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「現状分析と対抗戦略」討論欄

赤旗と左翼小児病---「共産主義における「左翼」小児病」を再読して

2010/8/10 田貫 喜一

 原 仙作氏の諸論文に触発され、30年ぶり、いや40年ぶりに「共産主義に おける「左翼」小児病」(レーニン)を再読しました。
 以下の文章の引用文は、「共産主義における「左翼」小児病」(レーニン著、 朝野 勉訳 国民文庫 大月書店 1966年改訳第18刷---なんと定価 110円です。)からのものです。

<当選の見込みのない選挙区からの立候補について>
 原 仙作氏の諸論文において徹底的に批判されていますが、懲りずに、共産党 指導部は今回の参議院議員選挙においても全く当選の見込みのない選挙区にも候 補者を立てています。当選の可能性があったのは、東京選挙区の小池氏くらい か。
 不破哲三氏が大好きな、マルクスが「議会の多数を得ての革命」の条件が存在 していると評価したイギリスの選挙闘争についてレーニンは「左翼小児病」のな かで、次のような論評を加えている。

 イギリスの「左翼」共産主義者の主張
 労働党への支持は「わがイギリスのシャイデマン一派及びノスケ一派の手に権 力をわたすための手助けにすぎない。」(93頁)と。・・・シャイデマンは、 ドイツ社会民主党政権首相、ノスケは同国防相、スパルタクス・ブンド、ドイツ 共産党の指導者ローザ・ルクセンブルク、カール・リープクネヒト虐殺の張本 人。

 これに対してレーニンは、

 労働党内の「ヘンダソン一派、クラインズ一派、マクドナルドやスノーデンの ような一派が、手のつけようのないほど反動的であることはたしかであ る。・・・(彼らはむしろブルジョアジーとの連合をのぞんでいる)・・・彼ら が権力をにぎればかならずやシャイデマンやノスケのような連中と同じようにふ るまうだろうということも、同じくたしかである。これらはみなそのとおりだ。 しかし、だからといって、彼らを支持することは革命に対する裏切りだというこ とにはけっしてならない。逆に、革命のために、労働者階級の革命家たちは、こ れらの諸君にある程度の議会的援助をあたえなければならないのである。」 (96頁)

 また、選挙戦術について次のように論評している。

 「われわれは絶対に当選の見込みのあるごく少数の選挙区、つまり、わが党が 候補者を立てたため、自由党員が労働党員より有利になるといったことのないと ころから、候補者を立てるだろう。われわれは、選挙宣伝をやり、共産主義宣伝 のビラをまき、われわれの候補者が出ていないすべての選挙区でブルジョアに反 対して労働党員に投票するようによびかけるであろう。」(108頁)

 ・・・21世紀日本の今回の参議院選挙で言えば、共産党候補は「絶対に当選 の見込みのあるごく少数の選挙区」にしか候補は立てない、共産党が候補者を立 てたため「自民党が民主党より有利」になる選挙区には候補は立てない。候補を 立てない選挙区は、「ブルジョアに反対して労働党員(民主党員)に投票するよ うによびかけるであろう」、これがレーニンの選挙戦術であると思うが、どうで あろうか。
 歴史的条件が違う、何せ100年前のイギリスのことである。英国政治史に詳 しい方の論評をお願いしたい。
 そして、イギリス共産主義者間の意見の違い、労働党に加入すべきかどうかの 問題について、「私の手もとには、この問題についての資料がほとんどない。」 (109頁)と断わりながら、次のような指摘をしている。

「ただ、第一に、この問題について、「共産党はその原則を純粋にまもり、その 改良主義からの独立をけがされないようにまもらなければならぬ。党の任務は-- -立ち止まらず道からそれずにすすむことであり、共産主義革命にむかってまっ すぐな道をすすむことである」といったたぐいの原則から革命的プロレタリアー トの戦術をひきだそうと思っているものは、かならず誤ちをおかすだろうという ことだけは、うたがう余地がない。」(109、110頁)

 レーニンが取り上げた、誤ちをおかすだろう「共産党の原則」(「道からそれ ずにすすむ」、「まっすぐな道をすすむ」)の強調は、21世紀日本の共産党指 導部の得意とする言動である。(よく赤旗に出てくる「大道を進む」、「綱領の 立場」などの言動は、この類のものであろう。)

<「綱領を手に展望をを語り、日本の未来を語り合おう」(赤旗8/5付 志位 委員長創立88周年記念講演会)>について

 かなり読み込みましたが、志位氏がなにを言いたいのか、よく判りませんでし た。是非、原 仙作氏に検討をお願いしたいと思います。
 「ご意見、ご批判、叱咤激励を頂きました。その総数は現時点で3千通をこ え」(志位氏)たとのこと。「ご意見」、「ご批判」を公開して欲しいもので す。
 スターリンでさえ次のように書いています。もっともご承知の通り、スターリ ンは書いてることと、やることとは無関係、独裁権力維持のためであれば、なん でもやります。

 「自分自身のおかした誤りをあばきだすことや自己批判は、党にとって危険で ある、なぜなら、敵は、それをプロレタリアートの党を攻撃するために利用する かもしれないからである、という人がある。レーニンは、こうした反駁はまじめ なものではなく、まったく誤ったものであるとみなした。」(「レーニン主義の 基礎」 スターリン 訳者スターリン全集刊行会 国民文庫 大月書店  1967年第26刷 26頁、27頁)。

 そして、スターリンはレーニンの「一歩前進、二歩後退」を引用します。

 「彼ら(すなわちマルクス主義者の敵---イ・スターリン)は、われわれの論 争をながめて、小気味よげに喜び、顔をしかめてみせる。彼らは、もちろん、わ が党の欠陥や短所を論じている私の小冊子の個々の個所を自分の目的のためにぬ きだそうとするだろう。だが、ロシアのマルクス主義者は、すでに十分に砲火を 浴びてきているので、こんな、つねられたくらいのことでは心を動かさず、そん なことにはおかまいなく、自己批判をおこない自分の欠陥を容赦なく暴露する活 動をつづけてゆくだろう。(第7巻、190ページ参照。)」(レーニン主義の 基礎 27頁)