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「現状分析と対抗戦略」討論欄

橋下徹大阪市長への問責決議案提出と「出直し再選挙」への疑問

2013/5/30 櫻井智志

 沖縄県の米兵について、アメリカ軍司令官に「米軍兵士は、風俗業を利用した ら。」 発言や旧日本軍の従軍慰安婦を巡る発言など日本維新の会共同代表の橋下徹氏の 発言は国内以上に世界中に不信感と不審 感をばらまいた。
 一連の発言は、大阪市政を混乱させたとして、大阪市議会の自民、民主系、共 産の三会派が共同提案し、公明も賛成、 大阪市議会で市長への問責決議案が提出、審議、可決される見通しが強まった。 一連の事態は大阪市議会でも史上初めて で、市政運営への打撃は必至だ。
 上記3会派が5月29日、問責決議案を30日の本会議で提案する方針を確認 した。維新は反対する方針。
 決議案では、橋下市長が沖縄の米軍司令官に風俗業の活用を求めた発言につい て、「米軍・米国民には発言を撤回・陳 謝したものの、市民に対する謝罪は一切なく、誠意が全く感じられない。市長で ありながら市政を大きく混乱させ、深刻 な国際問題にまで発展しつつある」と指摘。発言の影響で6月の訪米を中止した ことについては、「国際交流の歴史を傷 付けたばかりでなく、外国人観光客倍増計画などへの影響も避けられない」とし ている。また、「市長としての職責を全 うしているとは言い難い」と断じ、「公人の立場での発言には責任問題が伴うこ とを自覚すべきだ」と猛省を促している 。
 問責決議は、地方自治法に基づく不信任決議と異なり、法的な拘束力はない。
 こられの政治的事態に対して、日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は5 月30日午前に、大阪市議会が共同代表 の橋下徹大阪市長に対して問責決議案を可決した場合の対応について、「問責は 不信任と同じ。民意を問うことになる」 と記者団に述べ、出直し市長選を行う考えを明らかにした。参院選と同日に実施 する方向で調整するという。
 松井氏は問責決議案が可決された場合、「審議に応じるに値しない市長だとい う話になる。動かない政治になってしま い、大阪の大改革が進まなくなる」と指摘。「議会の判断に対し、市民の皆さん がどう考えるかを問うていかないといけ ない」と述べた。日程については、7月21日投開票の見通しとなっている参院 選と「合わせることになるだろう。(市 長選と参院選と)2度するとその分余計に経費がかかる」と語った。
 松井氏の「審議に応じるに値しない市長だ」という認識は妥当だろう。けれ ど、そのような市長なら、そもそも大阪市 長選に再度出馬することの資格も問われるということではないのか。発祥の地、 大阪府で維新の会の支持率が圧倒的に高 いことへのうぬぼれと 今回の不祥事の自覚が松井一郎氏にも足りないことを証 している。
 さらに驚くべき事態がこの間に明らかになった。岩下安身氏がブログで発表し た事実である。岩下氏は、5月27日の ブログで【IWJブログ:「合法な風俗」を米軍司令官に勧めた橋下市長、「違法 な売春」が横行する飲食業組合から顧問 弁護士料を得ていた事実について説明責任を果たすべき】を公開した。問題の所 在を詳細に示すために、そのまま全文を 掲載させていただく。

