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「現状分析と対抗戦略」討論欄

共産党85周年記念講演について─敗因は比例区基礎票5 0万票の流出。二つの「理論」と選挙戦術を総括するべきだ─ (1)

2007/8/24 原 仙作

1、はじめに
 日本共産党(以下、jcpと表記)の創立85周年記念講演 が8月9日に行われている。参議院選直後であるところから注 視していたのであるが、彼らの話は理論倒れの自縄自縛からさ っぱり抜け出す気配がない。あれだけ明確な結論が出たのは安 倍政権ばかりではなくjcpに対してもそうなのだが、安倍同 様、基本政策に間違いはないようなのだ。
 何度やっても失敗すれば、その実践を指示した理論は誤って いるのであり、どんなに庶民の利益を訴えても、その手段が誤 っていれば庶民に相手にされないのである。この単純なことが わからない。いつまでも相手にされなければ、立派なスローガ ンでも腐ってしまうものなのだが、彼らは「明日に生きる」と 反省するところがない。戦前とは違い、今日では庶民も無数の 情報を得て政治を見ているのであるが、どうも「北斗七星」と は化石のように”動かぬ”ところに至高の価値があるらしいの である。
 志位委員長の演題は「参議院選の結果─政治の展望と日本共 産党の役割」というものであり、不破哲三・前委員長(以下、 敬称略)の演題は「日本共産党史85年と党発展の現段階」と なっている。 この講演に注目する周囲の目は参議院選の総括 をどのように行うかというところにあるのだが、そもそもが参 議院選での敗北への危機感がまったく見られないのである。
 志位にあっては、得票分析が意図的に操作されており、敗北 の主要な原因である比例区流出票・約50万票の隠蔽に熱中し ており、不破の講演にあっては選挙結果にはまったく触れられ ていないのである。不破の議論は驚くほど単純な自・共対決史 観に基づく党史の自画自賛であり、選挙結果に一喜一憂せず「 革命的大局観」に立てと言う有様であるから、反省の気配は微 塵もないのである。
 1998年以降、10年も負け続けてくれば、その最大の被 害者はjcpに投票し続けた庶民なのであるが、不破らの視野 にはその庶民がいないのである。 二人の講演を見る限りでは 、来るべき衆議院選でもこれまでと同様の対応策・選挙戦術を 採り自滅の道を進むことは明らかであり、衆議院選で自民党を 下野させるうえでの障害物になることも明白である。そこで改 めて、志位らの意図的な敗因分析とこの党指導部の頭脳を占領 する二つの誤った観念(2大政党制論と自・共対決史観)を取 り出し検討してみることにしよう。

2、やはり出てきた敗因=「二重に難しい条件」
 はじめに、志位講演のほうから検討しておこう。内容を概略 すると、①参院選の結果について、②与党の大敗と新しい政治 プロセスのはじまり、③歴史の大局に立ってがんばろう、とい うことになる。ここでは主に①を検討する。③は党指導部独特 の自・共対決史観なのであるが、不破の講演内容を検討する際 に立ち返ることにする。②は要するに、jcpの綱領が今はじ まったばかりの新しい政治の内容になるはずだという議論なの であるが、緊急に検討すべきものではないので省略する。
 ここでは①に関して、特に常任幹部会声明にはなかった敗因 にしぼって検討してみよう。それは次のような文章である。

「今回の選挙は、わが党が前進する客観的条件をはらみながら も、それを阻む難しい条件が強力に作用した選挙でした。一方 で、自民・公明政治にたいする空前ともいえる激しい国民的批 判がわきおこり、その怒りの激流が野党第一党の民主党に集中 するという流れがおこりました。他方で、「自民か、民主か」 の二者択一を国民に迫り、日本共産党を選択肢から排除するキ ャンペーンが激しく展開され、自公批判の激流が共産党に流れ 込むことをせきとめる最大の壁となりました。そうした二重に 難しい条件のもとで、日本共産党が四百四十万票を得た意義は 大きいものがあります。」(同講演「赤旗」8月11日)

 やはり出てきたということである。選挙期間中は議席を増や せそうな感触があったし、負けた直後は今回の立役者・小沢民 主党の躍進に敗因を押しつけるのは雰囲気からして憚られたの であろう。

