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「現状分析と対抗戦略」討論欄

京都府知事選を通してみた都知事選・国政選挙と日本共産党

2014/4/11 櫻井智志

 4月6日に行われた京都府知事選挙は、ここ四回の府知事選をふりかえって も、かなり低い投票率だった。大雪のなかで行われた東京都知事選挙の投票率が 46.14%であったことを思うと、なぜ京都府民が34.45%の投票率で棄 権者率が65.55%であったのか。人数で言えば、有効投票者は696,939人、 棄権者は1,348,753人である。
 約70万人は投票したがその倍の140万人弱が投票所には行かなかったとい うことである。
当日有権者数:2,057,594人 最終投票率:34.45%(前回比:-6.64ポイント)
2014京都府知事選挙34.45%
2010京都府知事選挙41.09%
2006京都府知事選挙38.44%
2002京都府知事選挙49.18%
 では、その投票結果を見てみよう。
候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持
山田啓二  60  無所属   現 481,195票 69.0% 推薦:自民、民主、公明、維 新
尾崎望   59  無所属   新 215,744票 31.0% 推薦:共産
 日本共産党以外のほとんどの政党が現職に相乗りし、社民党も共産党と共闘せ ずに実質現職の山田氏への投票を含む自主投票に回った。
 私は、誰がどれだけ得票したかということ以上に、京都府民の6割5分はもは や京都府知事選挙を否定したことの意味を考える必要があると思う。
 考えられる最大の要因は、現職が立候補し、ほとんどの政党が支持しているか ら、投票しても無駄だというあきらめにも似た感情が有権者を支配したと思われ る。この投票率の問題は、選挙結果と同時に日本に議会制民主主義が形骸化する ような政治の現状がなかったかを吟味するという点で、今後も無視してはいけな い重大な問題である。
 尾崎望候補は、140日前から立候補を表明して府内をくまなく回った。選挙 は日本共産党のきめこまかな支部を単位に工夫をこらした選挙戦に挑んだ。イン ターネット選挙にも取り組み、共産党とその支持者以外にも一部の市民との共闘 も行われた。尾崎氏は小児科の医師で京都民医連の会長である。民医連の医者や 医療従事者がさかんに声援を送った。さきの参院選京都府選挙区の定数2で民主 党候補をやぶり、自民党と共産党が当選した。日本共産党は中央の幹部や全国の 党員や支持者が応援に力を注いだ。
 尾崎氏の得票率は31%。これを東京都と比べてみよう。一千万人都市の東京 都では、有権者における日本共産党とその支持勢力の割合は、京都府などの比率 と比べて独特の実体がある。安 易に比較はできないので、一定の目安として考 えている。都知事選は、多数乱立であったから、候補者数二人の京都府と単純比 較はできないけれど、日本共産党が推薦し共産党勢力が他の無党派層などととも に投票したのは、宇都宮健児候補が圧倒的に多いと推測される。その宇都宮氏 は、20.18%なのである。
順位 候補者名 党派 新旧 得票数 得票率 惜敗率
当選 1■舛添要一  無所属 新 2,112,979 43.40%- ---
   2■宇都宮健児 無所属 新 982,594.767 20.18% 46.50%
3■細川護煕 無所属 新 956,063 19.64% 45.25%
4■田母神俊雄 無所属 新 610,865 12.55% 28.91%
 なんと尾崎氏は宇都宮氏が得た得票率よりも10%以上も高かったのである。 そのことからすると、尾崎陣営や尾崎候補に問題があったというよりは、現職候 補が他の政党とともに無党派層、浮動層をも巻き込んで得票したことがうかがわ れる。
 京都府は伝統的に日本共産党の力量が高い。戦前でも、労農党から立候補して こっかい議員に当選した山本宣治は、実質的には日本共産党と無関係ではなかっ た。戦後も谷口源太郎のような労働運動家をはじめ、労働農民運動が活発であっ た。戦前の京都大学への弾圧に抗した大学人や学生運動も歴史に残るものがあ る。
 同じ4月6日には、全国で20地域ほどの投票が行われた。
その中で、京都府与謝野町議会選挙では、[定数 / 候補者数}16 / 18のうち無 所属2人が落選。共産は新人一人に加えて現職二人の三人当選。圧勝だった。あ とは公明1議席。他は無所属が当選した。
664票 和田 裕之 39才 共産現 自営業
602票 高岡 伸明 55才 共産新 会社員(ミシン販売)
674票 伊藤 幸男 66才 共産現 政党役員
郡部や町村部は、都会に比べて過疎地や田舎とみなされている。そんな過疎地な どでの政治活動は困難なこともたくさんあるだろう。これからの日本社会で、農 村部や過疎地での取り組みは重要である。
同じ京都府内で府知事選の敗北と、与謝野町議会選挙の躍進とをどう連携して 把握したらよいか。
 与謝野町議会は、当選者数は16人である。京都府知事選は当選者は1人であ る。参院選京都選挙区は定数2である。東京都知事選は当選者1人である。参院 選東京選挙区は当選者5人である。躍進をとげた東京都議会議員は当選者数十人 である。東京都知事選は当選者1人である。
 何を言いたいのか?
当選者が複数以上いるところで、日本共産党と推薦・支持する議員は当選して躍 進している選挙もかなりある。しかし、その地域で当選者が1人しかいない首長 型の選挙や国会議員選挙でも定数1での選挙はかなり苦戦を強いられてきた。先 の参院選選挙区選挙でも、当選した東京の吉良よし子さん、大 阪の辰巳孝太郎 さん、京都の倉林明子さんはそれぞれ定数5、定数4、定数2の複数当選者選挙 区である。
 こうして見てくると、京都府知事選は当選はできなかったけれども、当選者が 一名しかいない首長選型(外国の大統領選型)の選挙では、どんなに日本共産党 が躍進しても、当選していないのは、わずかの例外を除くと実現していない。例 外とは、全国の市町村選挙で、日本共産党員や共産党推薦の候補者である。革新 統一が壊れた大阪府知事選挙で黒田了一知事が当選した例がある。また当初社会 党から立候補し、共産党は対立候補をたてたこともある京都府の蜷川虎三知事 は、民主府政をつくる会から社会党が離脱した後は、政党としては日本共産党単 独の推薦であった。  今年、来年と統一地方選挙とそれに準ずる選挙が全国各地で行われる。議会選 挙は、きっと日本共産党は躍進するだろう。首長 選挙はどうか。当選する市町 村もあろうが、京都府や東京都の例を見ると、もう少し異なる発想が求められて いる。
 異なる発想というのは、首長選挙や衆議院や参議院の定数1の選挙区では、民 主連合政権構想をより具体化させた「統一候補」の構想である。全国の市町村や 定数複数以上の選挙区では、今までどおり日本共産党の勢力で立候補し、選挙戦 を闘う。しかし、国会の小選挙区と全国の大都市では、日本共産党単独でなく、 「民主連合政権統一候補」に対する構想を具体化してその政策や準備構想を詰め て、共産党の側から積極的に「民主連合政権」を前提とした統一候補擁立の働き かけを進めることだ。
 以上の構想についてはいつか機会があれば、その構想についての具体的な吟味 をつめて続編を書きたいと考えている。かなり時間は空くと思うが。