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「現状分析と対抗戦略」討論欄

国の地方法人二税への介入に反対する

2007/10/26 さとうしゅういち 30代 サ ラリードパーソン(連合組合員、社会市民連合事務局長、一応 民主党員)

 地方間の格差を是正するため、地方の法人2税(事業税、住 民税)に国が介入し、東京などの税収を財政力が弱い地方に移 転する案を自民党は検討しています。

 しかし、これは、いくつかの点で、問題があります。

 第1に「地方税」の領域に国が介入するものです。地方税は 、地方の「自主財源」(自前の財源)であり「一般財源」(自 由に使える)です。国が介入することで、その2つが崩れてし まいます。それにより、地方自治が大きく破壊される恐れがあ ります。

 もっと言ってしまえば、東京など大都市圏と地方をうまく自 民党政府が分断して統治しようという狙いが見え見えです。地 方には「格差を是正してやる」と押し付けがましく恩を売る。 東京などには、「地方に収奪されている」という、地方への敵 愾心を煽らせる。

 おそらく、「9.11総選挙」の二番煎じでも狙っているの ではないでしょうか。そう、小泉さんが「田舎のセクハラオヤ ジをやっつける雰囲気をかもし出して、大都市の若者や、特に インテリの女性をひきつけた」あの選挙の二番煎じです。

 第2に、なぜ、小泉さんが減額した地方交付税を元に戻すこ とではいけないのか?

 そもそも、地方交付税こそ、地方の「助け合い」の財源です 。国税の一定割合を地方のために確保し、それにより地方に財 源を保障する。地方が助け合う。これが、交付税の本旨です。

 ただ、いわゆる土光臨調行革路線の下、中曽根政府は「増税 なき財政再建」を掲げた。そこで、地方への補助金を削るかわ りに、地方に借金をさせて公共事業をさせた。その借金の返済 の面倒を交付税で見る、というように制度をゆがめた。そして 、最近では、地方分権の受け皿と称して、市町村を合併させ、 合併した市町村には特例債を発行させ、その返済を交付税で面 倒を見るという形にしています。交付税を国のコントロール手 段にしてしまったのが間違いです。

 だが、だからといって、そうした不条理を悪用して、地方交 付税に対して敵愾心をあおり、カットした小泉さんはもっと不 条理です。お陰で多くの自治体が財政危機に陥ったのです。

 第3に、消費税であれば、地方間の税収の格差は少ないので はないか? だから、この消費税の地方分(現在1%)を増や すことで「税源委譲」をすればよいのではないか?

 したがって、私は以下のように考えます。

 地方格差の是正は、
 1、地方間の助け合いシステムである地方交付税増額
 2、地方間で差が少ない消費税の地方移管
 3、法人にかかる税への原産地主義導入の検討

によるべきではないか、とおもいます。

 1、2については、関東地方知事会が提案しています。

 消費税引き上げ国に提言へ 関東知事会「地方税源に」 '07/10/24

 1の地方交付税については、運営方式を見直せば良い。すな わち「地方共有税」と言う名前にするのです。これは全国知事 会が提案しています。

 その上で、総務省の旧自治省的な部門を分離独立する。それ は、国の公務員ではなく、地方の代表を送り込むのです。

 現在は総務省から自治体に天下りを行い、地方自治体をリス トラして、それを成果に引っさげて出世するという実態になっ ている。

 それではいけない。むしろ、例えば、100人くらいの「地 方共有税運営委員会」を、地方議員から男女半々で選び、「共 有税」の運営を任せる。地方同士の助け合いに任せれば良いの です。

 2の消費税についてはどうか?

 関東地方知事会としては、消費税引き上げを提案し、その分 を地方に回すという方向です。

 もちろん、私は現時点での消費税引き上げに反対です。5% のうちの地方消費税部分を増やせという上田埼玉県知事の考え を支持します。

 ですが、中央の自民党の消費税引き上げは、「緊縮財政によ る不況や金持ち減税などで税収が低迷した挙句の破れかぶれ」 であるので、断じて容認できませんが、関東知事会案は議論に 値すると思います。

 安定財源である消費税により、地方は介護などを賄えば良い と思います。そして介護なども、厚生労働省の、まるで「サー ビスを受けさせないためにあるような」通知に縛られず、自治 体が地域の実情に合わせて、個人のニーズに合わせたきめ細か なサービスを提供できるようにすればよいのです。

 3についても今後検討していくべきです。地方の工場で東京 の会社が儲けても、実際には利益は東京本社に付け替えられる という問題があります。「法人2税」に国が介入するよりはマ シだと思います。

 自民党というより、官僚は、どうも「地方をコントロールす るように、コントロールするように」動いているように見えま す。地方育ちの良くも悪くも泥臭い自民党議員が減っているこ とも、官僚が付け込みやすくする隙を作っているように思えま す。

 官僚には、「弱みに付け込んで」米軍基地などを押し付けた いという思惑もあるのでしょう。しかし、もう時代遅れです。 いまこそ、地方自治を確立すべきではないでしょうか?

 そもそも、税金は「国の官僚や政治家」のものではない。当 然、国民(住民)のものです。「飴と鞭」で地方自治体を小突 き回す政治家や官僚は、税金をまるで自分のものであるかのよ うに勘違いしているのです。そういう時代には終止符を打たね ばなりません。

 今回の関東地方知事会の方針は「他者への共感」が感じられ 、よかったと思います。国により「地方」が分断されていくこ とはさけなければならないと思います。