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「現状分析と対抗戦略」討論欄

大阪市の橋下徹・中田宏両氏の動静

2011/12/11 櫻井 智志

 大阪市の動向を日刊現代のネットがこう伝えた。

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7日の夜は「亀田祭り」に登場した。メーンイベントの前にリングに立ち、国歌を斉唱してご満悦だった橋下徹・大阪新市長(42)。相変わらず、目立つことは何でもやる。で、これもその一環か、と思えたのが新たな人事・組織案だ。
 二重行政解消に向けた調整機関の顧問に元経産官僚の古賀茂明氏や原英史氏を起用するのはいいとして、なんと大阪の副市長に中田宏・前横浜市長(47)を起用するというのである。ヤンキー漫画の「ビー・バップ・ハイスクール」じゃあるまいし、トオル&ヒロシのコンビなんて悪い冗談としか思えない。
「橋下新市長は、中田氏の経験と能力を高く買っている」(大阪維新の会関係者)というが、中田氏の行政手腕には大いに疑問符が付く。なにしろ、在任中に横浜市の財政は致命的に悪化したのだ。中田氏がブチ上げた横浜開国博で大赤字をつくり、不振の責任を問う声が出ると、任期途中で突然辞任。規定の満額(約3600万円)の退職金をもらってトンズラした過去がある。
 もっとも、中田氏の副市長就任には、市議会の同意が必要だ。「大阪維新の会」だけでは過半数に届かないため、他会派の動向がカギを握る。
「当然、反発する勢力が出てくるでしょうが、橋下氏はそれも計算ずくです。抵抗勢力が見えた方が、市民の支持を集めやすい。もともと橋下氏としては府知事選に中田氏を出したかったのですが、維新の会の内部で反対の声が強く、断念した経緯があります。今後は副市長として会見などに同席させ、メディア露出をどんどん増やす。市民・府民にも『私の同志で、週刊誌を賑わせたすごいヤツです』と顔を売っていく。そして、最終的には衆院選に維新の会から中田氏を出すつもりです」(ジャーナリスト・山田厚俊氏)
 女性問題で週刊誌を賑わせ、「ハレンチ市長」と呼ばれたこともある中田氏は、近著「政治家の殺し方」でメディア批判を展開していた。橋下はそうしたスキャンダルも武器にするつもりなのか。
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 大阪市長選は、反橋下陣営が敗れた。けれど、勝てばどのような政治行動も認可されるものではない。どのような政治的闘いがくまれたか。選挙の勝敗の結果の前に、選挙の質自体が大切なのに。

 中田元横浜市長の人気は圧倒的だった。スマートな物腰とソフトな語り口。すでに衆院議員時代から、地元小選挙区では、圧倒的に連戦連勝だった。いきなり横浜市長に転身しても、市長選の獲得票数は他を圧倒した。しかし、彼自身が最近の月刊誌『婦人公論』で述べたように、横浜市長時代の女性スキャンダルは、相当なダーティイメージとして彼を脅かした。噂で中田氏の政治的信念や行動を決めつける愚は避けたい。しかし、今度は大阪市にとんで何をしようというのか。
 私は日本新党で鳩山由紀夫氏や田中秀征氏と一緒だった中田宏氏を、あまり否定的に見ていない。けれどそんな中田氏を利用して、橋下徹氏が大阪で仕掛けている作戦は、決して肯定的に見ていない。

 評論家が、橋下氏をファシズム、ハシズムと決めつけることは、そこで思考停止となるだけで、かえって橋下氏に有利になるだけで、反橋下側がそれ以上の思考を行うことを阻むだけだという表現をしていた。

 もはやファシズムやハシズムというレッテルよりも、着々と橋下徹が行おうとしていることは、戦後の自治制度を根幹から転換して、戦後民主主義政治の21世紀的な権力政治の側からのブルーザー・ローラー作戦で、次々に地域破壊と権力集中制の徹底である。
 表面に出ている橋下氏はピエロに過ぎず、支配体制反動側の全面的攻勢が開始されるのろしだろう。大阪の橋下は、東京の石原慎太郎・そのまんま東などと大衆迎合政治家として広く国民の熱狂的な陶酔を覚醒させつつ、高級官僚・官公庁の反動行政による憲法改悪までのゴールを急ぎ、そのまま軍国大国への道を邁進するだろう。

 私はインターネットサイトの「阿修羅」や「インターネット新聞JANJAN」での記事に関するコメントの論調の保守化蛸壺化に驚くことがある。さらにもともと井戸端会議のような他人への罵詈雑言名誉毀損の言辞が飛び交う「2ちゃんねる」は、いっそう人権侵害の破壊の先走り役を進めている。私は最近「2ちゃんねる」のあまりのひどさにコメントしようとして、もう何年も書き込むことがリモートホスト禁止処分対象となっていることにあきれている。とくに「ザ・ワイドの有田芳生スレッド」は、参院議員でジャーナリストの有田氏への誹謗中傷のみならず、その6や8では、小生の本名、職業、住所、父母家族に至るまで事実を暴露するとともに、全く事実に反する誹謗や罵詈雑言が書き連ねられている。しかももう何年も前のスレッドで一度倉庫入りしたものが、恣意的に引っ張り出されている。以前2ちゃんねるの問題性を告発した法政大学教師のの南雲義夫さんに共鳴を覚えたが、国民の私生活での資質を著しく親ファシズム化させる尖兵を、「2ちゃんねる」が果たしていることに強い懸念を覚える。インターネットは、大手マスコミに比較すると、革新的庶民的と思われているが、徐々に規制の網を政府からかぶせられつつあり、しかもその口実を2ちゃんねるなど一部のサイトとインターネットを悪用した犯罪の出現も見逃せない。

 国民は、いつでも理性的知性的とは限らない。経済的な長期のデフレ不況と原発事故による社会の無力感とそれに対する民主党政府・官僚の棄民化政策があらわになりはじめた中で、国民の鬱積する不満は、容易に非合理的政治行動に自己投影の心理的代償を満足させている。その現れが、石原都知事や橋下大阪市長への危険な熱狂的支持となっている。 このような現状に、賢明な選択をおこなうことは難しいが、それでも、心ある市民、個人、団体、政党などまともに時代に対応しようとしている存在に連帯していきたい。