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「現状分析と対抗戦略」討論欄

自民・民主に代わる第三極実現の可能性

2009/4/24 千坂 史郎

 作家にして、経済人の辻井喬氏は、インターネット上での対談でこう述べている。

 国会に議員が5人とか8人とか、数字でいえば勢力としては問題にならないんですよね。共産党なんか、言っていることを聞けば一番まともだと思うんだけど、何でまともなことを言っている政党の議席数がそんなに少ないのか、と思います。
 やっぱり大きいのは、小選挙区制の問題ですよね。私はあの導入のとき、一所懸命反対したんです。今小選挙区制をとったら、下手な独裁者が出てきて、また危険な道に入る。しかも、アメリカに従属した独裁国家なんて、日本人にとってきわめて悲劇であり喜劇でもある、と。

 たとえば、さざ波通信で健筆をふるう原仙作氏など日本共産党の問題点を指摘し、現実的改革を主張する論客の多くは、たとえ共産党がまともなことを言っていても、ただお題目のように唱えるだけではなく、現実政治の節目節目での展望ある政治的判断と集団的実行の具体的実行を力説しておられる。

 辻井氏もほぼ同じような不毛さを感じているだろう。だが、小選挙区制度の導入がかなり大きな左翼低迷の原因と見ている。

 しかし、現実に小選挙区制があるのなら、それに対応した野党勢力の共闘や戦略によって、その弊害に対応した方針提起が必要だろう。いま共闘への具体的実践は「平和の風」など市民団体の間から取り組まれている。かつての革新自治体の東海道メガロポリス化が現実のものとなった頃の政治戦線は、市民運動と社会党共産党などとがひとつの有機的な連合を形成していた。

 いっこうに共闘もくめず、互いに批判しあっている原水協と原水禁の分裂に腹立たしさを隠さない辻井氏は、またこうも述べている。

 ただ、僕はあんまりがっかりもしていないんですよ。というのは、今回の世界恐慌で、みんな経済的に、追いつめられるところまで追いつめられてしまいます。生活の問題としてなんとかしなきゃならないことが山積みになっている。そうすると、ごちゃごちゃ言って仲間割れしていること自体が大衆から非難される、そういう状況が出てきていると思います。
 昨年も、『蟹工船』が60万部売れたとか、共産党の党員が2万人近く増えたとかいう話がありました。あれは僕はいいニュースだと思ってるんですよ。なぜかといったら、増えた2万人はおそらくマルクスの『資本論』もレーニンの『国家と革命』も読んでない。だけど、共産党の言ってることは正しいと思うから入った。そういう人が体質を変える力になるといいと思うんです。

 このように述べた辻井氏は、日比谷派遣村の村長を務めた湯浅誠氏や運動をリードしている雨宮処凛さんらを革新の新しい在り方を示す可能性として評価している。いま現在、国会では自民・民主に代わる第三極の展望は見えてこない。ただ地方自治体選挙では、青森市や宝塚市をはじめ、全国各地で自公与党に批判的な首長が当選している。国民の政治的意識は、生活困難や現実政治への批判から、暮らしを改善しうる政治の実現を求めている。

 国政においては、麻生政権の数々の失態に代わるべく、民主党の小沢一郎氏を指導者として野党政権交代が実現する動きが見られた。その最中に、謀略的な国策捜査が功を奏し、国民の麻生政権支持率はわずかずつ上向いている。民主党内部では再び寄せ集め所帯の不協和音が出ている。野党が政権交代するための障壁。私は小沢氏の現在の姿勢を支持する。もし小沢氏が辞任すれば民主党は自民党によってのどに腕を突っ込まれ、四分五裂する。自公政権を打破する小沢民主党の挑戦と連動しつつ、第三極を構築する対抗勢力の徹底した自公政権批判によって、第三極は展望を具体的に獲得していくことだろう。