新政権を見る僕の情勢論のメモみたいなものですが、ご笑覧ください。
新たな世界情勢に対応していくために、世界で大戦後初めてというような激変が起こり始めていると考えます。今までの延長のような見方では、当てが外れることも多いのではないでしょうか。その方向性を見定めるためにも、世界情勢の上で背景となりうるものと、新政権に見え始めた方向性というものとを一定まとめて、また、この二つを関連づけて見ておかなければならないと思います。
1 サブプライム爆発を震源とする「100年に1度の経済危機」から、次のことがおこりました。
護送船団方式輸出依存がもう今までのようにはできなくなりました。別の需要を探さねばなりませんが、超格差社会ではもう土建国家、官僚主導国家を追求することもできません。それを正せなかったのが、自民党の敗因だったと思います。
冷戦体制の崩壊にやや遅れて、アメリカ単独主義世界も消えていく方向です。アメリカの国力はガタガタです。アメリカ経済は、物作りの衰退や、金融商品による世界金集め政策の頓挫やなどから全く先が見えず、世界への公約「金融規制」さえも進まない現状です。こんなことさえ報道されています。「(08年度の)米金融大手の報酬額最高 前年度比2割増」と。再びバブル経済をひき起こさないために大事な金融規制すらこんな調子なのですが、はて一体どうなっていくのか。公的保健制度を設定し直すなどの動きから見て、産軍複合体国家も長い目で見れば縮小方向しかないと思います。日本が土建国家を維持できないように。
こういうものを背景として見るとき、対米関係の新政策「発言」なども、割とすんなりと理解できるのではないでしょうか。
①インド洋給油が無くなっても、アフガンには自衛隊は行きそうもないこと。アメリカでさえ、増派が可能かどうか分からないということ。
②オバマが「12年までに核半減」を表明したこと。90年には21000発あったものが、07年には9900発になり、12年には4900発になると推定されること。この方向はまだまださらに進むと予想されること。
③ルース駐日米大使が、米大使としては戦後初めて広島平和記念式典に参加する可能性が出てきたということ。このことを「真剣に検討したい」と応えたことを報じた毎日新聞記事を抜粋する。
『今月4日、両親と息子と共に広島を訪れたことについて、言葉を選ぶように「深く、心を揺さぶられ、感情的になった」と話した』
2 新政権の現在の姿勢は、①への一定話し合い、まとまった対応なのだと素直に見て良いのではないでしょうか。その中身は、「コンクリートから人への、内需拡大方向の転換」、「アメリカから以前よりは距離を置き、国連中心とかアジア重視とかに向かっていること」。これらは、好むと好まざるとにかかわらず、世界情勢と日本の相対的な強み弱みとなどに規定された方向と言えるのではないでしょうか。
新政権の方向はこうして、一定民主的な有効需要創出という修正資本主義的な道をとるように見えるのですが、どうでしょう。このことは、資本主義の近現代史が、自由主義・「夜警国家」と「弱者救済という経済学の他方の道徳的・伝統的側面の加味」とを繰り返してきたことからも理解できることです。
なお、超長期自民党・官僚政権、その頂点としての右翼・森派と比較すれば、新政権が斬新に見えてくるのは当然のことという側面もあるはずです。事実上普通選挙というものを無視できた自民党政権は、国民無視の情報非公開を初めとして不公正、不条理なんでもあり同然だったはずですから。
3 こういう新政権の新たな対応に関わる日本の強みはこういうことでしょう。1500兆円という世界1の貯蓄があること。90年代の国内住宅バブル弾けからサブプライム爆発の今日まで、金融規制の技術、銀行の管理、通貨の出し入れ、景気回復のやり方などにおいて、あれこれと世界で最も苦労してきた先進国だということ。こういう強みもまた、今までの政権では全く国民の為にはなりませんでした。が、新政権においては当面、一定は民主的な有効需要創出の方向に向けられ始めたようです。
焦点の内需拡大、有効需要の創出関連については、こんなことが言えるのではないでしょうか。環境、雇用、子育て・教育、農業、アジア輸出の拡大とそのための条件作りなどです。これらの諸施策の前進方向は、当面の日本ではもう後戻りの利かないものになっていくと考えます。以上に見てきた世界情勢と、日本国民の意識とが、この4年間でもう元に戻せないものになっていくことでしょうから。
4 新政権が行い始めた諸施策を前にして、日本で今最も戸惑っているのが日本共産党員の方々ではないでしょうか。彼らが「民主的な内需拡大」と「対米自立」を最も強く主張してきた人々であり、新政権がそれらの施策をかなり全一的かつ大胆に進めて行くと予測され始めたからです。他方では、こういう新政権与党が圧倒的支持を得ているのに対して、共産党は近年希なくらいに支持率を落としてもいるからです。「確かな野党」を形だけは取り下げ、「建設的野党」よろしく「(新政権の)後方支援」を表向きには掲げ始めましたが、今まで失ってきた支持をこんなことだけで増やせないのは明らかでしょう。新政権との違いを強調してみても、現世界情勢では限界も多く、またまたその独善性を国民に見抜かれるのが落ちだと思います。
日本共産党はその格好の出番を民主党に取られたのだし、この情勢にこんな体たらくではもうほとんど活躍の場は作れないだろうと、そんな予測も立ちます。ごく少数の幹部の「理論」が作る方針が著しく誤っていたと改めて明らかになってきたと言う他はありません。民主集中制という誤り、経済主義的国家観・「国家道具説」の誤り、哲学的客観主義の誤りなどなど、このサイトで述べられてきたことの世界的現段階における一つの帰結と言えると思います。この現段階とは、以上に見てきたように、数10年に1度というような、資本主義や我が国の危機的状況ということです。日本と世界との二つの資本主義バブル弾けや、その間にあった社会党の消滅、小泉・アメリカ流弱肉強食社会などのことを指しているつもりです。