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「現状分析と対抗戦略」討論欄

都知事選の中枢ポイント

2011/2/19 櫻井 智志

 四月十日の統一地方選とそのシンボルとも言える東京都知事選までふた月足ら ず。動きは急速に慌ただしさを告げてきた。今回の選挙は、石原都知事の四選とそれ 反対する都民の側に立つ候補者との闘いが基本的な構図である。

 しかし、美濃部都政時代からあとになって、都知事選が人口過密都市におけるパ フォーマンスやテレビや芸能領域の有名人への指向も選挙民の投票行動の要素とし て、獲得投票数の結果から見ると、見逃せない一面となってきている。広く国民がよ く知っているということと、青島幸男氏の知事当選とは無関係ではない。この風潮を も押さえて革新候補が当選するには、東京都の広範な各界各層の都民の支持を集める 候補者の選定と幅広く強力な運動を推進することが必要である。かつて社会党と共産 党の革新統一候補が実現した時でも、元総評議長の太田薫氏や松岡英夫氏など、落選 している。いまの革新退潮期には、政党一党の支持する候補者では次点票も法定得票 票もかなわないことさえある。そうであるからには、社民党と共産党など左翼政党の 共同候補にさらに幾重にも都民の支援の輪が広がり「東京燃ゆ」とよべるほどの運動 の高まりがなければ、まず当選はかなわない。では、どうしたらよいのか。

 左翼または左翼に近い人たちの間から、日本共産党の運動のありかたと組織のあり ようが、主な都知事選敗北の連続の原因と見る見方が出ている。日本共産党の選挙で の停滞や敗北について、都知事選勝利を目ざす広範な都民の結集に背を向けた共産党 に厳しくお灸を据えている、とまで述べているかたもいる。一方ではそのような意見 を聞くに値すると思う。ただ、このような分析をするかたたちには、「ではなぜ共産 党は停滞しているのか」を考察して論評する側面が弱い。

 いまの共産党が停滞して時には後退していることも多い。その原因を共産党内部に だけさかのぼっていると堂々巡りとなろう。1980年代から、アメリカは世界覇権 の同盟国でいいなりになる日本政府をさらに重視しつづけてきた。詳細は省くが、あ いつぐ日米の軍事協力の取り決めと協定は続いた。さらに北朝鮮の核兵器開発が問題 視されるなかで、アメリカは北朝鮮との戦争準備を進めたが、後方陣地としての日本 がからきし軍事力補填の基地として役に立たないことを知って、強い危機感をいだい た。それから、日本社会への徹底的な管理と統制に乗り出すようになってきた。日本 共産党がここ三〇年間どのような紆余曲折の航路をたどっているかと無縁ではない。 このような強圧的な共産党政策を無視したら、堂々巡りの共産党ダメ論の繰り返しし かうまれないのではあるまいか。

 都知事選において、以前のような押せ押せの選挙戦には及ばないかも知れないし、 当選さえおぼつかないかも知れない。しかし、明確な石原反動都政と対決する候補の 擁立とそれを支える都民の選挙闘争の質と量の高まりこそ、日本政治を改善していく エネルギーとなろう。私は、かなり前から都知事選の平和共同候補をめざす市民団体 の運動を見てきた。あきらかに、運動の温度は冷めている。それでも、私たちは、い ま、在るところから出発するしかない。闘う条件がそろっていないから、指導部に批 判をしておわり、では惨めな闘いである。編言隻句をとらえて、勘違いして批判をす る輩もいままで見てきたし、このさざ波通信にもそのような批判も見られる。それは それでよい。批判がなければ、前進もない。ただ、誤解して相手を非難するだけでは なにものをも創造されることは少ない。
 都知事選まであと50日。歴史が揺れている現在、あなたはなにをするだろうか。