ドル・株急落でマーケットも安倍政治からの路線転換 迫る 先週末、ドルと株が急落しました。ドル急落の直接の引き金 は「サブプライムローン」(アメリカ版住宅金融)問題。
「証券」でお金を集めているため、昔、日本でおきた「住専 」問題のように、特定の銀行や農協に損害が集中することはな い代わりに、「被害」の拡散範囲が大きい、それだけに、疑心 暗鬼から、株価の下落につながりやすいことが特徴と言えます 。
●国際的バブル構造の崩壊
しかし、根本的には、アメリカが海外からのお金の流入で経 済を持たせていた構図が、調整を強いられているということで もあります。「来るべきものが来た」と言うべきです。
日本がお金持ちや大手企業にばかりお金を集中し、国内でお 金をあまり使わない→アメリカに国債購入やキャリー取引の形 で貸す→アメリカは日本からモノを買う(中国の日本企業現地 法人経由も含む)→日本はお金をまたまた国内で使わない―と いうサイクルがありました。アメリカに貸すことでアメリカは 貿易赤字でもドル安になりませんでした。一方、実は、アメリ カ国債を売ったアメリカ人(のお金持ち)は、円を引き換えに 手に入れ日本の株や土地を買い集めました。
しかし、ひとたび、アメリカ経済に暗雲が垂れ込めるとそう はいきません。バランスが一挙に崩れます。
●日本経済「回復」の虚実
日本は、この10年間、内需を低迷させても、アメリカへの 輸出(+アメリカ現地法人での稼ぎ=所得収支)でなんとか経 済を持たせてきました。1998年のいわゆる橋本不況(参院 選で橋本総理(当時)が惨敗し退陣)からの脱出の際も、輸出 +公共事業で復調しました。
小渕政権は、公共事業を増やしたという意味では内需拡大で す。しかし一方で、労働者派遣の原則自由化などを強行しまし た。法人税も軽減しました。「大手企業」が「輸出」により、 「労働者使い捨て」と「庶民を犠牲にした法人税減税」に支え られ、業績を回復させるという路線を取ったのです。
実は、これは、安倍政権にまで引き継がれています。そして 、そのつけは、税収の落ち込み、そして、国債発行の増加、庶 民への増税、かくして、庶民から国債を持っているお金持ちや 大手企業への所得移転と言う「格差拡大」になっているわけで す。庶民は「賃金引下げ」と「国債利払い」と言う形で往復ビ ンタを食らったのです。
小泉政権は、公共事業は削りましたが、税収が低迷し、政府 の赤字は増えました(民間が貯蓄超過ですから、もし政府と外 国がお金を使わないと大デフレになってしまいます)。
小泉政権の下では、輸出が経済を支えました。とくに、20 02年に、竹中平蔵さんが金融担当大臣になると、竹中さんは 、アメリカの要求で、不良債権処理加速化、中小企業つぶしを 強行しました。一方で、日銀には資金供給を行わせました。た だし、金融庁には国内融資を締め上げさせていますから、それ は海外に流れ、円安をもたらします。一部のお金持ちのアメリ カ人は、低金利で借りられる円で資金を調達し、それをドルに 換えて世界中で(投機)暴れ回りました。アメリカのバブルは 、円安とあいまって、日本からの輸出も支えました。
それが、2007年上半期には「過去最高の経常黒字」。頂 点に達したのです。ただし、内需は低迷しました。安倍さんが 「成長を実感に」というポスターを参院選用に貼ったのも内需 低迷の何よりの証拠です。
内実は2007年1-3月期の4.6555兆円の所得収支 の黒字は37.25%がアメリカ、29.3%がEUです。貿 易黒字はアジアとアメリカが約2兆円づつです。ただ、対アジ アの貿易黒字は実はかなりがアメリカへの「迂回輸出」ですか ら、実際はアメリカ依存です。
●自力で回復するしかない
その構図が、今回、とうとう、もたなくなったのです。小泉 ・安倍路線に国民に引き続き、マーケットも不信任を突きつけ たのです。1998年の小渕政府、2002年の小泉政権のよ うには、日本経済はアメリカに頼れない。
