国賓待遇という鳴り物入りで、かなり強引にアメリカ・オバマ大統領を招いて行われた米日首脳会談。日本の国民は何を思い何を考えたか。それらを振り返ることで、最後に私の感想を記したい。
日本共産党志位和夫委員長は、以下の諸点を公式声明として発言した。
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一、日米首脳会談では、「日米同盟の強化」が強調され、沖縄の新基地建設の推進、日米ガイドラインの見直しが合意された。また、共同記者会見で、安倍首相は「集団的自衛権の行使容認に向けた検討状況を説明し、オバマ大統領から『歓迎し、支持する』との立場が示された」とのべた。これらは、日本国憲法に逆らって、日本を「海外で戦争をする国」にしようというものである。わが党は、こうした危険な日米軍事同盟の強化にきびしく反対する。
一、尖閣諸島問題について、オバマ大統領は、「日本の施政下にあり、日米安保条約第5条の適用範囲だ」とのべた。同時に、大統領が、この問題について、「対話を通じて平和的解決をめざすべきだ」「エスカレートし続けるのは正しくない。信頼醸成措置を講じるべきだ」と繰り返し強調したことは、注目すべきである。
一方、安倍首相は、この問題について、「力による現状変更に反対」とのべるだけで、平和的交渉の努力については一切の言及がなかった。
領土に関する紛争問題は、あくまでも国際法と歴史的事実にもとづき、冷静な外交交渉によって解決がはかられるべきであることを、強調しておきたい。
一、TPP交渉について、首脳会談を前にした日米交渉で、日本側は日本農業に打撃を与える関税率の引き下げなどの大幅な譲歩を続けてきた。にもかかわらず、首脳会談で合意に至らず、アメリカ側は日本によりいっそうの大幅な譲歩を求めている。このまま交渉を続けるならば、農業や食の安全をはじめ、広範な分野での国民生活と地域経済への打撃が拡大するだけである。TPP交渉からの即時撤退を求める。
一、共同記者会見で、靖国参拝について問われた安倍首相は、「不戦の誓いのために参拝した」「どの国のリーダーでも当たり前のことだ」と、居直りの姿勢を示した。こうした姿勢を続ける限り、日本は、アジア諸国の信頼を得ることができないだけではなく、首相の靖国参拝を「失望」と強く批判した米国との関係でも、矛盾や軋轢(あつれき)は広がらざるをえないだろう。歴史を改ざんする姿勢を改めることが強く求められていることを強調しておきたい。
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私は志位氏の記者会見の内容は、きわめて妥当で日本国民のひとつの見識と考える。オバマ大統領は、さかんに「集団的自衛権」を認めさせたい安倍首相に、それは決して中国に攻め入る軍事態勢の強化を意味しているわけではなく、交渉と対話を通じて、平和を構築しようとする両輪のものであることを安倍首相に釘をさしたけれども、聞く耳を持っていない浮かれ模様の安倍総理は、今後国会で公的発言の際に「オバマは集団自衛権を認めて応援している」というとんでもない誤読のまま突進していく醜悪な姿を晒さなければよいのに、と思う。
野党的精神のジャーナリズム「日刊ゲンダイ」政治面は、こう述べている。
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すし会談からピリピリ “TPP決裂”招いた安倍お子様外交
国賓待遇や共同声明でスッタモンダし、何から何まで異例ずくめだった日米首脳会談の最後はやっぱり、“決裂”だった。
全く合意点が詰められず、首脳会談後も閣僚級の協議が続いていたTPP交渉は今日午前も引き続き協議が行われる見通しだったが、中止になった。代わりに甘利大臣が記者団に経緯と進捗状況を説明したが、その中身たるや、空っぽもいいところだ。
「私とフロマン通商代表は昨日の午後、再度協議し、昨晩は事務方で深夜の作業を続けました。首脳、閣僚協議で、重要な課題について、前進する道筋をつけることが確認されました。日米が協力し、早期妥結に導くことが重要であり、連携して加速してまいりたい」
たったこれだけなのである。記者団が「大筋合意に至らなかったということか?」と聞くと、「何が大筋合意かよくわかりませんが…」とゴマカした。オバマ大統領の離日直前に出てきた共同声明も「TPPを達成するために必要な、大胆な措置をとる」「日米安保は尖閣を含む日本の施政下全ての領域に及ぶ」という中身で、サプライズなし。改めて、前代未聞のオソマツ首脳会談になったのだが、その背景は何だったのか。
■共同声明は1日遅れ、形だけ
「共同声明でこれだけモメた首脳会談は前代未聞だと思います。ただ、TPPに関しては、米国では数日前から<合意は難しい>と報道されていた。妥結に至らないのは想定内のことです。それなのに、大統領が日本側に強硬に譲歩を求めたのは、日本に対して良い感情を持っていないからでしょう。大統領の訪日直前に、147人の国会議員が集団で靖国神社を参拝したことも、かなりマイナスの心証を与えていると思います」(元外交官の孫崎享氏)