3、選挙期間中は違っていた
 敗因として民主党への票の「激流」と2大政党制キャンペー ンが「最大の壁」、「二重に難しい条件」と把握されているの であるが、この把握は明らかに選挙期間中の認識とは異なって いる。選挙戦終盤の7月25日の総決起集会では志位は「日本 共産党が果たしている役割が、こんなに光っているときはない し、こんなに語りやすいときもありません。」(総決起集会「 赤旗」7月26日)と述べており、2大政党制のキャンペーン にも民主党への「激流」にも触れられておらず、頑張れば”い ける” と見ていたのである。
 事実、今回の選挙では、マスコミによる自民か民主かという 2大政党制キャンペーンはほとんどなかったと言っていい。国 民の年金問題に対する怒りが爆発し自民党員でさえ怒っていた 状態であるから、自民が良いかというような選択肢などマスコ ミも立てようがなかったからである。jcp地方議員のブログ などを見ても、電話作戦では有権者との対話がいつになくはず むというものが大勢であったと言っていい。

 したがって、志位らは選挙結果を受けて、その見方を変え、 選挙区も比例区も区別なく民主党への票の集中=「激流」と2 大政党制キャンペーンが逆風になったと言うのである。この敗 因の選択は例によって敗北原因を党外要因に求める従来の手法 であり、これではいつまでたっても内なる問題を克服できず、 国民の支持を回復できないであろう。

4、敗因の事例研究(1)─「苦肉の策」─
 志位は敗因としてあげる「二重に難しい条件」が正しい敗因 の総括であることを証明するために、ある女性のメールを紹介 している。このメールが敗因の真の姿を示しているというわけ である。「従来のわが党支持者のうち約10%の方々が、今回 の選挙では民主党に投票しています。」(同講演)と言って、 志位は「そういう人たちはどういう思いでそうした選択をした のか」(同講演)を示そうとする。まず、党支持者の女性から のメールを掲載しよう。

「がんばってください。今回残念ながら議席を減らしてしまい ましたが、この結果は自公を、安倍総理を引きずり落とすため の苦肉の策の結果だったわけで、私自身も日本共産党の政策に 心から同調しておりましたが票を分散させないよう苦肉の策を 講じることになりました。しかし、日本共産党を支持する気持 ちは全く変わっておりません。ですから今回日本共産党を支持 する方が減ったというようには決して考えないで、これからも 自信を持ってがんばっていただきたいです。そうでないと心苦 しくて仕方がありません。」(同講演)

 こうして民主党へ流出した支持者の票「約10%」(同講演 )と無党派層の8.6%=「百万近い人々」(同講演)の流入 を合わせた結果が、比例区の440万票だと志位は言うのであ る。

「一方で、従来のわが党の支持者が『苦肉の策』として民主党 に一票を投ずるという動きがありましたが、他方では、おそら く百数十万という規模で無党派層、他党支持者からの支持を得 た結果が、四百四十万という得票であります。」(同講演)

 志位は、この事例をあげながら、比例区440万票の獲得の 方を強調しており、肝心の支持者の票10%が民主党に流れた ことが敗因だとは明言しないのである。敗因はあくまでも支持 者の「苦肉の策」に現れた「二重に難しい条件」にあるという わけで、敗因がぼかされ、熱烈な支持者のつらい胸の内だけが 印象づけられる講演になっているのである。
 この講演を聴いた人は誰も支持者の票が10%も民主党に流 れたことが敗因だとは気がつかないであろう。