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◇「違法な風俗」から顧問料を受け取ってきた橋下氏の過去◇
 橋下徹大阪市長が5月13日の会見での、従軍慰安婦は「当時は必要だった」発 言と、在沖縄米軍幹部に風俗の活用を促 した事実を明らかにしたことは、多くのメディアが取り上げ、その余波は10日以 上が経った今でも続いている。橋下氏は 、在沖縄米軍幹部に風俗の活用を促したことへの批判の声に対して、14日に自身 のツイッターで反論している。
 「法律で認められた風俗業を否定することは、それこそ、自由意思でその職業 を選んだ女性に対する差別だと思う」「 批判者は、風俗業=売春業=性行為と短絡的に考えているね。日本人は賢いか ら、性行為にいたる前のところで、知恵を こらしたサービスの提供を法律の範囲でやっているよ。そして今の日本の現状か らすれば、貧困からそこで働かざるを得 ないという女性はほぼ皆無。皆自由意思だ。だから積極活用すれば良い」など、 「合法な風俗」ならば活用すべきと語っ ている。
 では、「合法の風俗」と「非合法の売春」の違いは何か。
 六法全書には、売春の定義について売春防止法第二条に「第二条この法律で 『売春』とは、対償を受け、又は受ける約 束で、不特定の相手方と性交することをいう」とある。そして第三条では「何人 も、売春をし、又はその相手方となって はならない」と売春の禁止がうたわれている。
 しかし、この「性交」とはどこまでの行為を指すのか。売防法の所管官庁であ る法務省の担当者は、取材に対して「売 防法第三条における『性交』とは、文字通りの性器結合だけを指し、それ以外の 行為は一切含みません」と、逡巡なく答 える。性器結合以外の性行為は、「性交類似行為」であり、売防法に規定する 「性交」にはあてはまらない。
 橋下氏の言う「合法の風俗」とは、「性交類似行為」による性的サービスの提 供、ということになるだろう。
 ところで、2011年12月2日号の週刊ポストは、橋下氏が大阪府知事になる前ま で、大阪・飛田新地の料理組合の顧問弁 護士だったことを報じている。飛田新地には、昔の遊郭の面影を色濃く残す「小 料理屋」が立ち並び、玄関先には、若い 女性が座って手招きをし、かたわらで年配の女性が「ちょっと兄さん、寄ってっ て」と呼びこみをする光景が、今も繰り 広げられている。
 ここでは、どの店でも一律で15分1万2000円で「本番あり」の性的サービスが 提供されています。「本番」とは売春防 止法で違法とされている「性器接合」=「性交」であり、即ち「違法な売春」で ある。飛田新地は違法な売春行為で収益 をあげながらも、これまで黙認されてきた歴史があるのだ。
 IWJが、橋下氏の弁護士事務所に週刊ポストが報じた事実について問い合わせ たところ、「クライアントの情報は出せ ないので言えない」との回答。しかし、飛田新地の料理組合に電話で取材したと ころ、「橋下氏が市長になる前に、顧問 弁護士を務めていたことは事実」と認めた。
 「合法の風俗」なら良いと言い逃れを続ける橋下氏は、「違法な売春」によっ て収益をあげてきた団体から顧問料を受 け取ってきた過去を、どう説明するのか。
◇IWJが取材で確認 飛田新地はやはり「本番」ありの違法地帯◇
 橋下市長が、米軍司令官に「活用」をすすめたというのは「合法な風俗」であ り、それは「性交類似行為」にとどまる 「性的サービス」の提供を意味する。橋下市長は、この合法性を何度も強調して きた。
 先に紹介したように、橋下市長は14日に、「法律上認められている風俗業を活 用してはどうかと言ったら拒否された。 売春じゃないんだけどね」とツイッター上でつぶやいている。
 違法な売春はダメだが、合法な風俗=性交類似行為なら許されると、ことさら にその線引きを強調してきたのだ。とこ ろが、その橋下市長自身が、違法な売春の横行する飛田新地の組合から顧問弁護 士料を得ていたとなると、これは看過で きない問題である。
 IWJは、飛田新地で実際に、「違法な売春」すなわち「本番」が行われている のかどうか、確認のため、追加取材を行 った。IWJの記者が、ネットで女性の求人広告を出していた飛田新地の業者に電 話で取材したところ、次のような返答が 返ってきた。
「まず、お客さんを上げるじゃないですか。そのまま部屋に行って、プレイにす ぐ入るっていう感じなんですよ。お客さ んもそれ目的で来られてるんで、無駄な会話とかもないまま、作業のようなかた ちで仕事していただくようなかたちにな りますね」。
「基本的に15分なんで、まあ入れるっていうことになりますよね。チューして フェラチオして、ゴムつけて入れるってい う流れ作業だと思っておいていただければ大丈夫なんですけどね」
