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「現状分析と対抗戦略」討論欄

「共産党の選挙での停滞や敗北」の内部要因と外部状況

2011/3/5 櫻井 智志

 二月二四日付けの本欄で、「樹々の緑」氏のご意見をいただいた。実は、樹々の 緑氏は、以前から小生の掲示板「復興・時代通信」などにも力作のご投稿をいただ き、親しく討論をさせていただいてきた同行の志である。氏が、実践的知識人であり 絶えず現実的な問題に主体的に係わり続けていらっしゃることだけは最初に述べてお きたい。最近、小生がミクシイのホームページ、OCNcafeのホームページを主 宰しはじめたため、掲示板のほうは、私自身が時々しか書けないでいる。

 少し長くなるが、「樹々の緑」氏の趣旨を正確に読者諸氏に伝えるために、その まま引用させていただく。

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 本欄のタイトルが「現状分析と対抗戦略」とあるように、私は、上記投稿で都知事 選を目前に控えた「革新都政をつくる会」による小池晃氏の擁立をめぐる事情と都民 の意識について「現状分析」を行い、それは、(石原都政を終らせたいと願う心あ る)都民に「失望」を与えたと評価したのである。そしてさらに、心ある都民を失望 させないような「対抗戦略」とは、「1960年代後半~1970年代にかけてとは 異なり、個別課題を掲げたNGOやNPOが遍く市民社会に簇生している今日」の社 会状況にふさわしく、「基本的には団体加盟の」組織として「統一戦線」を構築し、 それに依拠して首長選をたたかうやり方ではなく、個人個人を対象として、あるいは 少なくとも広範なNGO・NPOなどを巻き込む形で選挙母体を形成してたたかうこ とではないかと、問題を提起したのであった。

 2007年の参議院選挙東京選挙区選挙において、日本共産党の田村智子候補が次 点でさえなく次々点となり、緒方靖夫前議員の議席承継に失敗した事実からは、保坂 三蔵候補が次点で落選して自民党が1議席となった反面で民主党候補が高位で2議席 を獲得し、さらに、無所属の・薬害エイズ問題で著名な川田龍平候補も最下位ながら 当選した(当時は、まだ川田氏が「みんなの党」に所属するとは誰も考えていなかっ ただろう)結果と併せて考えると、2009年総選挙における民主党への政権交代 (この選挙での日本共産党議席数の現状維持が薄氷ものだったことは、原仙作氏の本 欄2009年9月19日付投稿が指摘しているところだ)に向けた都民の政治意識の 「流れ」は、すでにこの時点で生じていたと評価できるといっているのである。そし てそれは、その3か月前の都知事選においても同じであろうといっているのである。

 だからこそ、そうした「過渡期の情勢」を的確につかみ、直前の都知事選において も「都政における政権交代」を実現するべく、最大限の努力を日本共産党がしていた のかを、当時も現在も、私は問題にしていたのだった。そして今回も、この1年半の 国政の過程を見て民主党政権に失望していたとしても、この底流における都民の政治 意識に変化はない(社会状況はむしろ悪くなっている)とすれば、「革新都政をつく る会」による小池晃氏の擁立が、その期待に応える形になっているのかを、問うたの である。

 もちろん、「底流をなす都民の政治意識」なるものも、不動の絶対的存在ではな い。各政治勢力からの働きかけや情勢自体によって変化しうる、流動的なものであ る。だからこそ、その中にある肯定的傾向を促進し、否定的傾向を克服して望ましい 政治変化に結びつけるために、日本共産党を始めとする政治勢力がどのような姿勢で 臨むべきかが、切実に問われるはずだろう。
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 こうして引用してみると、緑氏の論理は、まっとうであり、私もとくに反対する 趣旨の論文ではない。投稿で拝読したときの引用とは、受ける印象が異なる。
 ただ、タイトルにもあるような【ある特定の選挙や、より長期的スパンにおける日 本共産党の「選挙での停滞や敗北」をどう見るかが主題でない】という緑氏の発言に 一言感想を記したい。

 都知事選に向けての、革新都政をつくる会、日本共産党をめぐる経緯を見たとき に、なぜ日本共産党は敗北し続けているのか、という多くの識者の疑問は、これらの 革新勢力の内部の体質を問うこととも関連してくる。同時に、戦後民主主義運動をに なってきた左翼勢力があまりにも停滞しているのは、どうしてか、という問題があ る。私は、左翼勢力が停滞していることと同時に、左翼勢力が停滞させられている外 的状況に目をむける必要があると考えているのである。

 はっきり言えば、アメリカ政府からの介入は無視しがたい。外的介入と仕掛け、水 面下の工作を表面に出して、国民的な批判と克服の言論の運動が必要な時期と思う。

 外的状況を討論することと並行して、はじめて日本共産党の現在の指導部の指導 方針の欠陥と、自立しえない左翼大衆運動の自立と活性化とを妨げている要因の批判 と克服とが課題となる。その課題においては、樹々の緑氏のご提言は、全面的に強力 な理論的武器のひとつとなると考えている。