A もはやアメリカは安倍政権を危険視している
日本国内では、安倍政権の支持率が70%台とされている。日米地位協定で日本を縛り付けているアメリカでは、現在の安倍政権をどう見ているか?
5月9日の東京新聞は、ワシントン発竹内洋一記者のスクープを一面のトップに掲げ
た。
================================= 米議会調査局は5月1日付で米議会に報告書を提出した。
報告書では安倍首相の歴史認識は「(東アジア)地域の国際関係を混乱させ、米国の国益 を害する恐れがあるとの懸念を生じさせた」と書いているというのだ。
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戦後一貫して日米同盟関係を最重要政策として掲げてきた日本が、高支持率を誇り、対米従属に走る安倍自民党政権の下で、米国の国益を害する政権であると断じられたのだ。この報告書は、衝撃を関係各局に与えた。
この記事に着目した天木直人氏は、アメリカ議会調査局をこう説明している。
------------------------------------ 米議会調査局は、上下両院議員の立法活動を補佐するためその時々の国政の重要課題について調査し、公式報告書にまとめて議員に提供する部局であるという。 その米議会調査局が、安倍首相の一連の慰安婦問題、靖国問題、侵略否定などをめぐる歴史認識について詳細にフォローして報告書にまとめ,「米国の国益を害する」と明言して議会に提出したのである。今後の米国議会の議論や立法活動に大きな影響を与える可能性は否定できない。
失墜した安倍自民党政権の米国内における信頼は取り戻せない。安倍政権がオバマ政権の信頼を取り戻そうとすればするほど、安倍政権は更なる対米従属に突き進むしかなくなる。安倍政権の将来は危うい。安倍政権が続く限り日本の将来は危ういということである。
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アメリカ政府に上記のように見られている安倍政権が、次の参院選に向けて憲法改悪を旗印としていることはよく知られているけれど、自民党の「改正案」そのものについてはそれほどよくは知られていない。市民グループが紹介したものを以下に提示し、読者の注意を喚起したい。
B 自民党の憲法改正草案主な問題点
Ⅰ 戦争への布石がいっぱいでアメリカの戦争に巻き込まれる
現憲法第9条
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。
改正案第9条
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
他国が攻められたとき、その防衛に参戦できる権利=「集団的自衛権」の行使がねらいである。同盟国アメリカは日本にそれを要求しており、安倍首相自身も自衛隊を国防軍にして交戦権を認め、集団的自衛権を行使できるようにすると発言しているのである。
しかし、アメリカはテロからの防衛を口実に他国を先制攻撃するような国であり、アメリカに言われるがままに、日本が戦争に巻き込まれる危険性は大きい。
Ⅱ 軍事政権への道
現憲法第65条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
改正案第66条 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない。
Ⅲ 徴兵制度導入の準備
現憲法第18条 何人もいかなる奴隷的拘束も受けない。
改正案第18条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
Ⅳ デモ・集会・政府批判 ―表現の自由に制約―
現憲法第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
改正案第22条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由はこれを保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益および公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない。
「公益および公の秩序を害する」かの判断基準が不明確で、意図的な運用が予想される。
脱原発や反TPPのデモや集会、政府批判の報道や出版、ネット上の書き込みなど、表現の自由が弾圧される危険性が多い。
Ⅴ 国民を守る憲法から、国民を縛る憲法へ ―近代立憲主義の否定―
現憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負ふ。
改正案第102条 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負ふ。
国家権力の暴走の予測と制止が、過去の戦争や悲惨な歴史を通じて世界が学んだ教訓である。その反省の上に立ち、ひとり一人の人間の尊厳が何よりも尊重されるよう国家や支配層に対し、国民の側から制約を課すことこそが憲法の目的である。
このように近代の立憲主義は、国家権力の暴走から憲法によって国民を守り、権利を保障しようとする考え方である。近代国家の常識である近代立憲主義が、自民党の憲法改正草案では否定されている。全く権利主体の逆転である。こんな憲法下の国家は、近代民主主義国家とは呼べない。
