福田総理は、2日、民主党の小沢代表との一度の中断をはさんだ党首会談で「大連立政権」を呼びかけてきました。
ボクシングで言えば、KO負け寸前のチャンピオンが、突然、「チャンピオンベルトを共有しよう」といいだしたのです。
■「自社さ」の二の舞繰り返すな
私が愚考するに、民主党は断じて、これに乗らずに正解だったと思います。
もし、組んでいたら、イデオロギー配置状況は異なりますが、 1994年の「自社さ連立政権」と同じで、自民党を延命させ るだけです。
大連立は、そうはいっても、「チャンピオン」は衆院第一党 の自民党だと世間は認めてしまう。民主党には、亀田兄弟並み の非難が浴びせられるでしょう。
1994年当時の日本社会党は、ハト派の河野洋平総裁を押 し立ててきた自民党に騙され、大連立を組んだ。小沢さんのス タンスを誤解していた故のリベラル派の彼への恐怖心もそれを 助けてしまった。
あのときは、社会党は是々非々で行くべきだった。小沢さん の強引な手法には反対しつつ、一方で、介護休業法や被爆者援 護法(新進党案)など、いまからみても、先進的な小沢さんの 良い政策は良いものとして、通していけばよかったのです。だ がそれができなかった。
その結果は、言うまでもありません。結局、自民党は、その 後、ネオコン化していった。対米従属を強め、消費税を増税し 、社会保障を切り捨ててきたのです。それに引きずられた日本 社会党改め社民党は、あっというまに、議席一桁政党に転落し てしまいました。
今回も、自民党は、まさに「自社さ」と同じ手口で、「ソフト 」な福田総裁で連立を仕掛けてきたのです。
■せこい延命策に過ぎない
しかし、自民党の本質は、私は何度も強調して来ましたが、
1、「えらい人」の利益だけを守る政党。
2、アメリカに従属する政党
です。
とてもではないが、今の民主党が「国民の生活が第一」という 路線を堅持する限り、組める相手ではありません。
福田総理は、今の状態で、「政権運営」に行き詰まったのであ るならば、直ちに潔く下野(大政奉還)するか、ご自分の手で 衆議院を直ちに解散すべきです。
くどいようですが、民主党は連立政権に乗らないでよろしい。
「給油新法」など成立せずとも、実のところ、何の痛手も日 本にはない。
福田総理の狙いはただ一つ。もはや、旧来支持基盤の地方の 保守層からも、小泉さんの得意の大都市部の無党派層からも支 持を失い、落ちるところまで落ちた自民党。この自民党の「延 命装置」としての「自分の任務」を心得て最後の賭けに出たの です。
■連立は民主党にも国民にも益なし
国民の生活のために、両党が組む?それもおかしな話です。
自民党と民主党が組んでも、民主党が主張する福祉や農業政 策の充実を自民党が受け入れるかといえば、最終的には怪しい ものです。労働者の権利を守ってくれるかといえばそれも怪し い。
むしろ、中途半端な案を、民主党も道連れにして、押し通さ れるだけではないでしょうか?
広島人としては、被爆者問題などで、自社さ政権時代、被爆 者援護法で、社会党が国会で代表していた被爆者の意見が十分 には通らなかったのと同じことを覚悟しなければならなかった (新進党案のほうが良かった)。
1990年代当時、小沢さんを「怖い」とばかり誤解してい て自民党を支持していた私が申し上げるのは恥ずかしいことで すが、「自社さ連立」で日本の歴史は10年以上遅れました。
政策論争で与野党が対決する状況になるまでに、今回の参院 選まで、13年掛かりました。その間、凄まじいネオコン政治 が吹き荒れ、小渕さんは「ソフト」を装い、小泉さんは「改革 」を装って実際は庶民を苦しめました。
■民主党の歴史的任務は「自民党KO」
この苦しみを「ソフト」イメージの福田さんに民主党が騙さ れて、また10年以上続けるなど、想像できませんし、小沢さ んがそれほど愚かではなかったと考えます。
小沢さんは、派兵恒久法の制定を福田さんに求めたとも伝えら れています。しかし、小沢さんの「恒久法」は、国連決議に基 づいたものでしかも、日本の政治判断に基づいて行うものです 。
私は小沢さんの持論については、手放しでは賛成できません し、多くの整理すべき論点はあると思うが、安倍時代の自民党 の「アメリカ従属・戦争しまくり」の集団的自衛権構想とは明 確に違うし、福田さんの「ソフトな従米継続」とも違う。おそ らく、「従米脱出」の小沢案は福田さんが飲めないと見て、福 田さんの従米振りをアピールするための小沢さん一流の「技」 でしょう。
党首会談に応じたのも「たとえ差しで話しても、結論は変わ らないよ」ということを世間にアピールしたのでしょう。
小沢さんの歴史から与えられた任務はただ一つ。民主党を中 心とする野党連合政権を成立させ、自民党を次期衆院選でも「 KO」し、政権から落とす。それにより、参院選のマニフェス トの方向の政治を他野党(そのときは連立与党か?)とも補い 合いながら実現し、国民生活を守る。それしかありません。
他野党も、小沢さんに不信感を抱かれたのは分かります。
しかし、ここは正念場です。
総合デパートの民主、そして、専門店の共産、社民、国民新 。それぞれ得意不得意の分野はあるが、補いあいながら、「自 民党政権をKOして国民生活を守る」、ということに徹してい ただければと思います。