5、敗因の事例研究(2)─混同の発生─
 志位がメールの事例をあげた敗因分析の話は曖昧なものなの だが、この曖昧さは実は非常に巧妙に計算されたものなのであ る。いささか、詳細にわたる検討になるのだが、この実例によ る説明のなかに志位ら党指導部の”苦心する精神”=敗因を何 とかして外部に求めたい精神が隠されているのである。このシ ナリオを書いたのは誰であろうかという興味さえ湧いてくる筋 書きがあるのである。
 まず、最初に指摘しておかなければならないことは、この女 性は2大政党制キャンペーンに乗せられているわけではないと いうことである。彼女なりの安倍政権打倒戦術に基づいて「苦 肉の策」として投票行動を起こしているのである。これでまず 「二重に難しい条件」の一角が簡単に崩れたわけである。
 次に、この女性の投票行動が民主党への「激流」の一事例で あるかを見てみよう。確かに「激流」の一事例なのであるが、 まず、志位の説明には単純な誤りがあること指摘しないわけに はいかない。熱心なjcp支持者であるこの女性が「票を分散 しないように苦肉の策」を講じたのは比例区票ではなく選挙区 票であるということである。
 なぜなら、比例区票は一票も死票にはならず、票の分散とい う問題は生じないからである。「苦肉の策」というような戦略 投票をやる熱心な支持者がそんなことをわからないはずがない のである。 この女性は比例区票ではjcpに投じているので ある。仮に比例区票でjcp支持者が他党派へ投票する場合は 、その多くがjcpへの何らかの批判があるからであって、こ の女性のように全面的なjcp支持を表明するはずがないので ある。
 志位は選挙区で民主党へ投票したこの女性の一票を比例区の 流出票にカウントしたうえで「二重に難しい条件」の例証とし て説明しているのである。これはとんでもない混同・勘違いで ある。簡単な話なのだが、メールの事例は比例区票10%が民 主党に流れた事例ではないのだから、比例区票が流出し議席減 となった説明には使えないのである。
 志位が犯した誤りはあまりに杜撰すぎないであろうか? 記 念講演であり、選挙総括にあたる部分であるから常任幹部会で も検討されたであろうと思われるのであるが、それにしてはあ まりに杜撰である。単なる勘違いであるなら、選挙総括自体が 真剣に行われていないということを示している。
 しかし、この杜撰な誤りが党指導部にとって都合のいい勘違 い・混同ということになると、故意の誤りだった可能性が高く なるのである。

6、敗因の事例研究(3)─比例区票の動向が総括基準─
 ここで、jcpの選挙戦の最重点は比例区選挙におかれてい たことを想起してみよう。jcpは主戦場を最初から比例区に おいており、前回の参議院選直後から絶対確保5議席を目標に 営々と活動を続けてきたのである。志位はこう言っている。

「比例代表というのは、政党間の力関係の基本が一番あらわれ るたたかいです。ですから比例代表選挙こそ選挙戦の主戦場で す。そして、この選挙の結果と国政でのわが党の地位をはかる 最大のモノサシは、比例代表でどれだけ得票を得るか、そして それによって5議席という目標を達成できるかどうか、ここに あります。ここに最大のモノサシがあります。ここで得票目標 を達成し、議席を伸ばせば、わが党は前進したといえます。」 (同総決起集会)

 比例区が主戦場であるから、比例区票がどうなっているか、 議席を減らしたのだから、この比例区票獲得にどんな困難が作 用したのか、これこそ、総括の一大ポイントをなすはずである 。ところが志位の事例は、「激流」の一事例ではあるが、比例 区ではなく選挙区で起きた「激流」に該当している。「主戦場 」に作用した困難ではなく、選挙区で作用した困難の事例をも って「主戦場」に作用した困難を説明しているのである。
 こうして、「主戦場」である比例区における議席減を説明す る「二重に難しい条件」の例証(メール)は何の役にも立たず 、例証にもなり得なかったわけである。

7、敗因の事例研究(4)─比例区票25万票流出─
 そこで、例証になりえないメールを例証に仕立てた理由が問 われなければならない。推理小説の謎解きのようなことになる のである。比例区票440万票は、一方では無党派層から8. 6%(約100万票)の流入があったという。上に引用した志 位の発言では「おそらく百数十万という規模」とさえ表現され ている。
 しかし、他方では志位も言うように民主党に約10%の支持 者の票が流れたのであるから、概算にして25万票が民主党に 流れたわけである。jcpの基礎票は90年代の350万から 今では250万に減っている。志位は2005年の4中総で「 もとの党支持者はだいたいその半数の二百数十万人程度」と言 っていた。ドント方式では、あと4万票あれば、最終議席が転 がり込み前回なみの4議席になったのであるから、実にこの2 5万票の流出こそが比例区で敗北した直接の原因なのである。
 jcp指導部もこの流出した25万票を隠すわけにはいかな いのである。前回は比例区では議席減とならなかったので隠せ たが、今回はそうはいかない。新聞の出口調査に載り、議席減 の直接原因と見なされる25万票だからである。選挙総括の一 つの重要な論点になるところなのである。しかも、流出したこ の25万票は支持者の票なのであるから、2大政党制キャンペ ーンに踊らされた無党派層の票ではないのである。
 そういう25万票であるから、この流出票はjcp指導部の やり方へ何らかの批判を持っているから流出したと考えるほか ない25万票なのである。ここで志位ら指導部は窮地に立つこ とになったのである。
 この25万票は、志位が取り上げた「二重に困難な条件」に 当てはまらない25万票なのであって、しかも比例区で議席減 となった直接の原因である。そうなると「二重に困難な条件」 に敗因を押しつけられず、敗因をjcpの内に見いださなけれ ばならないことが明瞭になるのである。この票にはトゲがあり 、党指導部の指導に問題があったことを告発する25万票なの である。

