私は、小沢氏を政治家として肯定するから、無罪を喜ぶのではない。
ほとんど無罪に近いと思われる政治家を政治的戦略から冤罪に近いやりかたで排除すること自体に大問題があると思うから、小沢裁判そのものを否定するのである。
今後も控訴を含めて、検察側の予断は許されない。前原氏のように最高裁などで判決が確定するまで小沢氏の党員としての公民権を許すべきではないとする言説も昨日の東京新聞では伝えられていた。
さらに、マスコミの動きがこの冤罪に近い権力裁判劇に与えた影響も見逃せない。大手の新聞社やテレビなどのマスコミは、一斉に小沢一郎氏をバッシングし続けた。中には、小沢一郎氏の裁判を批判する人々を、「小沢派ジャーナリスト」「小沢信者」とレッテル貼りして済ませようとする動きさえ見られた。
「小沢派ジャーナリスト」「小沢信者」。このように言う「反小沢信者」「反小沢派ジャーナリスト」の特質は、一見第三者を装って、さも自分が公平で公正な立場にいるかのようにカモフラージュしていながら、政局の状況では自らの立ち位置は安全で正しく、そうして権力に対するまともな批判ひとつしないことだ。
小沢一郎氏は、日本の権力者支配者ではない。現代、日本国家を動かしているのは、アメリカ政府の代弁をうけもつ支配権力層と財界という名の独占資本である。
共産党から離れブントの一員だった森田実氏は、しばらく権力の御用評論家と見られるような政治姿勢だった。だが、最近リベラルな政治姿勢に変化している。三笠書房文庫『小沢一郎入門』という森田氏の文章を読んでいて、それなりに小沢一郎氏を把握していると思った。
月刊誌『噂の真相』を20年以上主宰しつつげた岡留安則氏は、自身のブログに以下のような文章を掲載されている。
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待ちに待った小沢一郎公判で無罪判決が下った。権力の横暴を批判してきた小沢氏の正義が認められたことは、東京地検特捜部と10年裁判を闘った筆者としてもうれしい限りだ。恣意的な国策捜査を仕掛けた検察の完敗であり、検察審査会の不透明なやり方も今後は大いに問題になるだろう。
検察というこの国の正義の砦は、いまや腐りきっているというのが、筆者の見立てだ。検察の大改革を主張してきた小沢氏の無罪判決で大慌てなのは、反小沢で固めた民主党野田執行部、霞が関官僚、自民党以下の野党、財界、大手メディア、米国政府だろう。小沢氏は検察審査会の控訴という形で、小沢氏の政治生命を今後も封じ込める作戦をとる可能性はあるが、輿石幹事長は小沢氏の党員資格停止処分を解除する意向を打ち出しているため、原発再稼働や消費税増税に躍起になっている野田政権の黒幕・仙谷由人政調会長代理が最高裁や法務省、検察に対して、裏で暗躍する可能性は残されている。
既得権益にしがみつく大手メディアも「道義的責任は残る」などと、あれこれイチャモンをつけて反小沢キャンペーンを今後とも続けるだろうが、権力総体を相手に勝利した小沢氏の頑張りに期待しておきたい。ウワシン弁護団もやってもらった弘中純一郎主任弁護士、喜田村洋一弁護士にもごホントに苦労様といっておきたい。
小沢氏には政治家として、これから最後の務めを果たしてもらいたいものだ。鳩山元総理の理想が潰され、反小沢に寝返った菅直人総理も自爆した。民主党の政権交代を勝ち取った最大の功労者であるトロイカ体制で残った最後のエースでもある小沢氏には、政権交代の原点に立ち返る霞が関の革命的改革や政治主導、「国民の生活が第一」の公約を実践してもらいたい。
