民主党内の新しい動きがあれば、この投稿も時期遅れなものになります が、前回の投稿への補足です。26日の衆議院本会議で小 沢グループが消費税 増税法案に反対しましたが、問題はこれからの行動です。離党し新党を立ち上げ るのか、それとも党に残留し鳩山のようにマニフェ ストへ回帰する民主党をめ ざすのか、という選択の問題です。
激動期の政治状況は皆各々、異なった特徴を持っているものですが、対立・離 党・残留の問題は政治の常であり、私のつたない「政治研究」からする と、こ の問題の判断基準は二つあります。一つは一国全体の政治情勢がどうなっている かということです。もう一つは対立の原因(ここでは消費税増税 法案)が、国 民との関係でどのような特徴をもっているかということです。
政治情勢については前回の投稿で述べたように、60年安保以来の政治激動期
に入っているということです。
前世紀末のソ連の崩壊という大事件を経て、日本でも万年与党の自民党下野=
細川6党連立政権が成立しますが、これが政治激動開始の第一波、その 後、
自・社連立の村山政権を経て橋本自民党政権への復帰から「自民党をぶっこわ
す」と偽装する小泉政権とその3亜流政権の10年が「間氷期」とい うことに
なるでしょう。そして3亜流政権の機能不全を経て、「政権交代」それ自体が選
挙の争点として登場してくる二大政党の衝突が日本における本 格的政治激動期
の始まりということになります。
むろん、その背景には1985年のプラザ合意=円高容認と超低金利、バブル
経済とその崩壊にはじまる20年にわたる経済の低迷や国民の平均所得 の減
少、非正規雇用の激増、リーマン・ショックによる世界金融恐慌の勃発と超円高
の進行等々の事態があることは言うまでもありませんが、長くなる ので省略し
ましょう。
万年与党とは異なる新政権の成立は、世界史の通例で、前政権の最悪のツケを 背負って成立するものですが、民主党政権の場合は東日本大震災と福島 原発の 重大事故という二大負荷が加重されることになりました。しかも、菅政権の成立 は旧勢力の主柱たる国家官僚が主導する行政の全面復活となり、 野田政権に 到っては、無駄な為替介入に8兆円、IMFに4兆円の拠出を電光石火でやりな がら、国民には復興増税にはじまり、原発再稼働、消費税増 税を押しつけよう というのですから、いかに穏和な国民性とはいえ、国民の怒りが広範に爆発する という政治情勢に到っていま す。
日本の現代史では新党づくりはジリ貧に終わることが通例で、新自由クラブの 自民党からの分裂(1976年)や小沢の自由党(1998年)がじり 貧に なった主要な原因は、うえに述べたような広範な国民の決起を促すような政治情 勢がおきていなかったことです。しかし、現在は広範な国民の決起 が十分に期 待できる政治情勢にあると見てよいでしょう。高揚した国民の政治意識はその要 求を明確にして政党の選択を厳格化していくのが常則です。 私が小沢グループ に新党結成を勧める主要な理由です。
次の問題は対立点である消費税増税の問題です。世界中でそうですが、税負担
を誰が担うかはいつでも政争の中心点であり、国民生活の利害に直結し ていま
す。国民にとってはその是非は明確で、政治に無関心な国民にさえ、否応なしに
自分の意見を持つことを強制します。その意味で他の政争の対立 点とは根本的
に異なっています。
今日、国家官僚の本丸たる行政機構改革も不可欠ですが、その改革でさえ、国
民の利害にとっては間接的なもので、こうした対立点での争いでは広範 な国民
の決起は望めず、新党結成はじり貧になるのが通例です。言わば、コップの中の
政争劇になります。このような特徴を持つ争点で争いになるので あれば、離
党=新党は誤りで、党内での派閥・分派闘争に徹するのが正解です。
しかし、今回は全く違っており、原発再稼働は国民の命と暮らしに直結してお
り、消費税増税は国家が国民の財布にじかに手を突っ込むということで す。
対立点が直接に国民の最も重大な利害に結びついているかどうか、これが新党
結成を判断する第二のポイントです。
小沢グループの新党結成の是非は、この二つの点から判断して新党結成へと踏
み切るべきなのです。私の思うところでは、残留路線を採る主張は今日 の政治
情勢と消費税増税の特徴という二つのポイントを共に見失っています。残留路線
