投稿する トップページ ヘルプ

「現状分析と対抗戦略」討論欄

現在の政治情勢をどう見るか

2011/8/12 櫻井 智志

 菅政権が辞職交代する今日的段階で、いままでの政治情勢を俯瞰してみたい。

 民主党政権が誕生する前に、自公政権の新自由主義に基づく構造改革は、国民生活を破綻させ、全国の地域は不況と財政逼迫で苦しみにあえぎ、競争主義による貧富の差は拡大していた。
 それに対する国民的不満が、民主党政権を支持する結果となった。鳩山氏・小澤氏の主導する政権は、新自由主義構造改革から別の政策を選んだ。社会保障と国民生活の再建、対米従属からアジア外交重視へ。このことは財界とアメリカ政府を一気に憤慨させ慌てさせた。そして、強力な圧力がかけられて、鳩山政権は倒れた。
 この一連の変化のなかで、マスコミが役割分担としてになった反動的国民煽動的役割は、かなり重要な位置を占めている。
 朝日や毎日のような比較的進歩的と目されていた大新聞も、大きく論調を変えて、国民の意識を変えていくうえで、サンケイ、読売、日経と同様の役割を果たした。

 そんななかで財界やアメリカ政府の後押しで政権についた菅直人総理は、明確に新自由主義構造改革路線に復古した。社会保障は増税と一体化され、沖縄の米軍基地問題は、アメリカの意向のままに従属する路線に戻った。

 しかし、それでも国民の菅政権に対する不支持率は、財界とアメリカ政府のもくろみを実現するにはひどい数値の連続だった。そんな中で東日本大地震と福島原発事故とがおきた。
 この大災害は、もはや辞めざるを得ないところまで追い詰められていた菅総理に、きわめて有利な追い風となった。災害復興、災害復旧はいままで実現しづらかった構造改革型の施策を次々に推進する追い風となっていった。

 しかし、それでもなおかつ菅政権への国民の批判や不満は鬱積して、とうとう財界とアメリカ政府は、菅おろしによって、政治情勢を反動的により速く想う方向へ実現する考えに変わった。それが菅おろしと民主・自公の連立的政治である。
 注意するのは、別に菅直人氏が平和を重視しているように変わったわけではない。菅氏は次々に言うことがころころ変わり、国民の目先の支持をとりつけるためのマキャベリスト政治家に過ぎない。

 今後、菅総理がやめたあとに来る情勢は、災害復興をもとに、被災地の農民や漁民に会社組織でのサラリーマン農民、漁民として、また広域合併によって、岩手、宮城、福島などの県を災害復興特区として、一見よいようでいて、一気に構造改革を推進するであろうから、地域は解体し、病めるひとびとは切り捨てて「棄民化」を全国各地で進めていくだろう。すでに政府は、子どもたちを切り捨てて、児玉教授が国会証人として告発したように、放射能による被爆から救済することから見放す政治をおこなっている。

 フアッショ型政治に抵抗する国民には、全国的な管理機能によって「柔軟に弾圧」する政治を行うだろう。その脈絡で、菅総理はそのような政治を阻止する側ではなく、そのような政治をはじめるさきがけの人物でしかない。

 いま道は、民主党・自公の新自由主義構造改革路線でなく、かといって、共産党、社民党の政治を指示待ちできりひらかれるわけでもない。ネオ新自由主義路線政治に抵抗する広範な国民の声を結集して、政府に国民的要求を掲げていく国民的運動しかない。言うは易く行うは難し。そのような政治がすぐに動き出すほど楽天的ではない。 それでも、政治情勢をより正しく把握して情報の交流と拡大とを図っていくなら、道はひらける。インターネット時代の情報の一定程度の発信の自由度と民衆の誰にでも公的に発信できることは、ある程度有利な条件があるといえる。