〈これは原仙作氏にも同じことを言いたい。〉
はとさんの私への批判の一節です。
論説の緻密さにおいて私よりもすぐれている原さんを叩くのでなく、叩きやすい小
生を批判すれば原さんをも批判したことになるのか。私は、政治闘争では相手の弱点や環の最も弱い
部分を叩くことだけれど、学問や論争においては、相手の最も理論的にすぐれている部分を対象にす
べきだと学んできた。はとさんは、論争や討論においても弱い相手を叩くことを無意識のうちに選択
なさっておられる。実に政治的なスタンスに立った賢明なやりかたである。もっともこの賢明とは、
「賢い」ではなく「ずる賢い」という意味合いである。
このような極めて大ざっぱな一言で、小沢一郎氏の存在を大切だと考えている論者である私たちに
対して、何事かもの申すことをなしたと思う尊大さに、本心は何も返答したくない。しかし、それでは、
この『さざ波通信』を開かれた議論掲示板にしないと思う。
私に対する批判を開始したのは、はとさんである。一度応答して、今度は二度目の批判である。私の側は、はとさんを批判する意志はない。似たような発想をもつ人々は多いのだろう。新たな論点の提示がなければ、似た問題については
今回限りで応答はしないと申しあげておくので、承知おきいただきたい。
【はとさんの主張】①
「小沢一郎氏を共産党に代わる護憲勢力だと、私は思ってはいない。」
当たり前でしょう。2007年11月に小沢は「小沢一郎「憲法改正試案第9条~ 第10条」骨子」を発表している。今からわずか3年前にもならない。護憲勢力ではないどころかもっ とも強力な改憲推進論者である。
「憲法9条に対する小沢の改憲の主張。
第三国の武力攻撃に対する日本国の自衛権の行使とそのための戦力の保持を妨げるも のではない。
第10条(新設)として[国際平和]
日本国民は、平和に対する脅威、破壊及び侵略行為から、国際の平和と安全の維持、 回復のため国際社会の平和活動に率先して参加し、兵力の提供を含むあらゆる手段を通じ、世界平和の ため積極的に貢献しなければならない。
また「天皇は」元首であるという天皇制を憲法に明記せよと従来から主張している。」
小沢がこの3年内に改憲の主張をやめたのではない、それは彼の執念である。
小生の考え
はとさんは、実に的確に引用している。小沢一郎氏を理解する上で、そのとおりだ
と私も考える。
【はとさんの主張】②
小沢が民主党のトップに立ち、総理の地位を得たならば、明らかに憲法改悪を推進し たであろう。社民党を排除した後の民主党は大方改憲主義者でありこの党を率いて、自民党と一体になっ て改憲を断行しうるうってつけの役割を果たせるのは小沢以外にない。だが小沢一旦は敗れた。
小生の意見
主張①は、事実の確認であったが、主張②は、小沢氏が総理大臣になった場合を仮
想した上での推測である。にもかかわらず、かなりの断定的な強度で、小沢は憲法を改悪推進「した」と
決めつけている。
私が問題としてずっと小沢氏問題を論究しているのは、現実の政治的局面の展開と実態においてである。自公政権か民主党政権か、という第一の選択における小沢一郎擁護である。次に、民主党内の新自由主義者である前原氏や岡田氏などによって籠絡された菅直人政権か、それよりは自公政権打倒の際に示された小沢一郎氏が主導する勢力の選択かということである。
はとさんは、政治の動いている政局と政治理念・政治的言語の実態化とが混濁している。
【はとさんの主張】③
もし小沢氏が総理になったら、そのような危惧は護憲派にとっては杞憂ではなく、 現実の根拠をもつ左の手で「憲法を守れ」というプラカードを持ち、右手に小沢の「憲法を改正せよ」 というプラカードを持つ櫻井氏に「どうせよ」というのか答えてもらいたい。
小生の応答
いま小沢氏が国民に提示しているのは、憲法擁護か改悪かという論点なのですか?
現実的に小沢氏はいま政界から閉め出されるような勢いで、検察審査会による強制
起訴とそれを根拠に菅政権さえ、小沢氏を政治的暗殺にも近い対応で、進めていこうとしいます。その民
主党菅政権は、国会議員の比例区を衆院参院で大量に削減しようと企てています。これこそ実質的な改憲
のはしりです。
かつて田中角栄総理が小選挙区制を強行しようとした1970年代に、圧倒的な国
民は、「角マンダー粉砕!!」を呼号して国会を取り巻きました。その国会デモの中に私もいました。
あなたが「今の小沢一郎」を擁護している私どもを叩いている暇に、小沢氏は政治的無力化を図られ、次々に憲法違反の行政施策が新自由主義者政権によって、実現されていこうとしいるのですよ。
いま日本の政界を牛耳っているのは、小沢一郎氏ではありません。そこをはとさんは、根本的に見誤っ
てはおりませんか?
【はとさんの主張】④
それとも小沢が改憲主義者であっても支持して、小沢の権力を強め、権力を握った小 沢が改憲に着手したら「反小沢一郎の旗幟を鮮明」にするというわけだ。
私はお経も読まないし、論語も知らない。マルクスとレーニンについては浅学ではあ るが自慢できるほどのものではない。
私たちは戦後一貫して憲法改悪反対と主張し続けてきた。その戦いがあればこそ今日まで憲法が辛うじて 守られてきたのである。改憲に反対するすべての党派が結集しなければならない。しかしその中に改憲を 主張するものを入れることなどもってのほかでる。
これは原仙作氏にも同じことを言いたい。
小生の応答
もう一度、あなたが批判している小生の投稿を、再度虚心坦懐にお読み直していた
だきたい。改憲を主張するものなどもってのほかと言うお気持ちはわかるが、護憲政党の日本共産党と社民
党が、ともに国政選挙のたびにじり貧となり、いまは一桁政党である。そのような現状で、たとえ数は少な
くとも、一騎当千のつわものどもが、大衆運動や国会論戦で保守派さえうならせるような勢力だった時期
があった。
戦後一貫して、護憲を叫び続けることが、そんなに偉いのですか?
私の考えは、護憲を維持し続ける営みを行い続け、改憲を阻止しているという内実を
伴っていることが大切だと思うのです。たとえば、反動思想家などと決めつけられていた梅原猛氏は、中曽
根康弘とも懇意の学者ですが、なんと九条の会の発起人ですよね。もう少しはとさんたちは、統一と協同の
論理を再構築しなければ、本当に護憲勢力崩壊の危機は克服しきれないのではありませんか。