憲法改悪をもくろむ支配層にとっても乾坤一擲の勝負のサイは投げられた。
史上三位の低投票率の結果は、自民党の圧勝に終わった。一人区は、沖縄県
を除いて、自民党すべてを公明党すべてが組織ぐるみ支えてほぼ完勝だった。
維新の会が八議席、みんなの党が八議席だったから、自民維新みんなの三党
をあわせても国会の3分の2とはならなかった。
しかし、公明党や民主党の内部にいる改憲派議員の動き方によっては、参
院でも改憲発議は危険な可能性をはらむに至った。
それに対するに護憲勢力はどうか。最大の特徴は、選挙の度に後退してい
た日本共産党が改選議席三を大きく上回る八議席を獲得したことは、大いに
讃えられる。特に選挙区で東京、大阪、京都で勝利を収め、開票が最後まで
もつれこんだ神奈川選挙区は開票率94%でも最終議席が決まらず、95%
になり、前回トップ当選百万票台の民主党候補に当確が出た。
私は、ミクシイブログで「はたの君枝小池あきら!勝手連神奈川」をつく
り、たえず日本共産党の2人の候補の動静や政策、意見などを六月中旬から
発信し続けた。街頭演説にも2~3千人が集まった横浜駅前や川崎駅前には
行かないが、近くの横浜市内や川崎市内の街頭演説会には差し入れのアイス
をもって聞きにい った。民主党牧山候補と共産党はたの候補の得票は、それ
ぞれ461006票と444955票。約46万1千票と約44万5千票。
その差は1万6千票。畑野君枝候補は一度参院選で当選したことがあるが、
その時を除くと今回は相当の得票を獲得した。日本共産党が11議席を獲得
し、議案提出権や党首討論に参加する躍進を見せたことは、画期的であった。
横浜市では、民主党が優勢だった。同じ大票田の川崎市では7区中の五区が
共産党畑野候補の圧勝だった。両者の差は全体の得票でも0.1%。
これに対する護憲勢力は、社民党が比例区での一議席。みどりの風が議席
を失った。生活の党も議席を獲得できなかった。沖縄では、社会大衆党党首
の糸数慶子さんを、社民・共産・みどりの風・生活が支持し、唯一の革新共
闘は沖縄県民の自覚的投票行動によって、自公の合体選挙を破った。
また、社民党比例区で沖縄県選出の山シロ博治さんは11万2641票を
獲得し、辛淑玉さんら護憲派文化人の支持に応える得票を得たが、社民党総
体の議席が少なかったために、当選はいま一歩だった。緑の党から出た沖縄
出身のミュージシャン三宅洋平候補は、ライヴに公約を取り入れ若者を中心
に17万6970票を獲得。得票そのものから見れば、比例区で当選した自
民党の議 員五人よりも得票が多かった。五人の中には丸山和也弁護士、ワタ
ミ社長の渡辺美樹氏や前大阪府知事太田房江さんらが含まれる。比例区は、
全体の得票が基準になる建前であるが、庶民感情として納得がいきがたい結
果である。
みどりの風は代表谷岡くにこさんが代表を辞任した。私はブログに「谷岡
くにこさん、かく語りき」を立てて、その言説の見事な政治家としての発言
をとりあげ続けた。共産党や社民党とともに、護憲脱原発を党首討論会でも
臆せず発言し続けた発言には、戦後の参議院で良識派の緑風会を標榜する良
心的知識人の面目躍如といった場面が目立った。
みどりの風、生活の党、社民党、緑の党らの特に安倍自民党改憲草案を批
判する護憲勢力は、今後自らの 道理ある政策を実現するための手立てが必要
である。
一方、維新の会の共同代表である石原慎太郎氏と橋下徹氏の対立、みんな の党の渡辺喜実氏代表と江田憲司幹事長との対立は深刻なものになっている。 橋下氏は都知事選で敗北すれば辞任すると公言した。参院選が迫っているの で、と辞任を延長し、結果はマスコミでも「維新失速」と言われる敗北であ る。それでも居座る橋下徹氏とは、口から方便でいろいろなことを思いつき でいうが、その責任感は最低のレベルである。どれだけ国際的な日本の品位 を落としたか本人は自覚がない。マスコミの大誤報と叫び続けてますます失 速を早めていった。また民主党は、陣頭指揮の海江田代表が、自らの責任を とることもなく、幹事長の細野剛志氏は、責任をとって辞めると言い出した が、なんと菅直人元総理の処分をと持ち出した。海江田・細野の民主党首脳 は一体なにを考えているのか。離党した鳩山由起夫氏への処分健闘の末の抗 議といい、旋回東京選挙区からトップ当選し、生活ネットワークなど地域に 根ざした大河原候補を公示二日前に無所属とし、新自由主義派と目される鈴 木寛氏を公認したが、二人とも落選したのは選挙の責任者細野・海江田の両 氏である。こうして民主党は前原・野田・岡田諸氏ら新自由主義政党として みんなの党や維新の会と合流していく布石をうったと見られる。創立者で私 費を出して政権交代を果たした鳩山由起夫氏に無礼きわまりない態度を示し 続ける民主党には、もはや政党としての道理がないかのようだ。
