ni0615田島氏のブログ『安禅不必須山水』上の論考は、示唆に富む内容が多い。
特に最新の
『除染はイカサマ、効果なし、環境省の行程表が自白? 』
は、福島原発事故に対して、除染が原発事故の放射能被災を救済するかのような幻想を意図的に大手マスコミ・マスメディアによってもたらされている私たち国民に、重要な喚起をもたらしてくれる。
ブログをアクセスすると、豊富な図表や地図などでわかりやすい。田島氏の見解を、要約して、氏の論考を皆さんと共に学びたい。
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東京新聞の1面に「除染14年春までに終了」という記事が掲載された。田島氏は、こう述べる。
よく読むと、年10~20ミリシーベルトの地域、5~10ミリシーベルトの地域は、2年後の13年春までに半減させる。1~5ミリシーベルトの地域は、3年後の14年春までに半減させる。いっぽう、20~50ミリシーベルトの地域はやり3年後の14年春までに除染して、20ミリシーベルト以下にする、とのことです。で、そこで除染キャンペーンは終了。年50ミリシーベルト以上の地区は、「除染をするかどうかよく考えよう」を、14年春まで行うそうです。
次の表を見てみましょう。
半減期2年のセシウム134と半減期30年のセシウム137が、1年ごとにどれだけ減少していくか、残るであろう量を%で示したものです。
この後の表が圧巻である。
表1:何にもしなくても、物理的半減期だけで減っていく放射性セシウム
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核 種|半減期|11年3月|12年3月|13年3月|14年3月|ーーー|21年3月|31年3月|
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セシウム134|2 年|50 %|35.4 %|25 %|17.7 %|ーーー|1.56 %|0.049 %|
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セシウム137|30 年|50 %|48.9 %|47.7 %|46.7 %|ーーー|39.7 %|31.5 %|
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合 計|ーーーー|100 %|84.3 %|72.2 %|64.4 %|ーーー|41.2 %|31.55 %|
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※去年3月の福島第一原発爆発で放出された放射性セシウムは、セシウム134とセシウム137がほぼ1:1なので、50%:50%としました。
これに、気象による自然減と除染効果を加えてみます。
表2:物理的半減期に加えて、毎年、前年の10%が風や雨で自然減少、除染で5%減少すると仮定した場合
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核 種|半減期|11年3月|12年3月|13年3月|14年3月|ーーー|21年3月(14.3以降は除染無)※|
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セシウム134|2 年|50 %|27.9 %|15.5 %|8.65 %|ーーー|0.26 %| ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
セシウム137|30 年|50 %|41.4 %|34.2 %|28.3 %|ーーー|11.31 %| ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
合 計|ーーー|100 %|69.3 %|49.7 %|37.0 %|ーーー|11.57 %| ==============================================
※14年3月以降は自然風化の10%のみと仮定した場合、
なんと!!
除染効率わずか5%でも、2年で放射性セシウムの量はほぼ半減するのです。
除染効率わずか5%では情けないので、10%にしてみますと、自然風化は年5%になります。
これは、環境省の目標値からの逆算です。
表3:物理的半減期に加えて、毎年、前年の5%が風や雨で自然減少、除染で10%減少すると仮定した場合
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核 種|半減期|11年3月|12年3月|13年3月|14年3月|ーーー|21年3月(14.3以降は除染無)※|
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セシウム134|2 年|50 %|27.9 %|15.5 %|8.65 %|ーーー|0.46 %| ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
セシウム137|30 年|50 %|41.4 %|34.2 %|28.3 %|ーーー|16.7 %| ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
合 計|ーーー|100 %|69.3 %|49.7 %|37.0 %|ーーー|17.2 %| ==============================================
※14年3月以降は自然風化の5%のみと仮定した場合、
田島氏は、10年たっても17%の年間被ばく量が残ると述べておられる。
そして、発がんリスクにかかわるのは、10年間をぜんぶ足し合わせた、被ばく量の積算量です。
では、除染の対象になりそうもない年50ミリシーベルト以上のところ はどうでしょうか?物理的半減期と、1年当たり5%の風化で試算してみます。
表4:物理的半減期に加えて、毎年、前年の5%が風や雨で自然減少、除染なし
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核 種|半減期|11年3月|12年3月|13年3月|14年3月|ーーー|21年3月|31年3月|
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セシウム134|2 年|50 %|32.9 %|21.6 %|14.2 %|ーーー|0.75 %|0.011 %|
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セシウム137|30 年|50 %|41.4 %|34.2 %|28.3 %|ーーー|23.5 %|10.9 %|
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合 計|ーーー|100 %|74.3 %|55.8 %|42.5 %|ーーー|24.3 %|10.91 %|