8、敗因の事例研究(5)─”票ロンダリング”装置の考案─
 そこで、志位らは鳩首協議し、この流出票を認めた上で(こ れは隠せないからである)、この流出票を「苦肉の策」として 流出した票に”読み替える”ことによって、流出票が党指導部 への批判票ではなく変わらぬ支持者の票であるように見せかけ ることにしたのである。
 しかし、この見せかけるという作業は説明ではやりにくいこ とであるから、ある仕掛けが、ある小道具が必要になるのであ って、それがあの女性のメールなのである。”トゲ抜き地蔵” というか、メールがマネーロンダリングならぬ”票ロンダリン グ”の装置にされているのである。
 うっかり聞き流せば、「苦肉の策」で票が流出するのもあり 得ることだと思わされるのである。「苦肉の策」の一票も大雑 把には民主党への「激流」の一部だとも解釈できるのである。
 こうして流出した25万票から党指導部への批判というトゲ を抜き去ったうえで、「二重に困難な条件」に納めることがで きたというわけである。しかし、犯罪には犯行の跡が残るもの で、メールの女性が投票した選挙区票を比例区票と”読み替え る”(勘違いする)という杜撰な誤りが残ったのである。つま り、このあまりに杜撰な誤りはここで書いてきた犯行を完遂す るうえで不可避的に犯さざるを得なかった勘違い・混同なので ある。
 志位が犯した勘違い・混同を偶然のものとみなすことができ るであろうか? どうであろうか? すでに書いた「安倍晋三 も嗤う・・・」で分析したように「常任幹部会声明」は惨敗を 過小に見せることに汲々としていたことを考え合わせると、志 位の杜撰な勘違いは参議院選敗北の直接の原因=約25万票の 流出(jcp指導部批判票)を隠蔽するための故意の誤りだっ たと断定してもまちがいではないであろう。

9、敗因の事例研究(6)─流出票は実際は50万票─
 この断定をだめ押しする意味で、志位のトリックを傍証する もう一つの事実を書いておこう。志位は比例票の約10%が民 主党へ流れたというのであるが、実は比例区で流出した支持者 の票は10%ではないのである。他の流出票には口をつぐんで 隠しているのである。
 志位は無党派層からの流入票8.6%の出所を共同通信の調 査だと明示しているのだが、民主党への流出票「約10%」に ついては「各種メディアの出口調査をみますと」と言っている だけで出所を明示していない。そこで大手新聞を調べると朝日 新聞がグラフを作成して民主党へ10%という出口調査の数字 を掲載(7月30日)しているのであるが、そのグラフではj cp支持層からの流出票全体は10%ではなく21%なのであ る。民主党以外へも半分流出しているのである。
 つまり、志位はjcp支持者からの流出票は21%だと言わ ずに民主党への流出分10%だけを報告しているのである。こ の意味がわかるであろうか? 21%と報告したのでは、流出 票を民主党に流出したとして「二重に困難な条件」に押し込む ことができないからである。そして、そこに押し込むことがで きなければ、支持者の票が流出した他の原因を探さなければな らず、また、その流出票の性格が問われることになるからであ る。こうなってしまえば、事例を挙げてトゲ抜きした意味もな くなるのである。だから、志位は民主党への10%は報告して も21%には沈黙したのである。
 こうして、志位ら党指導部は敗北の原因を党外に求めるため に小道具として女性支持者のメールを用いたのであるが、その ことによって逆に敗北の原因が党外にある「二重に困難な条件 」ではなく、主に流出した党指導部批判票50万票にあること を自白したのである。
 物事を相互関係の内に、総体的に考察するならば、「二重に 困難な条件」に一切の敗北の原因を押しつけられないことはわ かりきったことであり、50万票の流出という比例区敗北の直 接の原因を率直に指摘し検討するべきだったのである。
 しかしながら、志位ら指導部には、はじめから、そんな気は さらさらないことがよくわかるのである。以前から、志位ら党 指導部の利益は庶民の利益から遊離していると指摘してきたの であるが、その指摘を改めて確認できるのである。