安倍自民党総裁は、なんとかして公明党から維新の会やみんなの党と乗り 換えようと想っているのだろうか。もっとも今回の一人区圧勝は公明党のお かげである。公明党を改憲派にもっていこうとしているのかも知れない。 長老古賀誠・野中広務両氏から忠告をされても、それを黙殺して暴走し続け る安倍自民党は、自民党最後の党首となることもありうる。
今回、投票率が低かったのに、全国のあちこちで終了時刻を納得のいかぬ 理由でかなり早めて開票所終了としてしまった場所が目立った。また、選挙 区と比例区の投票用紙を渡し間違えたり、投票場所に選挙区の投票台に比例 区の名簿をはったりその逆をやったり、初歩的な間違いが新聞の全国版にか なり見られた。また、「みどりの風」と「緑の党」をならべたり、集計で問 題が見られたという報道がなされた。代表の谷岡くにこさんは次のようにツ イッターで述べている。
------------------------------
谷岡郁子?@kunivoice7月25日
みどりの風と石井みどり氏の票の案分の仕方が、京都、山形の一部で間違っ ていたとの報道がありますが、これは早くから予想されたことで、我々は、 全国選管に文書で明確な基準を示すよう再々申し入れましたが、一貫して拒 否されました。全国全ての票を再調査すべきです。
------------------------------
さらに私はNHKテレビの「クローズドアップ現代」の特集を見て驚いた
ことがある。
自民党は国会議員の平井氏を室長に、自民党メディアサポート室を立ち上
げた。自民党の一室で全国のツイッター、フェィスブックなどを対象に大勢
が取り上げている言葉を収集、分析してその結果を全国に15万人いる「自
民党ネットサポータークラブ(J-NSC)」に情報を流すとともに、全候
補者に、この言葉とこの言葉を入れて演説を組み立てよ、とか原発再稼働申
請が国民に影響を与えると知ると、「安全第一」を必ず入れてから演説をす
るように、などの詳細で具体的な指示を与え続けた。そうやっても、支持率
が伸びない候補者には、直接呼びつけてこまかく支持をするよう な事例が何
件もあったようだ。テレビの報道場面では二、三人いた。
国民のツイッターなどの情報を一元化集約して選挙手法を流し圧勝した。
だがこんな操り人形のような政治手法で当選しても、自ら考え判断し行動す
る政治家というものがあるだろうか。これこそ一党独裁政治の手法である。
今回出口調査や選挙情勢を流しての国民コントロールは情報として入って こなかった。しかし、選挙そのものが国民の情報を大量集積して選挙に投入 する。これだけの準備態勢を用意して整ったから、自公政権は、インターネ ット解禁選挙を行ったのであろう。
衆参で圧倒的多数を得た安倍自公政権は、原発再稼働、原発海外セールス
を続け、憲法を自民党草案を叩き台として改憲の地ならしを進めていくこと
だろう。しかし、日本共産党に寄せられた国民の支持は決して小さくはない。
無名の新人吉良よし子さんが東京選挙区五議席で第三位で当選したのは、日
本共産党の奮闘のせいもあるが、首都圏再稼働反対要請行動の毎週金曜に今
も展開されている抗議行動で、何度も参加し続けて、その新鮮な行動が都民
の若年層中心に支持され、もりあがっていったからだろう。
同様に東京選挙区で無所属から立候補した山本太郎さんの場合もそうだ。
私は代々木公園や明治公園で大江健三郎氏、鎌田慧氏、沢地久枝氏、落合惠
子氏などが主宰 した脱原発1000万人アクション抗議集会に参加した。
10万人集会では17万人が集まった。これらの脱原発市民運動がついに
国政選挙にリンクした。その高まりがみどりの風から立候補した福島双葉町
元町長だった井戸川克隆さん、沖縄県の米軍基地に強く抗議する緑の党から
立候補したミュージシャン三宅洋平さんや社民党から出た山シロ博治さんら
の健闘だった。東京選挙区の山本太郎さんはその行動に強く感銘を受けた若
者たちばかりでなく、フェィスブックで孫崎享さん、色平哲郎さんらの知識
人も終盤で支持を訴えた。山本さんには、生活の党も勝手連的に応援に入っ
た。また選挙参謀として動いた市民の党の齊藤まさしさんらの貢献もあるだ
ろう。
今回の選挙は自公圧勝に終わった。野党では日本共産党が十年以上続いた
低迷を脱して、最大の護憲派野党として成長をとげた。「日本共産党カクサ
ーン部」の「雇用のヨーコ」さんらのキャラクターと取り組みも、ニコニコ
動画を駆使した「とことん共産党」など若者の政治参加につながるくふうは
米紙「ウォールストリートジャーナル」でもとりあげられた。
さらに市民運動と選挙とが今回はリンクに成功したといえよう。
神戸発の「護憲円卓会議」、「緑茶会(脱原発政治連盟)」「平和への結集
をめざす市民の風」など数々の市民運動が活性化している。護憲派野党は、
市民運動と提携しながら、日本共産党を孤立させず野党として活性化を願う。