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「現状分析と対抗戦略」討論欄

よみがえる芝田進午さんの反核平和文化の闘い

2010/5/15 櫻井智志

 哲学者であり、社会学者でもありつつ、思想家としても 大きな足跡を残された芝田進午さん。氏が逝去されたことは その独自の創造的な学問が閉ざされることで、大きな痛手で あり、なおかつ損失でもあった。

 しかし、芝田進午氏がご逝去された後も、氏の社会的実践 は明確に跡を継承するかたがたがいる。
 ひとつは、住宅密集地の新宿区戸山に移転を強行した国立 感染症研究所の実験差し止め裁判を、芝田さん亡き後も最高 裁まで上告し闘い続けた裁判の会の皆さんたちである。
 そしてもうひとつ。「平和のためのコンサート」である。 今年も芝田進午氏夫人である芝田貞子さんが芝田先生の遺志 を継承して、今年も第11回平和のためのコンサートを、6 月12日(土)に新宿区牛込箪笥区民ホールで開催される。 詳細は「平和のためのコンサート」ホームページにくわしい。

http://homepage2.nifty.com/bio-anzenken/index-c.htm

 私はほぼ毎回このコンサートを広く世間の皆さんに知らせた いと思い、記してきた。
 だが、それはコンサートの告知作業を目的としているわけで はない。実践的唯物論哲学を構築され、さらに人類生存のため の哲学をめざす途上でご逝去された芝田哲学を、亡くなった後 も、その実践面で継承し続けるかたがたがいる、という事実。
 私自らは、バイオハードを予防し阻止するための社会運動に 加わってはいない。平和のためのコンサートにも、いわば傍観 者のひとりである。
 だが、学生時代に著作に感動して、別の用事でご自宅を訪問 して、じかにお会いしてから、芝田進午さんのおひとがらに、 氏の著作『人間性と人格の理論』が目指した理論と同様に、解 放された人格をひしひしと感じた。
 芝田氏自らが「唯物論を体現したとしたら戸坂潤という人格 となる」と紹介されたように、「人間性と人格の疎外から解放 された人格」を体現した人間像として、芝田さんご自身が該当 されよう。そのことを氏を直接知る多くの良心的知識人や実践 家がおっしゃるのを聞いた。

 今回も「平和のためのコンサート」がやってくる。それは私 にとり、芝田さんの平和的文化運動を継承し続けている存在が 健在であることの証である。私は、できるかぎりこれからも、 このコンサートの意義を伝えようと考えている。
 毎回コンサートの前の第一部は、お二人の朗読とともに詩人 橋爪文さんの講演『広島からの出発』である。詳細は先に記し たホームページにつまびらかである。