で す。それにより、政党など既存組織を動かしていかねばなるま い。

 もうひとつは、権威主義的風土の変革です。残念ながら、保 守でも革新でも日本の政治風土は権威主義といえます。保守に おいては、地縁、血縁、利益誘導。

 そして、最近では、組織が壊れてきましたが、一方で、十分 な判断材料が示されない中で、メディアの応援によって、小泉 政治が維持されてきた実態があります。民主主義が十分機能し ていないという意味では、田中角栄的利益誘導も小泉的劇場政 治も同じで、権威主義(結局、お上の言っていることになびい てしまう)ということには変わりはありません。

 革新陣営においても、公開の議論が起きない、幹部に反抗す ると除名される、除名されないまでも、飼い殺しにされるなど 、古臭い体質が染み付いているのも否定はできません。

 権威主義的風土の変革なくしては、日本の民主主義の前進は ありません。
 そして庶民のための政治にならないでしょう。政界主流とな った新自由主義勢力と、バックラッシュ勢力が主役の劇場型政 治と、わずかに残った革新の厳しく言えば自己満足の政治の不 毛な並存が続いてしまう。

 そして、いまや、加藤元幹事長が放火されても、大きな抗議 の声が起きないという状況にある。権威主義、あるいは事なか れ主義は、むしろ悪化しているとさえ断言できます。これは大 変危険なことです。護憲・改憲云々より前に、土俵自体が壊れ てしまう話なのです。

 それではいけないのです。オルタナティブな情報を発信して いく。
 そして、公開の議論が起きる場を設ける。そして、政党や組 合といった既存組織も、市民と対等に連携して政策作りや運動 を進めるよう働きかけていく。そんなことが大事なのではない でしょうか?

 これはあくまで「問題提起」であり、議論のスタート地点で す。皆様の忌憚のないご意見をお願いします。