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「現状分析と対抗戦略」討論欄

政治的・実践的に考える

2011/10/20 人文学徒

 11日付け、丸楠夫さんの原論文批判に、僕の意見を、一言。
 日本政治を良くするための長期的・戦略的相手としては、財界、政界、官界、 マスコミ界、そしてアメリカの産軍複合体など政財界や、IMF/世銀 体制など などが存在することは自明でしょう。ですが、そういう「悪政全体を語り、解明 する」だけでは、国民のための改善や政治的前進は作れるはず がない。また、 相手内部の対立点をも利用すべきという論理からは、常に相手全体を向こうに回 してということにもなりません。これらの悪政全体につ いて政治的・実践的に はこういう論点が肝要です。今は、その誰を、どこで批判し、押し込めていくべ きか。従来の左翼は、その客観主義哲学理論も関 わって、このような実践的観 点が全く弱かったと思うのです。原仙作さんはこういう弱点をよく「左翼小児 病」と呼んでいたと僕は観てきましたが、こ れは僕も全く同意見でした。実際 に前進を作って初めて人々の政治意識も進んでいくという政治的・実践的観点と しては、こんな考察が必要になるで しょう。
①日本の悪政全体を、どこが現在先頭に立って支えているのか。官僚・マスコミ 連合軍だと思います。
②その「先頭」と国民との間で現在どんなトラブルが起こっており、特に広い国 民の目に見えているのはどんな点か。「脱原発依存」・「原発新規建設 停 止」、グローバリズム批判、対アジア友好などへの反省は渦巻いており、民主党 マニュフェストには体制内部にさえ一定の支持がありま す。
③その「先頭」とのトラブルを問題にしているのは誰と誰で、そのうち当面でき るだけ広くかまえて、誰と誰が味方になり得る か。
 つまり、敵の最も突き出た細い部分を捉えて放さず、実際にこれを押し込めよ うとしてこそ「味方」を最も広くしうるから現状を前進させられるとい う、そ うしてこそ国民の変革意欲、意識も前進させられるという、そういう実践的課題 を捉えて動くということです。こういう考察がなければ、具体的 な政治的実践 にはなっていきません。

 今の日本政治で上記『敵の最も突き出た細い部分』を、官僚体制だと僕は 見てきました。自民が下野してもなお、旧利益・体質を 増強しようとし直して いる存在だからです。しかも、戦前からうち続く伝統を持ったきわめて古い体質 の内向きの組織です。そして、最近の彼らがこん な事をしてきたことも今や多 くの国民が知っています。世界、時代にあった民主党マニュフェストの画期的部 分を骨抜きにするべく、小沢を押さえつ け、鳩山政権の足を引っ張ってこれを 倒して見せ、菅直人に消費税値上げを叫ばせて総理にして見せ、さらに自分寄り の野田内閣を作ってみせたことな どなどを。つまり、グローバリズムの結末で あるこの政治体制改変の日本における隙間の時期に当たって、官僚体制(と、こ れに結託した大マスコミ) が最も先鋭に全体の足を引っ張る役割を演じてきた と、僕は見ています。さらにこれに対するに、民主党内部は二つに割れ、民主党 反主流派も含めて国 民の多くが僕と同じように見るに至っているとも思いま す。それどころかさらに、グローバリズムやアメリカや原発に対しては、財界自 身にさえ一定の 矛盾も出ているのではないでしょうか。
 国民の敵の全体像をちゃんと見ておくということと、当面この国ではどこから どう手をつけるべきかという議論は、別のことだと思います。従来の左 翼は教 条主義的に前者ばかりを語り、後者がなかったと、そう思えてなりませんでし た。どこか窮乏革命論的なお説教を繰り返すだけで実践論がなく、 国民の期待 に何も応えられなかったから味方も増やせなかったのだと、そう観てきました。