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「現状分析と対抗戦略」討論欄

宮崎県知事選挙の結果が示すもの

2007/1/26 樹々の緑

 宮崎県知事選挙において、東国原英夫(そのまんま東)氏が26万6,807票を 得て当選したことについて、日本共産党・市田忠義書記局長の談話が、1月23日(火) 付の「赤旗」第2面に、「オール与党への不満の表れ」という見出しの下に掲載され ている。
 それによると、「官製談合や腐敗を日本共産党を除く『オール与党』で支えてきた 勢力が二手に分かれ、一方が官僚候補をおし、もう一方が別の官僚候補をおす--こ れはひどいではないかということに対する県民の批判が、そのまんま東氏に流れたの ではないか」「全体として、いま地方でおこっているチェック機能を喪失した『オー ル与党』政治に対する不満のあらわれだ」ということである。

 安藤前知事の逮捕のニュースなどを見ると、本当にひどい話であり、「官製談合や 『オール与党』体制への県民の批判の表れ」だという評価には、頷けるものがある。 東国原候補は、「県政の腐敗の一掃」を掲げ、「政党や組織のしがらみのない唯一の 候補」であると強調していたからだ。
 また、これを「元お笑い芸人の人心を掴む技能が遺憾なく発揮された結果だ」と見 ると、判断を見誤ることにもなるだろう。おそらくいま、どの地方でも、かつての 「横山ノック旋風」のような、政治を「シャレ」の世界にしてしまうだけの余裕は、 けっして窺えないと思うからだ。

 しかし、市田書記局長の分析には、非常に不満が残る。

 市田氏がいうように、官製談合が横行する県政を「日本共産党を除く『オール与 党』で支えてきた」ことへの不満の表れであるならば、なぜそれに正面から対決し、 「オール与党」体制を厳しく批判してきた日本共産党候補が、前回を5ポイントも上 回ったという投票率の選挙の中で、他の候補と一桁も違う散々な得票(1万4, 358票)しか得られず、当選候補の得票とでは18.5倍もの差をつけられてしま うのか。これは、単純に県民の「組織嫌い、しがらみ嫌い、反共意識」の表れである とか、「もともと保守地盤が強い宮崎の県民性の表れ」であるとか評価してよいの か。 東国原候補は、自民党・民主党の両党支持者からも多くの票を得たという調査結果 を、日本共産党としては、どのように受け止めるのだろうか。この対比はむ しろ、「オール与党体制」を打ち砕く県民世論の結集に対して、主として「自党以外 はみんな与党であるからケシカラン」という批判だけで対応してきた日本共産党の姿 勢に対する、消極的な批判であると受け止めるべきではないのか。

 こうした県政刷新への県民の願いは、同じく「官僚出身」候補でありながら、第2 位となった候補が民主党推薦候補(19万5,124票)であり、自民公明の政権与 党が推薦した候補は、12万0,825票と、東国原候補にダブルスコアの大差をつ けられて落選した結果を見ると、はっきりと見て取れるのではないか。

 当選直後に、宮崎県庁の若手職員の、「行政はそんなに甘くはない」という反感を 滲ませたインタビュー発言が報道されていたように、東国原新知事の前途は、けっし て容易ではない。

 しかし、日本共産党が、この選挙結果から充分に深い教訓を汲み取らず、依然とし て「二大政党制に期待するのは誤り。悪政ときっぱり対決する日本共産党の前進こ そ、決定的なカギを握っている」という、住民・国民の「サイレントマジョリティ」 の声を、まったく急速に結集できない政治方針に固執し続けるのなら、日本政治の近 い将来の展望も、同じように容易ならざることになる。

 原さんと丸さんとのやり取りに対して、詳細に検討する余裕がないため、人文学徒 さんの19日付論評から学ばせていただいたが、人文学徒さんにほぼ同感している。

 先の教基法改悪阻止闘争でも、関係政党や組織の如何を問わずに短期間に急速に運 動を発展させられたことが、国会内における民主党の一定の「抵抗」と共産・社民両 党との共同歩調を可能にした根本原因であると思っている。が、それでも、教基法改 悪策動の深刻な問題性は、巷にも広く広まっていた、国民的関心事だったとはお世辞 にも言えなかったと思う。共産・社民両党の地方での尽力と教育関係者や、普段から の市民憲法運動家ら努力で、一定の意識を持つ人々の周辺に急速に広がったレベルの 段階で、強行採決を迎えてしまったと思っている。  しかし、そのレベルでも、あれだけ国会内の動向を左右しえたのである。な ぜ、その大事な大事な教訓を、改憲手続法成立阻止や来たるべき参議院選挙に生かそ うとはしないのか。(今後の改悪教基法具体化阻止闘争方針にも言いたいことは あるが、ここでは割愛する。)  民主党でさえ、小沢代表が「格差社会」を問題にし、政権を取るために、自党の本 質を差し措いて国民の中に渦巻いている政治変革への願い・エネルギーを吸収しよう と、まなじりを決している。「対決姿勢」を打ち出すために、鳩山幹事長らとそれぞ れ「任務分担」をして世論の反応を見極めながら、今第166通常国会における改憲 手続法与党法案の成立にも、微妙な態度をとり続けているのである。これは、先の臨 時国会最終盤における教基法改悪法案に対する態度と、きわめて似たものであり、私 たちにとってはいわば、教基法改悪阻止闘争の「復習確認テスト」なのだ。  人文学徒さんの「左翼小児病」からの引用を、再度、ここに転記したい。

力のまさっている敵に打ち勝つことは、最大限の努力を払う場合にはじめてできる ことであり、かならず、最も綿密に、注意深く、慎重に、たくみに、たとえどんなに 小さなものであろうと敵のあいだのあらゆる『ひび』を利用し、各国のブルジョア ジーの間や、個々の国内のブルジョアジーのいろいろなグループまたは種類の間のあ らゆる利害の対立を利用し、また大衆的な同盟者を、よしんば一時的な、動揺的な、 ふたしかな、たよりにならない、条件的な同盟者でも、手に入れる可能性を、それが どんなに小さいものであろうと、すべて利用するばあいにはじめてできることであ る。このことを理解しないものは、マルクス主義と科学的な近代社会主義一般をすこ しも理解しないものである。(『共産主義内の『左翼主義』小児病』全集31巻58 ページ)

 一方で、加戸守行愛媛県知事候補を、社民党までもが支持していたというさるサイトにお ける「明るい共産党をつくる会」さんの指摘にも驚いたが、日本共産党の姿勢を見る につけ、とても、暗い気持ちになる。