東京都議選で自公両党の圧勝で、野党は日本共産党の倍増の17議席獲得だけが
際だったがまさに敗北という政治情勢で参院選を迎える国会り最終日。
唖然とする事態が起きた。
予兆はそれ以前からあった。フェィスブックでみどりの風代表の谷岡くにこさん
の参院予算委員会での様子をよみながら、予算委員会に安倍総理や関係閣僚が一向
に出席してこない。公正に記せば、与党側は平田健二参院議長の国会運営に抗議し
ての欠席と主張している。
だが野党側やマスコミの論評では、都議選勝利した自公にとって、アベノミクス
も円高や株安の再燃でぼろが出始めて、原発セールスを海外訪問で行ってきた安倍
政治や参院選公約で原発再稼働を打ち出し、沖縄の基地を辺野古に移設したりオス
プレイを国内に飛ばせるなど、相次ぐ衆院選の公約違反が際だってきた。いわゆる
「安倍総理隠し」にうってでて、そのまま国会閉会を迎えようという魂胆でいたよ
うだ。
ところが、生活の党森ゆき子議員、社民党福島瑞穂議員、みどりの風谷岡くにこ
議院が三名連名で、「総理や閣僚は国会に出席しなければならない」とする憲法
63条違反で問責決議案を国会に提出したところから事態は一気に動き始めた。
「電気事業法改正案」「生活保護法改正案」「生活困窮者自立支援法案」の審議に
前向きだった民主党は、自公両党が「問責決議案」審議に応じると伝えてきたこと
に、驚き採決に参加することにした。共産党、みんなの党、維新の会など野党全党
がこの採決に動いた。
民主党は、生活関連法案採決後に、議長不信任決議案、総理問責決議案を考えて
いた。しかし自公は議長と総理に対する決議案審議を先にすべきと主張した。
結果は125議席の問責賛成と105票の問責反対で、問責決議は採決され
た。
総理は、野党の横暴のために生活重要法案は廃案になったといった。テレビ朝日
の「報道ステーション」の男性キャスター、TBSテレビ「NEWS23」の男性
キャスターも生活重要法案が廃案になり、会期末国会は問責だ不信任だとガタガタ
して終わったと同様にコメントした。
しかし、ほんとうに与党に生活関連補運を重視するというのなら、参院予算委員
会にずっと欠席し続けて閉会当日まで法案を審議する姿勢をとらなかった安倍総理
と閣僚の姿勢はなんだったのか。民主党は海江田代表を率先に、法案審議にずっと
取り組み、問責決議案を参院で審議する当日も、先に生活関連法案先議を主張した。
それを後からと主張したのは、したたかな自公両党である。
「安倍総理隠し」から、一転、閉会後に総理記者会見を開き、「衆参ねじれ」を
11回も話し、野党が問責決議案を持ち出したから、生活かん連法案は廃案になっ
たとアピールした。巧妙な世論操作であり、たぶん参院選の選挙運動でこのことが
拡散スピーカーとして使われることだろう。
だが、「電電法案」は原発有利にするだし、「生活保護法改正案」は、生活保護
をより厳しく制限するための「改正案」である。もうひとつも、福祉を必要とする
国民にとって少しも生活再建の法案ではなかった。
これらの経緯を通して、国会の魑魅魍魎とした様子がわかるが、これは義務教育
の児童会や生徒会の子どもたちによる進め方にも劣る。国会の権威と、初歩的な
駆け引きの連続やマキャベリズムに終始している。もう少し国権の最高機関にふさ
わしい議論の応酬や議案の取り扱い方はできないものか。
唯一希望がもてるのは、野党の女性議員三人の勇気であろう。
社民党も生活の党もみどりの風も、都議選ではほぼ全滅して一議席も獲得しえなか
った。国会でも参院選で議席獲得は厳しい闘いだ。
それは、これらの三党が政治的に劣るということか。そうではあるまい。
私は今が過渡期であるとみる。かつて社民党が社会党の頃、総評・社会党ブロック
は、国会の三分の一を超える政治勢力だった。中曽根康弘政権によって、社会党は
総評の主力労組である国労に対しての国鉄を分割民営化することで、政党も労組も
解体せざるを得なかった。「去るも地獄残るも地獄」と評され、国労の組合員から
かなりの自殺者が出た。すさまじい労働権の侵害と民主主義国家とは相反する弾圧
が全国を覆った。やがて社会党のかなりの数が民主党に移り、社民党は闘う政党と
して、残った。総評も連合に多くの組合員がうつり、残った組合員は、ナショナル
センターとしての全労連か全民労協に 加入した。
生活の党は、民主党が政権交代をなしとげた時の主力メンバーがつくった。
みどりの風も民主党が初期の福祉社会路線から逸脱した時に、女性議員がつくりあ
げ、国民新党から移った議員もいた。
私はいま政界が再編期にあると思う。
自民党公明党維新の会みんなの党は、保守政党である。
共産党社民党は護憲政党であり、みんなの風や緑の党、生活の党、日本未来の党は
21世紀型の新政党である。参院選において、脱原発法制定ネットワークは、
脱原発政治連盟を政治団体としてたちあげた。選挙区にいる脱原発候補を推薦して
候補者を広く国民に知らせ、その当選をおしあげようとしている。
また護憲円卓会議は、幅広い憲法擁護の政党団体を結集して護憲政治家当選を広げ
ようとしている。日本共産党は、綱領規約に則って独自の運動を地道に広げ、東京
都議選での躍進を国政でも期したいとしている。しかし、かつて衆院で五〇議席、
参院で四〇議席の議席水準を比べ ると、いまの五議席~十議席は、本来の力量を
十全に獲得しているとは言えない。その原因は共産党の主体的側面というよりも、
国際的な政治・社会情勢に即応した政治と運動の様式をいまだ獲得しえていない
ところにある。
いつの時代にも支配勢力がいる。この勢力が民衆を統治支配するために真っ先に
時代の要求を先取りしてそれを統治にいかす。グローバリズムや新自由主義を取り
込んだ自民党や民主党右派がそうだった。このグローバリズムや新自由主義に対し
て、日本でも民主的知識人たちから「福祉社会構想」とその研究会による具体的
事例が対応策として出てきた。こういったことが、日本の政界で保守も革新もそれ
ぞれが政策を研究して具体案を示していく時期にはいった。来月の参院選に間に
合わないだろうけれど、小沢一郎氏は次の参院選は衆参同時選挙になると見ている。
その時まであと三年間。この期間に観念だけでなく、理念も具体性も政治主体も
検討しあっていくことになろう。
私たち日本人にとどまらない国内の民衆が、生活、生命、労働、社会保障などの
セーフティガードから外交、産業などに及ぶまで壮大な連携しあう海図(チャート)
を指し示すことが求められている。それまでの三年間、さまざまに生起する個々の
難問奇問に民衆の側に立って取り組むさまざまな勢力の主体的努力が要請される。