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※14年3月以降は自然風化の5%のみと仮定した場合、
2011年が 年間50ミリシーベルトなら10年後の2021年になっても、12ミリシーベルト、 20年後の2031年になっても年間6ミリシーベルトが残ります。
以上の結果を考えますと、環境省の行程表は、除染に殆ど効果がないか、自然効果と併 せて15%以下の削減効果しかないことを想定しているのです。
除染すれば、それで福島県下の避難地域にも「安全」「安心」で戻れる、そのような根拠の乏しい幻想をふりまくことには、重大な謀略行為である。 田島氏の結論は鮮やかである。
除染のキャンペーンは、除染利権に金をばらまいて、「除染の努力をしました」と政治家が虚偽の言い訳をするためのモノ。
住民の健康を守る努力には程遠いということです。
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東京新聞 2012年1月27日 朝刊
除染 14年春までに終了 環境省工程表
環境省は二十六日、東京電力福島第一原発事故によってまき散らされた 放射性物質を、政府自らが除染する「除染特別地域」の工程表を発表した。 住民の同意や汚染土の仮置き場確保など条件がそろった地域から作業を始 め、二〇一四年三月末までに終了。帰還が困難な年間五〇ミリシーベルト 超の地域を除き、早期の帰還ができるレベルにしたいとしている。
政府は昨年十二月、現在の警戒区域と計画的避難区域に当たる福島県の 十一市町村を除染特別地域に指定。今後、年間の放射線量により、
(1)二〇ミリシーベルト以下(避難指示解除準備区域)
(2)二〇~五〇ミリシーベルト(居住制限区域)
(3)五〇ミリシーベルト超(帰還困難区域)-の三つの区域に分ける。
二〇ミリシーベルト以下の区域では、三月ごろから一〇ミリシーベルト 以上の場所を中心に除染を始め、来年八月末までに自然減を含め、昨年八 月末比で被ばく線量を半減させるのが目標。特に子どもは六割減を目指す。 二〇~五〇ミリシーベルトの地域は今年十月ごろから作業を始め、二〇 ミリシーベルト以下を目指す。
五〇ミリシーベルト超の地域では、効果的な除染方法を探るため、環境 省などによる実証事業は行うが、区域としての除染を実施するかどうかは 未定。国が土地を借り上げたり買い上げたりする可能性もあり、それによ って対応が異なるからだという。
今年三月末までに関係市町村と具体的な進め方を調整し、除染実施計画 を作成。役場などの拠点施設や上下水道、常磐自動車道などの除染を先行 実施する。
本格的な除染をするには、除染特別地域内の六万世帯と連絡を取り、説 明会や現地調査をして除染の同意を得る方針。避難中の世帯が多く、時間 がかかりそうだ。除染で取り除いた高線量の土壌などを仮置きする場所の 確保も課題となる。
細野豪志環境相は「高線量の区域は除染のやり方にしっかりとした検討 が必要。除染を実施する方針に変わりはない」と話した。
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ni0615田島拝
安禅不必須山水
以上の引用は、田島氏のご許可をいただいての転載である。
こうしている間にも、原発事故による内部被曝など懸念される事態は、決して停止しているわけではない。政府に解決する力がないならば、政府統治下の民衆が自らを救済する作業へとむかわなければ、救済はされない。またもやマスコミが喧伝する石原慎太郎新党構想などの疑似救済カタルシスによって、権力は国民の不安な心理をデマゴギーのもとに方向付けようとしている。しかし、それは決して民主主義国家とは正反対の高度管理体制国家でしかない。原発事故によって、悲惨な目にあっている民衆を見捨てていく国家とは、やがて他国の民衆の幸福をも破壊していく軍事国家となる必然性をもつ。そのような道義的にも退廃した国家は、「国際的な諸国民の信頼」を獲得できるわけがない。
東日本大震災直後、外国では、日本人の行動の我慢強さやパニック下でも暴動などの事態に陥らぬ様子が感銘を与えたときいた。ところが、原発が相次いで故障していくのに情報は的確に出さず隠し続け、なんら有効な手を打てない日本政府と東京電力の様子が報じられるにつれて、国際社会の感心は、幻滅と軽蔑へと変わっていった。
そうだろう。国連はじめ国際舞台でも、アメリカの言いなりでなんら独立国家としての国家主権を提起できず、アメリカ政府・軍部の顔色をうかがうことしかできない政府である。もはや中国や韓国の政府の意見には耳を傾けるアメリカも、日本の総理の発言などほとんど蚊帳の外である。オバマ大統領が訪日したときに、広島長崎を訪問するよう国民は熱望したことがあった。しかし広島を訪れぬオバマに失望の声が国内で上がった。ところが、なんとその訪問とりやめは、日本国内の官僚が画策して政府関係官庁の要請があったがためであった。このことは、国内のマスコミで報道された。
アメリカ政府が、日本政府をがんじがらめに抑圧しているのだろうか。それとも対米従属路線を唯一の価値判断の軸とする日本国内の系列グループが日本の政治を牛耳切っているのだろうか。戦後直後の数々のアメリカCIAによると推定されている謀略事件を起こした政治的勢力が今も継続しているのだろうか。
ともかくも、日本政府の独立主権を基盤とした外交戦略が行わなければ、民主主義国家としての日本蘇生もあり得ない。
福島原発の解決のために、避難を住民の意思にゆだねることを赦さない政府は、代替策として、除染作業を提案している。けど、田島氏の明確な論考でわかるように、時間の経過とともに放射能があいついで数値を減らしていくこととタイアップして、数年後までかけて、さいごはかなり測定された放射能値は減ることはあるだろう。だがそれまでに内部被曝し続けた子どもたちの健康障害は、いったい政府に救済できるであろうか。
このような避難か除染かの二元的問題の背景にも、政府が国民に根ざした民主主義政治を実行するか、災難を負った国民を次々と切り捨てて弱肉強食の路線の政治を執り続けるかの選択という重大な政治の対立がある。
ただ、民主主義政治と弱肉強食路線政治とは、二つの政治勢力に還元しえない。六十年安保の頃まで、明確な民主主義政治の実態を担い続けた統一戦線勢力は、現在皆無である。私は、日本共産党の存在が民主主義政治の主体とは考えていない。統一戦線勢力があるか否か。そこに私は、日本に民主主義政治を機能化させる原動力の契機を見る。
明治公園に六万人を集めた脱原発1000万人署名アクション集会には、社民党も日本共産党も党首を参加させた。そのような広範な国民的な統一行動の運動とそれを推進していく現代的な国民的規模の統一戦線を築くことは相当困難な事業であるけれど、そのような努力が漣のようにおおきなうねりとなって、この国にヒロシマ・ナガサキにつぐ第三の核被爆からの脱出へとむかっていくことだろう。