オバマ米国は妥協しないどころか、共同声明を“人質”に譲歩を迫る場面もあったという。首脳会談前夜の「すきやばし次郎」での夕食会も、かなりピリピリした雰囲気だったようだ。
「オバマ大統領はいきなりTPP交渉の話を始め、その場で、それぞれフロマン代表と甘利大臣に電話を入れて、早期妥結を指示することになった。オバマ大統領は24日朝の皇居での歓迎式典の後も、フロマンに<もっと詰めろ>とネジを巻いたそうです」(官邸関係者)
それで、首脳会談後の甘利担当相とフロマン米通商代表部代表の再協議がセットされたのだが、牛肉、豚肉の関税や自動車の安全基準で折り合えなかった。コメ、麦、砂糖の関税は維持される方向だが、これは牛、豚の関税大幅引き下げが条件だから、何も決まっていないに等しい。
安倍や甘利は「国益を守るために安易な妥協はしない」とかキレイゴトを言っていたが、だったら交渉のテーブルを蹴飛ばして、撤退すればいい。それができなかったのはこんな事情だ。
「総理は共同会見で『自由で開かれたアジア太平洋地域を発展させ、中国を関与させる』と言っていたように、TPPを経済というより安全保障の枠組みで捉えている。TPPは中国包囲網だという認識なのです」(官邸関係者)
だから、交渉を蹴飛ばすわけに はいかないのだ。中国に対抗するために、国を売られたらたまらない。
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引用ばかりしていないで、私の感想を述べたい。
安部晋三氏は、意外なところで気配りや仕掛け、奇襲作戦のようなゲリラ戦がお得意のようだ。日米トップの首脳会談を、その場にいる寿司屋の板前さんたちがすべて聴くことのできる場所で親近感を演出することに成功した。オバマは寿司屋でトップ問題を忌憚なく持ち出して、厳戒態勢で警備させながら、内部はガラガラの空っぽの「非安全地帯」。オバマは、アメリカの利益優先で日本の農民の生活などまともな配慮はしていない。オバマはアメリカの国民の利益を守るために堂々と安倍首相の「おもてなし」(裏に下心見え見え)を蹴っ飛ばしても自国の国民の利益を真剣に考えている。対する安倍総理は、農民の暮らしを守るための真剣な抗議と 意思表明をするどころか、オバマが「安倍総理大臣」と英語で呼んでも、じっとオバマを見つめて「シンゾウ」「バラク」の寿司屋でのやりとりをそのまま公式協議の席でも状況判断もせず、場違いなファーストネームの「バラク、バラク」「あなたは生涯で最も美味しい寿司を食べた」(!!)。何のことはない。総理自ら真剣に日本国民の幸福を守ろうとする意志も知恵も皆無なのだ。
オバマ大統領やアメリカ政府は、核兵器開発や親戚政治家を惨殺させた北朝鮮よりも、日本こそが東アジアで最大の危険な国家であるという認識をもっている。このことを日本国民が知る機会を持てただけでも、無残な首脳会談の失敗の意味はあるだろう。共同声明も出せないような首脳会談と国賓扱いをするために、天皇 陛下をさんざん利用した。天皇がオバマを「おもてなし(!!)」したいからと無理矢理強行日程をおしつけた。安部晋三、この政治家は国民はおろか天皇夫妻をさえ、自らの政治的虚栄心を満たすためには、平気で利用する。私は宮中晩餐会や対面の場面のやりとりや姿をテレビで見ていて、オバマ大統領と天皇夫妻のあいだに流れた一国のトップとシンボル同士の「両雄、互いの心中を慮ること、並び立つ大志を知らしめん」と強く感じた。
天皇制や右翼排外主義との関係などを別にした地点で、天皇夫妻の「第一級の知識人」としての見識を知り、偏狭的な排外主義が台頭している日本国内の現在の天皇が、あのような知性的理性的なご夫妻であることに不幸中の幸いを思う。オバマ大統領をはじめアメリ カ政府に通ずる一級の外交は、どのような品格ある人物であるか。国内で自公政権の閣僚諸氏と自公両党はじめ日本の保守政党はよく認識すべきである。
今後、福島知事選、沖縄知事選、来年にかけての統一地方選と日本のくにの姿は、場合によっては大きく右旋回をターンしきることが危惧される。だが、日本がそのような侵略的軍事国家となった暁には、中国、韓国はおろかアメリカも日本を「東アジアの危機地帯」として、一斉に批判のトーンを強めるだろう。そして、侵略主義国家に、世界各国は容赦なく徹底的な批判を外交や貿易などに広げていくだろう。
アメリカ中間選挙を控えてオバマは、自国の利益を優先してTPP問題にも強圧的とも受け取れる姿勢を示した。その首脳会談の模様はテレビニュースでわずかだがはっきりと真実をさらけ出した。戦争志向政権の外相が、核兵器廃絶外相会議を日本で開いた。次の総裁選を見据えている外 相は、歯がうくような核兵器廃絶の演説をぶった。その様子を見ていた広島の被曝した県民は、怒りを表明して被曝した広島の民衆を愚弄していると発言した。
何が人間的真実なのか、それを見極められぬ日本の政権閣僚と官庁官僚たち。私たち日本人が権力の弾圧と恫喝と生活の保障の喪失に怯えて、沈黙したりひるんだりしている内に、日本は国際的孤立においやられる。その危機感が、今回の米日首脳会談が残した最大の落とし物である。