 このように、飛田新地ではまぎれもなく「本番」=「違法売春」が今も行われ ている。
 売防法に抵触する違法な売春はダメだと発言していた橋下市長は、違法売春が 行われている飛田新地料理組合の顧問弁 護士を務めていたという過去を、どのように説明するのか。
 違法な売春が行われていた事実はない、と強弁するのか。自分は何も知らな かったと「無知」を装うのか。知っていた 上で顧問料をもらっていたなら、違法性を認識していたことになる。
 弁護士としての品格も問われるが、そのような業者の違法行為の横行を、行政 の長として黙認してきた市長としての責 任も問われるだろう。そして合法な風俗はいいが、違法な売春はダメだと公然と 主張していた政治家としての言動の責任 も問われる。
 IWJは、5月23日の定例会見で、違法売春が行われている飛田新地で顧問弁護士 を務めていた過去についてどう釈明する のか、直接質問をぶつけた。しかし、橋下市長の回答は、以下のようなものだっ た。
「ここで答える話ではないですから。風俗営業というものは、パチンコ業も含め て、風俗営業です」
 橋下市長は、飛田新地料理組合の顧問弁護士を務めていたという経歴には一切 触れず、パチンコ業も含めた風俗営業一 般にすり替える回答をした。ここ、記者会見場で答えるのではなくて、どこで答 えるのがふさわしいというのだろうか。
※2013/05/23 【大阪】橋下徹大阪市長定例会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/80599(以上 文責 岩上安身氏)
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 岩下氏が指摘されるように、
①売春防止法に抵触する違法な売春はダメだと発言していた橋下市長は、違法売 春が行われている飛田新地料理組合の顧 問弁護士を務めていたという過去を、どのように説明するのか。
②違法な売春が行われていた事実はない、と強弁するのか。自分は何も知らな かったと「無知」を装うのか。知っていた 上で顧問料をもらっていたなら、違法性を認識していたことになる。
③弁護士としての品格も問われるが、そのような業者の違法行為の横行を、行政 の長として黙認してきた市長としての責 任も問われるだろう。
④合法な風俗はいいが、違法な売春はダメだと公然と主張していた政治家として の言動の責任も問われる。
 これら四点が問われる橋下徹氏の大阪市長としての政治家として弁護士として の根本的問題は、果たして出直し選挙に 出馬する資格があると言えるのだろうか。四点の問題点の指摘に回答していない 橋下氏は、疑惑の指摘に応えぬまま、強 行突破して再び大阪市長になるというのだろうか。
 結論として言えば、再出馬したとしてもそれで当選させてしまうようなら、大 阪市民は国内のみならず世界中の嗤い者 になるだろう。政治後進国国民として。
 また、仮に橋下徹氏を追い詰めたとしても、なんなくやすやすと再当選させる ようなら他の政党の議会制民主主義を機 能させる能力が問われることだろう。「大阪再生」のために、大阪市民と各政党 の大阪支部とが問われていると言えよう 。
 また、政治力学として、維新の会が追い詰められることしで、安倍自公政権の 相次ぐ極右反動主義路線に基づく問題発 言や行政が目隠しされ、参院選結果などで自民党に維新の会の支持票が回ること も予想される。そのことは問題の論旨と は離れるけれども、政治の力関係として直接的に影響を与えていくこともほぼ間 違いあるまい。十二分に留意しておくこ とが必須である。

===増 補================================
橋下市長の問責、否決へ=自民共提出も公明反対―大阪市議会
時事通信 5月30日(木)16時33分配信
 橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)の従軍慰安婦問題などをめぐる一連 の発言に関し、大阪市議会の自民党、民 主党系、共産党の3会派は30日夜の本会議に、橋下市長への問責決議案を提出す る方針を決めた。ただ、当初は賛成の意 向を示していた公明党が一転して反対に回ることを決めたため、決議案は反対多 数で否決される見通しとなった。
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 こうして橋下徹大阪市長問責決議案は、公明党の「関ヶ原の戦いにおけるエラ イ大名小早川某の寝返り」のような仕業 でどんでん返しで幕を閉じた。