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「現状分析と対抗戦略」討論欄

福田康夫自民党総裁の戦後政治史での位相

2007/9/24 千坂 史郎

 福田康夫氏が自民党の枠組みと離れたリベラリストとは言え ません。自民党の枠組みの中の政治家でしかない、そのとおり です。しかし、それは政治的行為の枠組みや政策のことです。 いままでの小泉純一郎は、小森陽一氏が『心脳コントロール社 会』で書いたとおり、庶民の深層心理をコントロールする手段 に出た。安倍晋三は、まったく政治的状況も国民意識も無視し た採決の強行の連続による戦後民主化の枠組みの解体を強行突 破しようとした。/p>

 小泉氏や安倍氏と福田氏は、同じ自民党中枢の同じ派閥でも ありました。しかし、ここからが私の言いたいことです。

 福田康夫は、政治的には町村派に属しているし、森、小泉、 安倍の首相歴任者の軛(くびき)から逃れられないでしょう。 その点では、福田氏に過大な期待をすることは幻想です。しか しながら、その政治手法において、小泉・安倍路線とは明確に 異なるのは、議会主義を踏襲している点です。

 父親の福田赳夫の秘書を務めていて、福田赳夫の政治手法は 福田康夫にしみこんでいます。福田赳夫は岸派を受け継いで、 自民党右派の領袖とも目されてきましたが、戦前に福田赳夫は 大蔵省にいて、陸軍の軍拡に対応して、軍縮路線の官僚として 、五一五事件や二二六事件の軍人テロルをも見てきました。岩 波書店社長だった安江良介氏は美濃部都知事の特別秘書も務め ましたが、安江氏は福田赳夫との対談でそのことをひきだして います。詳細は岩波書店から出た福田赳夫の自叙伝に対談とし て掲載されています。
 私が言わんとすることは、小泉はポピュリズムを駆使したし 、安倍は靖国派とも目される右翼ナショナリズムを目指しまし た。福田康夫は、自民党の枠組みの中でしか政策を出せないだ ろうが、その手法は議会主義の正統派を選択すると予想されま す。この議会主義に対して、総裁選で秋葉原などで若者に人気 を得た麻生太郎は明確に小泉政治と同じポピュリズムでしょう 。

 福田康夫が、小澤一郎とどのような駆け引きを行なっていく か。危険な日本の政治情勢のなかで、民衆派が二人の保守政治 家リーダーのはざまで民衆民主主義路線を要求し定着させてい くか、いよいよ戦後の民主化の根本がラジカルに問われていく ことでしょう。その点で、日本共産党が近づく衆院選小選挙区 で、候補擁立を全選挙区から立てていたいままでの方針を転換 して、見直しを決定したことは意義があります。マスコミでは 、この方針は自民党よりも民主党に有益であると見ています。 今後の国会対策の中で、福田康夫個人の人格よりも総理として 出してくる政策にどのような対応をするかが問われます。自民 党には、かなりの新自由主義派や右翼民族派もいますし、民主 党も若手を中心にして自民党ネオコン路線派と同一の議員もい ます。
 福田康夫個人の言動に惑わされず、まもなく新総理と目され る福田氏の現在の日本政治情勢で置かれている役割から出され る政策を、よく見極めることが大切です。支配体制は、福田氏 の言動によっては、氏を放逐させて、もっと危険な政治家をト ップにもってくることもあり得ます。過不足なく、見極めるこ とがまずは肝要なゆえんです。