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「現状分析と対抗戦略」討論欄

お金持ち・大手企業に愛国心を

2006/10/21 さとうしゅういち 30代 広島瀬戸内新聞経済部長・社会市民連合副代表(労働者)

 愛国心を教育基本法に盛り込もうという安倍さん。

 しかし、摩訶不思議なことがあります。安倍さんはなぜか、大もうけの一部の大手企業や、銀行、投機家には「愛国心」なり「郷土愛」を求めていません。儲かっているのだから、少しは、郷土に還元しろ、少しは税金をもっと納めろ、あるいは、労働者に還元し、地域経済に還元しろ、ということは一切言いません。

 一般国民には義務ばかり課し、大手企業や銀行、投機家には減税など、甘い。結局、小泉政治の連続ではありませんか。銀行は、小泉政権以降、中小企業への貸し出しは減らし、その代わり、国債を多く買うようになりました。国債の利子は銀行に入っています。そのつけを、一般国民が増税と負担増の往復ビンタで払っています。

 結局、所詮は、教育基本法「改正」も、正に、一部大企業と、銀行に都合の良い施策なのです。これらに、甘い政治をするお上に文句を言わない国民、自分の権利を主張できない国民を育てようと言うのです。

 今の日本では、生存権、それにふさわしい、勤労に掛かる権利、あるいは男女平等などが、十分に保障されていないのは明白です。

 なるほど、身勝手な人が多いと言うかもしれない。しかし、それは、面倒がって選挙の投票に行かない、とかそういうことが問題である。あるいは、他人が権利を侵害されているのに、見てみぬ振りをする。そういうことが問題ではないでしょうか。それが「身勝手」というなら分かります。

 さて、教育基本法「改正」と一体となった安倍さんのような経済政策では、一部の大手企業と銀行にお金が偏在するだけです。そして、一般国民の間に貧困は広がる。その結果、需要は落ち込む。仕方がないので、投機に多くの資金が回っていく。あるいは、アメリカにお金が流出していく。非正規雇用で、年収300万円も行かないような世帯が増えれば、子どもなんて夢のまた夢。少子化は激化していく。少子化自体が悪いと言うより、子どもを持つという選択肢が行使できない状況が問題です。

 教育基本法問題は、実は経済政策の問題である。一般国民に「愛国心」を求める前に、ぼろもうけの一部大手企業および、銀行に「愛国心」というか、「公共心」を持たせ、ルールを守らせることが必要ではないでしょうか?現状のような、非正規雇用ではなく、真面目に働けばそれなりに希望が持てる給料を取れる仕組みを男女ともに保障すべきです。そのために、補助金を出すと言うならよい。

 ぼろもうけの投機家に対しては、キャピタルゲイン課税、利子課税を強化すべきである。ボロもうけしても消費されず、また、おそらく産業の設備投資にもそうは回らないから、彼ら・彼女らに過剰資本をあまりもたせていても経済にプラスにはならない。「投機から実体へ」ということを進めていかねばならない。

 そして、投機から実態へお金を回すための呼び水として、社会保障をきちんと保障し、また、中小企業に特に手厚い投資補助金、また環境やエネルギー、食料、福祉分野などへの重点的な公共投資を行う。

 その上で、教育改革としては、「憲法12条」を実行できる人間を育てることを特に力を入れる。
 政治教育、民主主義教育をもっとすべきではないか、と思うのです。その中で、社会的な連帯を作っていく。お上からの押しつけなどよりよほど強固な「愛国心」ないし「公共心」が作れると思います。

 今の、教育基本法「改正」論者は、経済の問題点を全てスルーしてしまっているのです。これはいけません。それどころか、企業の競争力向上に奉仕する改革を、というネオリベ的な立場の人もいる。しかし、ネオリベは失敗した。ネオリベ的経済政策が橋本政権でとられて10年。日本は、一人当たりGDP世界11位まで転落しました。安倍さんもネオリベの枠内を抜けないなら結果は同じ。経済政策の転換にこそ、力を尽くすべき安倍さんが、教育基本法云々で騒いでいるのは、日本経済をさらに沈没させる、それこそ国賊的行為です。