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「現状分析と対抗戦略」討論欄

東京都知事選と広島市長選

2007/4/8 千坂史郎

 東京都知事選挙は、現職石原慎太郎氏が当選した。この結果 をどう分析して今後の展望を立てていくか。

 私はフジテレビで、ぼそっと答えた小泉純一郎前総理の秘書 官飯島勲氏の発言に驚いた。飯島氏は、こう答えた。

「好感度。石原さんは好感度抜群ですよ。今度の選挙で石原さ んはかなり謝ったでしょ。あれが ぐうっと好感度を高めたんです。好感度が勝負ですよ。」

 はじめて参議院選挙に立候補した石原氏は、参議院の全国区 から出馬。なんと三百万票近くの圧倒的な得票を得て、ぶっち ぎりの初当選を決めた。それ以来、国民の間には、石原慎太郎 氏への好感度は、芸能界のスター並の高さを維持し続けた。そ れを実弟の石原裕次郎さんとその会社石原軍団と呼ばれるプロ ダクションが支えた。

 今回、石原氏の驕りや私物化などなどスキャンダルは多くの 都民の怒りを呼び覚ました。それはマスコミにも取上げられた 。石原氏陣営は相当な危機感をもった。
 そこで繰り出した高等戦術が、立候補の第一声が、「ごめん なさい」のひとことだった。もともと石原氏の好感度は抜群だ った。それゆえに石原氏のスキャンダルは逆に強い怒りをかっ た。
 しかしそこはさすが石原慎太郎氏。都民の深層心理になにを 訴えれば危機的状況を打開できるかの相当のプロがいた。おそ らく小泉内閣で広報を担当していまも安倍内閣の広報を担当し ている世耕議員周辺の人脈ではないか。
 石原氏の「今回はいままでとそうとう違うかたを参謀にお願 いした」という発言とも連なっている。佐々淳行氏。内閣官房 室の初代長官。あさま山荘事件で現地に行って陣頭指揮をとっ た警察の生え抜きのエリートである。危機管理の専門家である 。

 石原氏の冒頭謝罪声明だけが、勝因とは言えないとしても、 そのような手管に見られる戦術が、いくつも発揮されたと見る べきだろう。

 野党の側。明確になったのは、反石原陣営の分裂は、勝てな いという自明のことである。それは多くの識者や運動家の間で も言われたことである。

 もし浅野陣営と吉田陣営が統一していたら、勝敗はどうだっ たか。結果はわからない。健闘した浅野史郎氏と吉田万三氏の 健闘に敬意を表して両者の労をねぎらいたい。

 次の知事選では、協同と統一がなければ、ぜったいに勝てな いことを政党人や組織が肝に銘じることだろう。

 当日。めだたぬようにではあるが、広島市長の秋葉忠則さん が自民・公明の候補をうちやぶり当選した。ここでは民主・社 会・共産などの共闘も見られた。このことは、沖縄参院補選選 挙での健闘が期待される。わきあがる庶民の声をおさえず広げ るような、そんな選挙をどれだけ戦えるか。そこに、今後の選 挙の方向がある。

 都知事選で石原氏が投票したとはいえ、その票はおそらく前 回の驚異的な得票率七十パーセントをこえるような得票を下回 るだろう。今回の結果を次回に生かせるかどうか。そこに次の 陣地を開拓する要素があるのであって、民主と共産、浅野氏と 吉田氏の泥試合のような非難の応酬とは異なる生産的な議論に よる結果の分析がのぞまれる。

 統一地方選挙前半は終わった。だが、後半の選挙もそしてな によりも大きな政治的意義をもつ参院選が迫っている。すべて の平和勢力は早急に態勢を立て直して、次の試練に立ち向かう べきである。