10、敗因の事例研究のまとめ─敗因は基礎票50万票の流出 ─
 以上の検討をまとめてみよう。党指導部は選挙期間中はなん とか”いける”という感触はもっていたのであるが、ふたを開 けてみれば惨敗であった。そこで敗因探しをしなければならな くなるのであるが、民主党に票が流れたということにするのが 党指導部には一番都合がいいし、説得力もある。ところがやっ かいな問題は党支持者の比例区票50万票が流出したことにあ った。
 この流出票は比例区敗北の直接の原因であり、党指導部への 批判票である。この批判票をどのようにして「二つの難しい条 件」に押し込むか、ここに党指導部の苦心があった。”票ロン ダリング”の小道具としてのメール、そして流出票21%への 沈黙という小細工をしたのであるが、選挙区票を比例区票に” 読み替える”という犯行の痕跡は残さざるを得なかったのであ る。
 これだけの創意工夫(?)ができるのならば、敗因操作では なく庶民の利益を実現するために、弾力的な選挙戦術を工夫し てほしいものである。敗因操作で被害を受けるのは庶民である ということが、保身に熱中するこの党指導部はわかっていない のであろう。
 不破や志位の頭の中では、党指導部擁護=党擁護=庶民の利 益擁護という三位一体範式があるのかもしれないが、この範式 が成り立つためには敗北や誤りに対して作為なく真剣でまじめ な公然たる態度をとることが必要である。彼らに適切なレーニ ンの評言があるので、それを贈ることにしよう。

「政党が自分のおかした誤りにたいしてとる態度は、その党が まじめであったかどうかをはかり、党が自分の階級と勤労者大 衆にたいする自分の義務を実際にはたしているかどうかをはか る、もっとも重要で、もっとも確実な基準の一つである。誤り を公然とみとめ、その原因をあばきだし、それを生んだ情勢を 分析し、誤りをあらためる手段を注意ぶかく討議すること── 、これこそ、階級を、ついで大衆をも教育し、訓練することで ある。ドイツ(とオランダ)の「左派」は、この自分の義務を はたさず、そのはっきりした誤りを研究することに、非常に注 意深い、几帳面な、慎重な態度をとらなかったが、まさにそれ によって、彼らは、自分たちが階級の党ではなく、サークルで あり、大衆の党ではなくインテリゲンツィアとインテリかたぎ のもっとも悪い面をまねる少数の労働者とのグループであるこ とを証明している。」(「共産主義内の『左翼主義』小児病」 全集31巻43ページ)

 この評言は非常に意味深長であり、不破・志位指導部の姿を 的確に表現している。庶民の利益を忘れた悪しきインテリかた ぎのサークルなのである。この悪しき姿が糺されないならば、 やがて、庶民の利益の旗も単なる”メシの種”・ビジネスの旗 に変質するであろう。
 参議院選で奮闘した党員の中には、あれだけ国民の感触がよ かったのにどうして比例区で議席を減らすんだという割り切れ ない思いが残っているのであるが、21%=50万票の流出と いうことが、ザルで水をすくうような事態を説明しているので ある。
 メールの女性の投票行動は本質的には志位ら指導部の選挙戦 術への批判なのである。東京選挙区の敗北は、この50万票と いう支持者の流出という事実を確認することで初めてその敗北 の原因を理解できるのである。すなわち、ここでは「苦肉の策 」を選択する必要が発生しており、比例区票よりはるかに流出 への圧力がかかるからである。
 まさに、流出した50万票が参議院選総括の鍵なのである。 そして、このような支持者票の流出は”基礎票の流出”として 、何年も前から指摘していたことである。
 党員諸兄は、比例区流出票50万票を党指導部が真摯に検討 するかどうかを監視されよ。 (つづく)