一番上は、自民党の固い支持層の投票行動です。だいたい、1500 万人(有権者の15%)とみられます。しかし、2004参院選で は、構造改革への不満から棄権へ回った人が多く出ました。2005 年衆院選は組織が引き締まったため、また自民と民主の違いが 分かりにくいために、自民党支持で固まりましたが、福島県知 事選挙では再び棄権者が多く出ました。
2番目は、「マスコミに影響されやすい無党派層」の投票動 向です。この層は普段は投票には行かないことも多い。かつて は土井ブームで社会党を押し上げました。その後は、マスコミ が新進→民主を持ち上げたために90年代後半は、民主党を押し 上げました。しかし、この層は、小泉さんが登場したために、2001 年参院選ではそっくりそのまま自民党に寝返りました。自民の ほうが民主より右に来たためです。約600万票は実際には、自 民党の固い支持層に変化しつつあります。2005年衆院選では、 さらに500万程度が新たに自民党に流れ込みました。構成は、 フリーターや年配者、インテリなどさまざまでしょう。共同体 が崩れる中で、小泉さんにうまく分割統治されて自民党に取り 込まれたといえます。しかし、福島県知事選では、安倍さんの 古臭いイメージから、若者が離れてしまいました。
三番目。この層は、大昔は、自民党に投票していたが、今は 棄権か野党に回っている層で総有権者の12%程度と推定され ます。1996年には、自民党に300万、新進党に小沢ファンとし て400万程度。その後は主に自由党ないし保守党を支持してき ました。その後、2003年の「民由合併」後は、民主党に流れ込 みました。2005年衆院選では、民主党や新党、一部共産党など を、反自民の立場から押し上げました。この層は、割合、構造 改革に不満な保守層から成り立っています。
4番目。これは、いわゆるリベラル無党派の動向です。かつ ては、日本社会党ないし日本共産党に投票していたような人た ちです。1996年総選挙では、民主党と共産党で分け合いました 。1998年参院選でも同じ傾向が出ました。このときは、民主党 は新自由主義色が濃厚でしたが、「政権交代」の大義を重視す る人は民主に、リベラル色貫徹を目指す人は共産を推しました 。しかし、共産党が、消費税引き下げを撤回したり、国旗国家 法を促進しかねない発言を幹部が行たりし、「じゃあ社民党や 民主党でいいじゃないの?」ということになっていきました。 このため、2000年は社民党に票が共産党から戻りました。
2001年参院選では、小泉旋風の前に、多くのリベラル無党派 が諦めて棄権し共産、社民、民主は不振でした。
この後、小泉さんの人気が落ちた2003年総選挙では民主党が ほぼリベラル無党派を固めました。2004年、2005年もその傾向 はほぼ変わりません。1100万程度は既に「固い民主党の基礎票 」となっていると思われます。
このほかに、公明党の基礎票が800万程度と、非常に固い。
旧民社党の票(連合の右派)300万程度が、1996年は新進党、1998
年以降は民主党の基礎票となっています。
社民党の基礎票は300万程度です。2004年参院選での299万票
が「底」でした。
共産党は400万程度でした。1996年、1998年は無党派の流入
で躍進も、2000年は社民党に票を奪われて後退。2001年は、唯
一構造改革に反対したが、基礎票しか固まらず敗退。そして、2005
年総選挙では、基礎票は250万強程度で、240万は他党や無党派
からの流入でした。構造改革に不満な保守系無党派、民主党に
煮え切らないリベラル無党派を多少取り込んだ一方で、党員・
支持者が、一生懸命頑張っても報われない選挙が2001年、2003
年、2004年と続く中で堪え切れなくなっていると思われます。
1、固い自民=1500万(うち600万程度が流動化)
2、公明党=800万
3、マスコミ無党派=1150万(うち650万程度が自民党支持者
化)
4、保守系無党派=1200万(民主500万、その他400万、棄権3
00万)
5、民社系=300万(民主党)
6、リベラル無党派=1300万(民主1200万、社共100万)
7、社民=300万
8、共産=400万(共産260万、民主140万)
自民党は、1990年代に入り、構造改革により不満を高めた保
守系無党派を失った。そのため、公明党と手を組んだ。しかし
、それでも足りないので、さらに、新自由主義をはっきりさせ
ること、人々への分割統治を行うことで、3を取り込んだ。
しかし、4を野党に一挙に追いやる結果となりました。民主
党は6を主たる基盤に、4、5と8の一部にも手を広げていま
す。
2005年総選挙は、自民が圧勝しましたが、民主が新自由主義 の旗を完全に自民党に奪われたのです。それまでは、リベラル 無党派も保守系無党派も、自民党は駄目だと思って民主を支持 してきたが、民主も新自由主義、と言う矛盾に当たっていた。 しかし、今は、小沢さんが明確に自民より左にシフトしたので その矛盾もなくなりました。これにより、安心して、4と6は 連合して、政権奪取に向かえます。
民主党が全面的に信用できるわけでは当然ありません。しか し、3の一部も既に自民党に愛想を尽かし、1の一部がいまま た、棄権をしだした。固い自民党支持層も、一部がだんだん、 4の保守系無党派の予備軍になりつつあります。
自民党政権倒壊の日は、刻々と近づいています。いくら、悪 あがきしようが。郵政反対組を受け入れたとしても、4を取り 込むことは出来ない。むしろ3を逃がすだけの結果になりかね ないでしょう。野党は「自民党はとにかく駄目だ」ということ を徹底して訴えるべきです。今チャンスを逃したら、しばらく 政権奪取のチャンスがないかもしれません。自民党は2005年に 一時の勝利を得たが、却ってピンチを招いたのではないでしょ うか?
このようなときは「わが党が」「俺が」という固定観念を政 党の「えらい人」は捨てるべきです。そして、無党派と対等に 連合することを目指すべきではないでしょうか?ゆめゆめ、無 党派の反感を買うようなことをむやみにしてはいけない。それ は、政策の変更ではなく、暮らしを守りたいという要求に反す るような戦術を取らないでいただきたいという意味です。
無党派のありのままを受け入れる。彼ら、彼女らを票田とみ なすのではなく、無党派との対話の中で政策を作っていく。そ の過程で実は野党共闘と言うこともさらに現実味を帯びてくる と思います。
【この3党(当時は社会・公明・民社。筆者注)が共同のテ ーブルについて作業しても、容易に使いものになる政策づくり が行われ難い。むしろミッテランが成功したように、過去の決 定や建前にとらわれない無党派の頭脳を結集することで、この 作業がスムーズに進むのではないか。こうして作製されたもの を政党に提示して、討論してもらうことが、早道ではないかと いうことである。
第2に、政策立案過程に無党派の参加を求めることが、将来 の政治勢力の結集にあたって、このエネルギーの参加に道をひ らくことになるのではないか、ということである。われわれが 既政の政治勢力だけの結集に終り、無党派のエネルギーを忘れ ていたのでは、国民の多数派になれないのだ】(江田三郎さん 「意識的無党派のエネルギーを結集しよう」より)
【固定した、狭いイデオロギーにたって、革命だ、反独占だ と叫んで、抵抗だけに終始していることこそ、いきいきとした 歌を忘れ、誰も耳を傾けようとしない、ひからびた歌手になり 下っているのではないのか】(江田さん 「社会党は“歌”を忘れよ」より)