もはや、自民党以上に霞ヶ関、財界、米国にすり寄る野田政権には何も期待できない。黒幕・仙谷由人に操られた、野田、前原,玄葉、岡田、枝野らの政治ゴッコはそろそろ終わりにして欲しい。民意完全無視の連中に日本の政治を任せたら、日本の政治は将来はおかしくなる。 例えば、仙谷政調会長代行が強引に進める大飯原発の再稼働問題。枝野の使い走りは牧野経産副大臣だった。徳之島に米軍の訓練場を誘致しようとしたバカ政治家だ。仙谷や枝野が直々に出ていって説得するのが筋だろう。滋賀県の嘉田知事も京都府の山田知事もまったく納得できない様子だった。当然のことだ。大阪市の橋下市長は問題も多い人物だが、大飯原発再稼働に関しては極めて真っ当だ。筆者の周辺にも橋下嫌いは多いが、こと原発再稼働に関しては橋下知事を断固支持したい。仮に維新の会が次の衆議院選で第三局を形成することがあっても、その時に不穏当な発言や政策が出てくれば全面批判すればいい。
いま、日本の政治にとって緊急の課題は原発再稼働から再生エネルギーへの転換であり、消費税増税反対である。もう一つは米国が発表した普天間基地へのオスプレイ配備阻止である。欠陥機といわれたオスプレイはモロッコでも事故を起こしたばかり、事故原因も究明されないままに、世界一危険な市街地にある普天間基地でオスプレイを訓練に使うことなど言語道断である。それも、山口県岩国市に一時配備する予定を現地の反対で反古にし、普天間への早期配備を決めた。沖縄差別であり、沖縄を舐めているとしか言いようがない日米政府のヤリクチだ。原因も究明しないままに配備するやり方は、大飯原発の再稼働と同じではないか。
驚いたのは在日米軍再編の新たな共同発表が延期された時の野田政権の対応だ。米国上院議員の軍事委員長であるレビン軍事委員長らが、共同声明に待ったをかけたのは、環境問題や費用の問題がクリアーになっていないことがその理由だった。実に真っ当だ。ところが、日本政府は、予定通りの方針で行くと早々と明言。本来ならば、日本が米国政府にクレームをつけるのが筋だろう。29日の野田訪米のパフォーマンスが何よりも第一なのだ。オスプレイをどうするつもりだ!!やはりここは、メディアを含めて既得権益体制の総スカンを食うかも知れないが、日本の防衛は米国第七艦隊で十分という基本的姿勢をもっている小沢一郎の出番ではないか。筆者は自信をもってそう断言したい。
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小沢一郎氏は、保守反動の政治家である。にもかかわらず、中曾根・小泉・野田の新自由主義構造改革の政治家ではない。そのことを明確に押さえていないと、なぜ小沢一郎を支持する革新内部の世論があるのかが見えてこない。小沢氏は、改憲派であり、海外派兵支持者である。しかし、いまの日本の政治の現実がどのようなものであるかを明確に踏まえている。そこが大事なのだ。
なおかつ言えば、いま求められているのは、明確な国家構想をもつ護憲と革新の政治家の出現である。しかし、社民党、共産党にそれだけの現実認識をもって対抗戦略を発揮している政治家は皆無に近い。かつての社会党成田知巳氏や共産党上田耕一郎氏ほどの政治家が求められている。
ただ、左翼が何もしていないわけではない。民衆の立場に立つ良心的研究者・学者たちが結集して、『福祉国家と基本法研究会』を立ち上げている。そこでは、新自由主義国家構想に明確な対抗戦略として、「社会保障基本法」「社会保障憲章」を明らかにしている。井上英夫氏・後藤道夫・二宮厚美の諸氏とともに、渡辺治氏の名前も中心的な存在である。渡辺氏は、小森陽一氏とともに、「憲法九条の会」の事務局を担ってこられた知識人である。
社民党や日本共産党が、それらの良心的知識人の健闘を踏まえて、軍国主義・新自由主義の国家構想に対して、明確な対抗戦略を打ち出して、政党を活性化することが早急に求められている。自民党と同様な小沢批判を繰り返しているようでは、国民の期待に応えられるレベルにはない。