小渕政権時代はまだアメリカが好況でした。2002年のと きは、先ほど申し上げたように、日本は不良債権処理加速化、 中小企業つぶしという代償を払っています。それらの手はもう 使えない。「自家発電」で復旧するしかないのです。他の国も もちろん、それなりに回復策を取るでしょうが、しかし、「日 本の面倒までは見切れない」のです。
●思い切った内需拡大策を
まず、政府は、今まで散々逃げてきた「内需拡大」に正面か ら取り組むことです。
1.社会保障、雇用などのセーフティネットを個人単位で国家
の責任で整備する。
2.労働者への分配強化
3.地方が直接潤う投資の増加
中身的には、民主党や国民新党が参院選で掲げたマニフェス トの方向でおおむねよいと思います。財源は当面は「財務省保 有の外貨準備」を担保としたお金の発行でまかなう。回復が確 認されてからは、お金持ちや大手企業からの負担を増やす。そ して、当座の危機管理策として、もし危機が深刻化しそうな場 合は、国が「金の出し惜しみ」をしないことです。
田中の角さんが1965年の山一證券危機で取ったように「 無制限で株を買い上げる」と宣言するような対応が最良です( どういう危機の形になるかは分かりませんから、あくまでこれ はお手本の例としてあげました)。「戦力の逐次投入」が一番 まずいのです。
まさに、日本版「ニューディール」が求められるときです。 「人権なくして成長なし」なのです。
●「北条高時集団」=安倍内閣には期待できない
ただ、今の総理と取り巻きを見ていると、日銀に任せ切りで 、危機感がないように見えます。人事をネタに「権力闘争ごっ こ」をしているようにも見えた小池百合子防衛大臣、塩崎恭久 官房長官(当時)。
飽き飽きしている足利高氏に闘犬に付き合わせた挙句、猛犬 を引いて場内を回るようよう命令した、「大河ドラマ・太平記 」での鎌倉幕府の最後の権力者・北条高時のごとく、忙しい女 性たちの生活実態も踏まえずに「母乳で子育て」「子守唄を聞 かせろ」などの「教育再生」にふけり、国民に押し付けようと する山谷えり子総理補佐官。
参考:
・太平記大全 第1回「父と子」(徹夜城の多趣味の城)
「安倍総理を擁護する」とかっこいいことを言いますが、実 は内閣改造へ向けて、「点数稼ぎ」しか頭にないと思われるベ テラン入閣候補者。内閣全体が「北条高時状態」で、とてもじ ゃないですが、「有効打」がうてる状況ではないと思います。 今や、厚生労働官僚からも「労働者への分配強化」による「内 需拡大」を求められ、アメリカ国内からも、女性労働者の人権 状況に疑問が呈されています。
参照:
・平成19年版労働経済の分析─ワークライフバランスと雇用
システム─(厚生労働省)
・Career Women in Japan Find a Blocked Path(NYタイム
ズ、無料アカウントを取得の上で閲覧できます)
そして、多くの国民からは参院選と言う形で路線にノーをつ きつけられました。みんなが、「総理、間違っていますよ」「 こうすればいいですよ」とアドバイスしてくれているのです。 だのに、聞く耳を持たない総理と取り巻き。いまや、総理を一 生懸命支持してくれるのは、一部のネット上の「ネオコン」の 方々くらいですが。彼ら、彼女らは、ひいきの引き倒しになっ ているでしょう。
結局、安倍総理及び、自民党幹部に有効打を求めることはそ もそも間違いでしょう。総理は、夏休みを返上されたようです が、そんな安倍さんがいくら一生懸命になっても、「小田原評 定」にすぎないとおもいます。
野党はどうか?1998年の金融恐慌では菅直人さんが「政 局にしない」といいましたが、そんなことを言っている場合で は今回はないと思います。
責任を持った対応ができない場合、そうした総理や与党には ご退場いただく、そういう断固たる姿勢が今回は必要ではない か、はっきりいってしまえば、「国民の暮らしを良くすること を邪魔する総理を排除するため」「政局にしてしまって」良い のではないでしょうか?