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「現状分析と対抗戦略」討論欄

大阪市長選に関して~丸さんの提起に答える~

2011/12/6 赤いたぬき(超不良党員)

 丸様はじめまして。最近「超」もしくは「元」が付いてしまうかもしれな い日本共産党の不良党員である赤いたぬきです。最近は偽名よりも本名で好き放 題言うことにしてしまいこのさざ波通信への投稿もガクンと減りました。まあも はやあまり共産党に対する拘りがなくなったせいかもしれません。ですが、先の 大阪市長選挙では、共産党は良く頑張ったと思っております。また、先の大阪の 選挙は、私もとても大切な変化であると考えておりますので、これを機会に意見 を述べさせてもらいます。

①まとめに対する批判
 まず、かっての自民党は、巨大な一つの意見と利権の集約と調整機構でした。 商店街、町内会、農協などの寄り合いや集いを通じて意見を調整し利害を調整す ることと選挙は地続きでした。今でも建前ではそうです。地域に行けば小さなお 葬式にも自民党の議員は顔を出します。当然それらの活動のためには巨額なお金 が必要になるため不正は絶えませんが。
 対する共産党や社会党は、特に共産党は労働組合への影響力も小さいため、ほ ぼ既得権益がなく、市民運動や政党の後援会などが飛び込みで運動するというス タイルを取って来ました。また日本の選挙は以前から政策を論議したり、どちら の価値観が正しいかを判断するものではなく、ご存知の通り、候補者の名前を連 呼するという世界でも類例のない珍しい選挙でした。天皇という奇妙な概念と実 体が示すように、個人の「キャラクター」なるものが重要であるという特異な選 挙戦であったわけです。しかしそれも以前小選挙区制であったために自民党同士 の戦いが激しかったからであり、選挙前にどの政党が勝つかはハッキリしていた のです。それゆえ共産党や社会党は都市部の無党派層の取り込みを追求します。 なのでポピュリズムは政党では共産党と社会党が先であると思います。共産党は 党史のごまかしや主張のごまかしを繰り返しています。そして、橋下を「ファシ スト」と呼ぶこと自体が一つのポピュリズムであるとも思います。しかしこのポ ピュリズムは現実においてなかなか超えられないと思います。その理由は後述し ます。
 小泉自民党や今回の橋下のように、本当のポピュリズムが出現した時、共産党 にとって一番危険な事態が出現します。それは圧倒的な力となって既存の秩序を 破壊するからです。しかし皮肉な話ですが、日本において民衆が本当に蜂起した 時は、あまり良い事態が起きていません。例えば日露戦争の講和条約に対する民 衆の不満は大変なもので、その後政府はその不満を抑えるために簡単に戦争を止 めることが出来なくなったといいます(朝日出版社「それでも、日本人は『戦 争』を選んだ」加藤陽子より)。今回の大阪市長選挙の例で言えば、そもそも大 阪市から財源を奪い大阪都にすることで橋下が何を狙っていたのかというと、ご 存知のように公務員の給与と社会保障や教育予算を大幅に削減し、税の優遇など により大企業を誘致しようというものであり、何よりも生活保護などの人民の最 後の命の砦を破壊することでありました。また、平松と橋下の違いは、どれだけ 派手にぶち上げるかの違いであり、より具体的には平松に憎悪を足したのが橋下 であるという程度のものです(平松の生活保護に対する政策は橋下よりも独創的 で実体的なものです)。しかし、この得体の知れない民衆の憎悪というものが出 現したということこそ、今回のポピュリズムがファッショ的なものであることを 示していると思います。私は、橋下自身がどのような人間かというよりも、橋下 を支持する民衆の側の判断基準に、底知れない暗い情念を感じるので今回の選挙 においては反橋下の立場でした。実際、選挙の翌日には市役所に300件を超える 「苦情」の電話があり、その内容は「窓口での対応が悪い」というものだったそ うです(朝日新聞)。ある人間は「それまで言い難かったからじゃないか?」と 言っておりましたが、市役所に抗議するのはそんなに怖いのでしょうか?少なく とも今の世の中はそのようにはなっていないように感じます。まして大阪 で・・・。私は選挙に勝ったことに便乗して一般市民が感情に任せて抗議の電話 を行ったように思えるのです。民衆の閉塞感と現状への不満・憎悪を組織したと いう意味で橋下の勝利は約束されたものであったと思います。そして多くの有権 者は橋下と平松の政策上の違いなど、気にも止めなかったと思います。だいた い、今回投票した人のうち、選挙公約を比較したり、TV以外の媒体から情報を 集めたりした人がどれくらいいたのでしょうか?ほぼいないと思います。ただ、 多くの人が現状の不満の捌け口を、より暴力的で、より立場の弱い人々へと無意 識のうちに向けていることだけは確実にいえると思います。今後大阪市では反生 活保護キャンペーンが、より一層露骨に強化されるでしょう。また教育現場にお いても露骨な干渉と強制が強化されるでしょう(橋下はある集会で「(自分に反 対している政治活動をしている公務員は)負けたら一族浪党雁首揃えて待ってろ よ」とまで発言したのです。こんな暴言許してはいけません)。一見ポピュリス テイックな衣装の本質が権威と暴力であり、そして大衆は無意識にそれを嗅ぎ 取って共感をしたと、さえ私は思っているのですが、ここに日本の大衆のドス黒 い実存を見るにつけ、この社会は何も変わっていないなぁと改めて思います(本 当に共産党は「国民は新たな模索の時期に入った」とか良く言えますね。国民 は、混乱すればするほどあのようなどうしようもないチンピラに尻尾を振ってつ いていくのが今の日本の現実なのです)。

