2月20日(火)の毎日新聞東京版「とうきょうワイド」面に、
「'07統一選 知事選」シリーズの一環として、6.8×10?大の
写真入り記事がある。「知事3選阻止へ4473人の署名提出 都
に市民団体など」という1段見出しの記事であるが、「都教育
委員会による『日の丸・君が代』の強制などに反対する市民団
体や関係訴訟原告団の14団体が19日、石原慎太郎知事の下で教
育破壊が進んだとして、4月の知事選での石原知事3選の阻止
を目指す4473人分の署名を都に提出した。今後も署名集め
を続け、追加して提出する。」とある。
九条の会の事務局長を務めている小森陽一東大教授が呼びか
け人となっているという。
署名対象者も、いつから取り組み始めたのかも定かではない
が、改悪教基法制を先取りしていたかのような都教委による異
常な教育現場での強制に対する、先の教基法改悪反対運動の成
果をも踏まえた取組みであることが推測される。
同じシリーズ記事のヘッドラインは、「石原氏自民推薦辞退
都議会会派に波紋」というもので、見ての通りだが、記事末
尾に、「民主党の独自候補擁立が難航していることを挙げ、『
知事としては、前回のように民主都議の一部が支援に回ること
を期待しているのでは』と分析する声もあった。」と、都議会
自民党側の分析を記している。
石原知事としても、「自分の個人的な力で2期当選を勝ち取
ってきた」と強がっては見せるものの、年明けからの四男の重
用問題、超豪華「出張」・料亭政治交際費問題等々、「個人的
人気」に深刻なダメージを与える実態暴露の連続で、この上安
倍政権の支持率低下のあおりを喰らっては堪らないと、急遽「
無党派都民色」を押し出し、併せて、自公両党と「対決色」を
鮮明にしている民主党都議からの「都民党」的な支援にもあり
つきたい、というのが本音のところではないだろうか。
小森陽一教授らが、4473人分の署名を提出して記者会見 したのが19日のことだから、2月20日と21日(水)の「赤旗」紙 面で、この情報がどのように扱われているかを丹念に探してみ た。
結論は、「無視」である。
社会面・社会総合面、政治面、国民運動面、東京面何れにも
、何の言及もない。東京面では、「吉田(万三)知事候補の都
政改革プラン」の連載掲載が始まっている。つまり、共産党は
もはや、「石原都知事の3選阻止」では物足らなくなっている
のだと解釈できるのではないか。
ここのところ連日のように、「自公民主オール与党」批判を
強めている日本共産党にとっては、それは当然のことであるか
も知れない。
しかし、この時期にあえて「石原都知事の3選阻止」を
掲げて署名を募り、しかも「今後も集め続け追加提出する」と
しているこの運動の「心」を、深く推し量るべきではないだろ
うか。
片や国政に目を転ずれば、小沢民主党代表が、とにもかくに も自らの事務所費内訳の公表に踏み切り、使途の適否はともあ れ、伊吹・松岡両大臣、そして安倍首相を追い詰めようとして いる。
もともと、憲法改悪は、国民民衆の中からその要望が沸き起
こってきたものでは何らなく、日米為政者の勝手な都合で、日
本国憲法の不戦非武装規定が邪魔になったからでてきた議論に
過ぎない。国民にとっては、目の前の生活苦、生活格差の解消
こそが重大問題である。米軍再編に伴う基地強化のあおりを受
ける各自治体(特に沖縄)住民にとっても、基地強化による生
活不安・生活妨害・生活危険の増大こそが問題のはずである。
その意味では、「いま問題なのは憲法改定ではなく、生活格差
の是正や生活不安の解消だ」というスローガンは、民衆の心に
スッと訴える。
それを、憲法改悪策動の「目眩まし」としてしまうか、それ
とも、「生活格差の拡大や生活不安の増大は、取りも直さず平
和憲法を破壊しようとする改憲策動と、その根っこを同じくし
ている」と気づいてもらう入口、重大な契機とするかは、偏に
訴える側の主体的な取組みにかかっているとは言えないだろう
か。
それなのに、「安倍首相が年頭から7月の参院選の争点とす るとした以上、受けて立つ」と意気込んで、ただ平板に「改憲 阻止も争点だ」というだけでは、「なぜ憲法が変えられようと しているのか、それは民衆の生活にどのような変化をもたらす のか」という、具体レベルにまで「ストンと落ち」ず、「平和 憲法を守れ」というきわめて抽象的な空中戦に終始してしまう 危険がある。それならば、「憲法改定ではなく、生活格差の是 正こそ現下の問題だ」とする、民主党の主張の方が、よほど民 衆には分りやすい。そしてまさに、民主党は、その「分りやす さ」を正確に突いて、党首自ら不退転の決意で決戦に臨んでい る。
その微妙な政治的力関係を、どうして共産党は、民衆の利益
のために最大限活用しようとはしないのか。
共産党がいうように、地方自治体はまさに、住民の生活の防
波堤である。民主党がいま、自らの「政権交代」という目的実
現のために、国民生活の防衛を最前面に押し出しているときに
、「過去の反省がなければ、いくらいま口先でうまいことをい
っても信用できない」という「正論」を盾にして、どうして「
自党こそが正しい」と「胸を張」れるのか。「そんなにいうな
ら、一度、手を組んで一緒に『生活防衛』に取り組んでみよう
じゃないか」と、どうしていえないのか。 (07.2.21
.記)