は民主党の「オーナー」である鳩山に任せておけばい い。
消費税増税反対に一票を投じた議員達が丸ごと民主党に残留すれば、すでに旧
勢力に完全に取り込まれた多数派民主党の悪政を隠す「イチジクの葉」 という
役割しか果たせません。これは政治の常識と言うべきでしょう。
なぜなら、民主党の政策実行は多数派の政策だからで、日が経つにつれて、党
内に蟄居させられ無力な反対派に国民は興味を失ってしまうからです。 造反派
は多数派に埋没します。
小沢グループが新党を結成し、適切な政治手腕を発揮して政治勢力を拡大する
ことができるならば(その展望はある)、今日の政治情勢では政界再編 の一極
となり、多数派に与した議員の動揺を誘い残留組を生かすことも可能になるで
しょう。
反対に、国民の政治意識と活動が大きく高揚している時期に、消費税を二倍に
増税するような馬鹿な政党はたとえ300議席を持っていても、次回の 選挙で
は100議席以下になるような壊滅的打撃を受けることになるでしょう。
小沢グループの議員でも消費税増税に賛成したり、欠席・棄権した者があ るようですが、政治経験の不足や個人的な利害の錯綜 等々、政争とその道行き にはつきものの風景です。小沢グループの支持者は短絡的に彼等を罵倒してはい けません。敵を減らすには悩める議員達への 「包容力」が必要です。彼等を罵 倒するヒマがあれば、造反者への物心両面にわたる支援や増税賛成議員の「落選 運動」をはじめるべきです。事態の決 め手は、国民の決起であり、それなし に、小沢に期待するだけでは敵にやられてしまいます。
最後に共産党のことです。
現在の政局の動向では小沢グループの離党=新党結成がひとつのポイントです
が、その帰趨の如何にかかわらず、「大阪維新」の国政進出もあること ですか
ら、否応なしに地方政党を含めて政界再編の第二幕が開かれることになります。
そうなると、すでにはじまっている自・公・民の大連合に対抗し て共産党はど
ういう戦術を採るべきなのでしょうか?
すでに共産党は全小選挙区立候補戦術を決めていますが、小沢グループの民主
党へに残留・離党の如何に関わらず、その戦術はこれまでの誤りの繰り 返しに
なります。如何に野田民主党の悪政があろうとも、小選挙区の下では共産党単独
での勝利は一、二の例外を除いてありえません。あると思うのは 見果てぬ夢を
現実と混同することです。
躍進した60年代末とは政治情勢が異なっており、社会主義国崩壊の負の遺産
やここ10年来の政治的誤りが蓄積され、支持者層が離反しているので すか
ら、小選挙区での当選は無理で、全小選挙区立候補戦術は反大連合派の票を分散
させ自・民を有利にするだけです。
社民党との選挙協力をはじめとして、小沢グループが離党すれば、そことの何
らかの選挙協力、「勝手連」もありで、各選挙区を精査し、反大連合の 現職や
有力候補のいるところでは選挙協力をすすめるべきでしょう。
選挙技術上の問題として、全選挙区立候補でなければ比例区の票が増えないと
いうのは全くの党内事情であって、その党内事情から全選挙区立候補と いう選
挙戦術を決めるのは政治情勢を忘れた悪しきセクト主義なのです。
現在の政治情勢、とりわけマニフェスト違反の消費税増税が民主主義的な党内 手続きを封殺し、国会無視の自・公との談合でファッショ的にすすめら れてい るのですから、選挙のメイン・スローガンは『消費税増税反対』と『原発再稼働 反対』だけで十分でしょう。現状で政争の焦点にはなっていない 憲法問題や TPP、行政機構改革(天下り禁止や地方分権)は棚上げです。
それら二つのの政治スローガンからすれば、共産党や左翼系に「ハシズム」と
呼ばれて評判の悪い「大阪維新」でさえ、排除するべきではないでしょ う。こ
の期に到って、君が代斉唱をめぐる橋下の「口パク」問題を騒いでいるようで
は、大事と小事を混同する政治的誤りを犯すことになります。次の 総選挙で反
増税派が衆院の多数を占めなければ、消費税は増税されてしまうのですから、事
態は緊急を要します。
とにかく、その主張の大半が似ている社民党との選挙協力さえできないようで
は、国民の支持を調達することなど夢のまた夢と知るべきで、国民の度 肝をぬ
くような大胆な選挙協力を展開できなければ、共産党再生のラストチャンスも終
わってしまうでしょう。(2012年6月28 日)