Ⅵ 前文の全文改悪
現憲法 前文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
Ⅶ 改正手続の改悪
現憲法第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。
改正案 第100条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。
以上Ⅰ~Ⅶの項目については、2013年2月18日に市民グループ【99%のための社会をめざす市民グループ プロジェクト99%】の要約を基本として、その趣旨を変えずに掲載させていただいたことをおことわりする。なお、同市民グループは、自民党 憲法改正草案の全文はも掲げている。以下からダウンロードできる。
-> http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
C 対抗勢力
日本国憲法を改定することに反対する、つまり護憲政党は、日本共産党、社民党が群を抜いている。
国会には議席を持たないが地方議席をもつ新社会党、緑の党がある。生活の党は改憲であるが、憲法96条改憲には反対している。公明党も加憲の立場で環境権などを新たに加えることは提案しているが、憲法9条、96条改憲には反対している。「純粋にゴリゴリの改憲政党」は、自民党、維新の会、みんなの党である。民主党内には護憲派と改憲派がある。党としての政策ではどうか。
民主党の最も新しい憲法政策は、憲法記念日の代表海江田万里氏の談話に示されている。それ以後の政策は、別の機会に回したい。
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【談話】憲法記念日にあたって
2013年05月03日
民主党代表 海江田 万里
日本国憲法は本日、施行から66年を迎えました。現行憲法が戦後の我が国の民主主義の礎となってきた歴史に思いを致し、憲法記念日を祝します。
憲法は、主権者である国民が、国家機構等に公権力を委ねるとともに、その限界を設け、これをみずからの監視下に置き、コントロールするための基本ルールです。わが国は戦後、「国民主権、平和主義、基本的人権の尊重」といった憲法の定める基本原理を実践しつつ、幾多の困難を乗り越え、平和と繁栄を築き上げてきました。これは勤勉と実直に基づく全国民の努力の賜物であり、世界に誇れる成果です。
今日、国際情勢や経済情勢が激変する中で、国のガバナンスのあり方や安全保障問題、地球温暖化対策など、 様々な論点を巡って憲法論議が行われています。現行憲法は不磨の大典ではなく、足らざる点があれば補い、改める点があれば改めるべきことは当然です。しかし、それは、「国民主権、平和主義、基本的人権の尊重」という日本国憲法の三原則を遵守し、戦後日本人が積み上げてきた成果をさらに発展させるものでなければなりません。その観点から、私たちは2005年にまとめた『憲法提言』をさらに具体化していきます。
今、安倍総理大臣は「戦後レジームからの脱却」を唱え、自民党や一部の政党は、国防軍や「軍人」規定を創設したり、「公益及び公の秩序」を基本的人権の条件として国民に責務を課し、言論や出版等の表現の自由を制限し、国等の宗教活動禁止を緩和するな どの憲法改正を声高に叫んでいます。
そして、このような憲法改正を実現する手段として検討されているのが、改正の発議要件を下げるための第96条の改正です。私たちは、国の最高法規である憲法改正には広く国民の理解を得ることが要件とされるべきだと考えます。守るべきところと足らざるところの国民的な議論と合意を抜きにして、改正のための国会議員数が足りないからその要件を緩和するというのは本末転倒です。
民主党は、日本国憲法が掲げる基本精神を具現化するため、象徴天皇制のもと、自由と民主主義に立脚した真の立憲主義を確立するため、国民とともに未来志向の憲法を構想していきます。
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.*民主党内には護憲と改憲と両派の議員がいる。できるだけ多くの護憲派と護憲運動を結集する上で政権当時の初期と末期を比べたい。末期の野田政権は話にもならないが、初期の政権で中堅議員たちが社会民主主義政策を立案したことは無視してはならない。民主党政府には、湯浅誠、宮本太郎のような良質の市民運動家や知識人が政策に貢献した部分があることは大切に考慮したい。
憲法擁護の市民団体はたくさんある。その中で、反原発と参院選とをむすびつけて現実的に稼働しているのは、私の知る範囲内であるが、脱原発政治連盟(緑茶会)、弁護士アピールを支持する会、4/14護憲結集・神戸集会運営実行委員会グループなどがある。もちろん、数多くの市民団体、宗教団体、女性・婦人団体、消費者団体、生協各団体、学生・院生運動団体なども無視してはいけない。文化団体、芸能団体、芸術団体もある。
さらに、労働運動に関連する労働組合、労働運動研究団体なども存在する。また、個人としての運動を実践する知識人や各種運動の諸個人の働きも重要である。
いそいで書いたので、名前をおとしてしまっていたら読者諸氏にご教示願いたい。
広範な多くの個人・団体が、日本国憲法擁護に向けて、どのようなしかたでどのような運動を行うか。それが重要な大問題である。「改憲対抗勢力の共闘と闘争のしかた」については、今後に課したい。