民主党政権の菅直人総理は、辞職の声明と受け取れる民主党両院総会での発言 とうらはらにいっこうに辞職しない。さらに、民主党幹部が一様に総理辞職の発 言をしても辞職の気配も見せない。
しかし、自民党と民主党幹部とが一様に辞職を言い出したのは、浜岡原発の停
止を決定してからという見方がインターネットにおける識者の中から出てきてい
る。最近の辞職騒動は、衆院での辞職をめぐる決議案とは異なる土壌から出てい
るのだという。
つまり、原発産業の利権を奪われる資本や代弁の政治家が、与野党を問わず一
斉に辞職に動いているらしい。
その点では、原発を廃棄しようとする政治的判断とそれを阻止しようとする利
権派の勢力との葛藤の構図を見ておく必要がある。
菅直人総理とは、定見もなくその場その場で方向を決めている様子が見られ
る。その動き方は、「郵政民営化」だけで政局を動かして解散し、総選挙での自
民党圧勝をもたらした小泉純一郎元自民党総理と似た大衆迎合政治家の要素が感
じられる。異なるのは、菅民主党政権は、国政選挙や国政並みの選挙で敗北続き
であるという点だ。
私は菅政権を支持しない。けれど、自公政権や大連立政権にはさらに反対であ
る。方向性も定まらず、場当たり的な出任せ政治を続ける菅政権も支持はしな
い。
それでも浜岡原発を廃止しようという菅氏の決定には賛成である。それに一斉
に強く足を引っ張ろうとしている勢力には、原発をつくった当初以来の政官民の
一体した利益誘導勢力の危険な策謀であり、肯定しがたい。
また、菅政権とアメリカ政府との関係についても、無視しがたい。原発事故発 生以来、アメリカ政府は、菅政権の対応に不快感を表明していた。最近はむしろ 菅政権に好意的である。戦後政治の出発から、歴代の自民党政権は、アメリカ政 府の意向を汲んで迷走を続けてきた。ここにきての菅総理の強硬な居直りと突っ 走りには、私見によれば、アメリカ政府の支持があるものと想われる。
政局をめぐる政界の動きは、迷走の連続である。菅総理の無定見に、私は危機
感をもつ。だが、問題は複雑な要素が入り組んでいる。菅総理についても、全体
的には支持しがたいけれども、菅氏がだめで菅否定勢力がすべて肯定できると言
えるものでもない。
複雑に入り組んだ利権と策略の構図のなかで、何が国民にとって肯定できる政
治かどうかを基本として政治を見ていけばよいのだと、私は考えている。