②選挙戦に対する評価への批判
 今回の選挙は大袈裟に言えば最初から負け戦でした。TVへの露出度、新鮮さ (年齢、主張)、そして攻撃性、とくに最後の攻撃性に多くの若年層はやられた のではないかと思います。それゆえ今回の選挙では、「橋下にNO!」としっか りと立場を明らかにすることが大切だったのであり、来る橋下体制の下での橋下 打倒運動の共同戦線作りの一環としておおいに意味があったと思います。まさに 重要なのは橋下の政策を現場から葬りさることであり、これからが正念場なので す。最初からここを念頭に置くことが肝要であると思います。そしてそのために も橋下がファッショ的な存在であることをしっかりと指摘することが大切であ り、橋下の登場を待望する民衆の願望もファッショ的であると批判することが必 要だったと思います。
 橋下の登場を待望する民衆の願望もファッショ的であると批判することが、今 回の選挙では不十分であったことが、私自身は一つの反省点であると思います が、それを共産党に期待するのも少々酷であったと思います。それは共産党がポ ピュリステックな態度を取っていることに原因があるのですが、議会政党として 「橋下支持者はファシストである」とは言えないでしょう。なので本来そのよう な役割を果たすべき新左翼諸派がその役割を放棄(昔からそうですが)したこと が今回の選挙戦の総括において出される正しい論点であると思います。
 以上不十分な内容ですが、丸様の疑問である「橋下支持者はファシストだった のか?」について、私は「ハイ、そうだと思います」と応えます。多分多くの左 派がそう思っていると思います。そして私は、そのようなファシスト分子に政治 の主導権を握られている以上、徹底的にその選択が間違っていたことを証明する ことが必要であると思います。今は民主主義社会で、以前のようにファシストが 本当の独裁を出来る状況ではなく、それゆえファシストにも一定の市民権はあり ます。コミュニストにも存在しているように。それゆえ私は躊躇することなく橋 下支持者に対して以下のように訴えたいと思います。「あなたはファシストであ なたは間違っている。今からでも遅くないから橋下に反対し、橋下を打倒し、よ りましな市長を誕生させよう」と。
 以上です。
 ご批判・ご意見よろしくお願いします。