「現状分析と対抗戦略」討論欄

脱原発「緑茶会」設立～参院選に向けて市民グループの胎動

2013/4/24 櫻井智志

　脱原発を求める政治団体「脱原発政治連盟」（略称・緑茶会）が７月の参院選に向けて脱原発候補への支援活動を本格化するために立ち上げられた。
　また市民運動か、と何気なく見過ごされるが、この「緑茶会」は、ありふれた市民団体とはかなり異なる。
　いままでに日比谷公園や明治公園、代々木公園などで数万人の脱原発１０００万人アクション行動を呼びかけて、大江健三郎、鎌田慧、落合惠子、澤地久枝、瀬戸内寂聴、宇都宮健児などの知識人が呼びかけ、共闘を推進してきた。河合弘之、海渡洋一らの弁護士が事務局をにない、都知事選の革新共同候補として宇都宮健児氏を擁立したり、脱原発基本法を昨年２０１２年１２月に提出、廃案されると再び今年２０１３年２月１３日に再提出するなど、反原発と都政の民主的候補擁立など、昨今の重要な問題に取り組み続けた核として創造的な実践を生み出してきた市民・勤労者・知識人などの有志である。
　都知事選でも社民党・共産党・生活の党・新社会党・みどりの風・緑の党・生活クラブ東京ネットワーク・一部の民主党などが共闘した。脱原発基本法制定ネットワークをくみ、市民運動を政党や政治運動へとリンクさせている。日本共産党は、「即時原発ゼロ」を訴える立場から、部分的には参加していないこともあるが、前向きな立場での対応であり、都知事選でもかつてない共闘に参加して、宇都宮健児候補の当選のために活躍した。
　さて、この「緑茶会」は、アメリカの政治連盟「テイーパーテイー」を文字っている。前日弁連会長の宇都宮健児氏や原発問題を告発する作品をつくった映画監督鎌仲ひとみ氏らが呼びかけ人となっている。
　脱原発に賛同する候補者を見極め、政治資金面で支援していくという。脱原発政治連盟は、「脱原発有権者名簿」の作成をめざし、参加者の募集に着手する。集まった名簿は、参院選で支援を決めた候補者に提供する。
　この略称「緑茶会」は、脱原発で１７万人が代々木公園に集まったり、官邸前や周辺で脱原発全国連盟が毎週金曜日に驚異的な幅広い国民の結集と抗議行動を持続したりした。しかし総選挙には、脱原発の主張が選挙結果にはほとんど活かされなかったことに対して検討を重ねた結果、４月２４日に東京都永田町の参院議員会館で設立集会を開催。この集会には、みどりの風の谷岡郁子代表ら脱原発を掲げる国会議員も出席を予定している。
　参院選までこのような脱原発サイドの政治団体が、政党や市民団体と協力しながら、運動を立ち上げていくことだろう。原発推進に向けて公然と舵をきった勢力の中枢安倍晋三政権は、国民の人気を集めるイメージ戦略や国民からの支持を集めるさまざまな政策や方法を駆使して、脱原発運動を実質的に無力化し叩き潰す動きを進め、同時に憲法改定の策謀を急速に進めている。
　その際に、政治革新・護憲・脱原発運動と日本共産党との連関について最後に述べたい。日本共産党には、綱領・政策・方針など代々の政権が蓄積して今や原発による社会と自然の破壊に対して、それを是とするかノーと言うかに分かれる。４／１４神戸集会のように護憲集会や脱原発運動に対して、その方向性が同じ志ならば、必ずしも同席しなくとも、それぞれの前向きな運動を推進していくことが必要ではないか。時には同席して共闘する時もあるし、時には同意できない点を認め合って運動は別々でも、大きな反原発と護憲の道標をめざして大いに成果をあげればよい。
　意見や見解の相違が運動の分裂として相互に非難と中傷を往復する結果となったのが、いままでの戦後革新の運動史だった。憲法改悪と原発対策において、待ったなしの窮状に私たちは置かれている。意見や見解の相違によって運動は個別にわかれても、めざす目的と成果を共有しあえる。それが現段階の日本の政治運動での「新たなルール」としたらよいと私はいま考えている。