すべては、石原慎太郎氏の毎回の高等戦略に振り回されていた。 何回かの都知事 選で、最終局面で立候補した石原氏はぶっちぎりで七割以上の得票率で当選した。
では、石原都政とは都民にとってどのような政治か。
かつて石原慎太郎氏は、美濃部亮吉都知事の三選に挑戦して敗北したときに、こう いった。私はマスコミや活字にも載ったのでしっかりと覚えている。
「東京にファシズムが台頭した時に私は再び立つ。」
ちゃんちゃらおかしい。
当選以来の石原都政を見ていてそう確実に思考する。
強い権力者にはごまをすりこびへつらうが、弱い立場には徹底的に罵倒しおしつぶ
す。在日朝鮮民族に、心身障害者に、労働運動に、民主教育運動に、在日アジア人
に。石原氏ほどの強権政治はかつてなかった。
世界各国では、あのようなファシストが七割以上の支持を住民から得る日本国、東京
都の民衆とはいったいどのようなところなのか。
世界のジャーナリストたちは怪訝な表情で報道した。
しかし、日本は東京都はそのような大衆政治家煽動政治家がそれだけの得票率を獲
得する場所なのだ。
むけど、「憲法9条の会」事務局長をつとめる小森陽一東大教授は、筑摩書房から新
書版で出している著書で、明確に分析している。かいつまんで要約すると、小泉純一
郎総理がつかった大衆操作は、国民の深層心理をコントロールする巧妙な心理戦とい
えるもので、それは石原都知事の戦略にも共通する。
けれど、それほどまでにして、石原都知事が三回都知事になって東京はどうなった
か。教育や雇用は弱肉強食生存競争むき出しの場に大きく変貌した。労働運動は徹底
して弾圧され、ビラ一枚配布で逮捕される東京都になった。都市社会は大企業が大も
うけするけれど、中小企業は壊滅的な悲惨さにある。
アメリカにぼろ儲けさせることには徹底した思いやりがなされ、民衆は老後のささや
かな医療と福祉さえおしつぶされている。
これが石原都政の一端である。
宮崎県を再生しようとした東国原氏、民主党の蓮萠議員、副知事の猪瀬直樹氏、新 党改革の桝添要一氏。つぎつぎにあがる名前は、すべて保守中道路線の政治家であ る。
時は二月。もう二カ月しかない。
ここに「革新都政をつくる会」は、共産党前参議院議員で落選した小池晃氏を無所属 候補として擁立することにふみきった。
時期的にはぎりぎり、むしろおそいくらいの時期である。
保守中道に対して、革新陣営が擁立したはじめての候補の名前である。
市民運動が広範に擁立する市民派候補のほうが得票を集めうるかもしれないけれど
も、いまの段階で市民運動からの擁立を待っていては、完全にまにあわない。
無所属候補として擁立された小池晃氏を、どれだけの市民団体と共闘できるか。そこ
が現在のポイントとなってきている。
小池氏が共産党員であるから都知事候補にふさわしくないという考えもあろう。私自
身も共産党、社民党、新社会党、生活クラブ生協、無党派民主主義団体・個人の共闘
が望ましいと考えてきた。
しかし、流動的な政局の現段階で、次善の有効策として、「革新都政をつくる会」の
もとに広範な団体や個人が結集して、政策協定や選挙運動の平等公平な選挙運動を構
築することが、最も現実的な政治戦略とかんがえる。
これからひとつきで結果がきまる。告示日が選挙の結果が見えてくる日である。