それは、はじめに東京都議会におけるみんなの党の女性議員の質問演説の時から始まった。いたずら心やジョークとは無縁の複数の畳みかける性差別の連鎖暴言。ひとりではないのに、都議会自民党はひとりをスケープゴートにして、野党からの都議会正常化の要求を押しつぶした。
しかし、似たような自民党議員による性差別暴言は関西でも、国会でも自民党議員によってマスコミから報道された。あきらかに衆参両院を圧倒的多数派を獲得して、ねじれという名の批判的機能を喪失した自民党のおごりのあらわれである。
ここ最近、動画やツイッターでグローバルに有名になった議員の釈明会見にまるで幼児の駄々っ子のような了解不能な泣き喚きの連続は、呆れや驚きを超えて情けなくなる。
このような戯画化された世界のような一方で、自治体がまともに「集団的自衛権」反対決議を掲げることが連続した。一概に自治体総体を否定的にみなすことは、複合的な実態に対応しない面もあるだろう。今時「階級闘争」とい言葉は死語になったのか、頻繁には見かけないけれども、私は「資本家階級が世界中に広げられた剥き出しの利潤搾取の策略によって苦しめられた諸民族と勤労者と国民レベルの広範囲の労働者階級との闘争」は、国際的な規模で激しく続けられていると考える。
日本における地方自治体での無気力な議会の実態は、現在的な階級闘争を背後に控え、寡占的な資本家階級が、海外への経済侵略と一対の労働者搾取の国民的規模での無政府的対策を最も忠実にになう自由民主党と巧妙に提携する公明党との政権を利用していることの影響である。しかも安倍晋三首相は、正統派自民党から逸脱した軍事主義的偏向の危険な侵略主義の傾向が強い。
安倍政権の最大の危険な特質は、空疎な詭弁に彩られた無内容な演説で国民を操作しつつ、国民からの意見や批判には全く聞く耳をもっていない独裁主義である。TBSテレビの土曜日夕方の報道番組「報道特集」は、日曜の「サンデー・モーニング」や週日夜の「NEWS23」らとともに、田英夫、古谷綱正、入江徳郎、筑紫哲也などのジャーナリストの自由な伝統を継承している。その「報道特集」がドイツが世界でも有数な民主的なワイマール憲法のもとでなぜナチス・ヒットラーが出現したかに触れていた。ナチスは「憲法を肯定しつつ」、いかなる憲法の条文にもしばられない特殊の超法規的法案を持ち出してきた。『全権委任法』。ヒットラーは紆余曲折を経ながらも、ロシア革命のようにな るかも知れない共産党よりは、ナチスを選択した資本家階級の選択によって政権獲得に有利な位置にたった。
いま日本は、「集団的自衛権」という軍事戦略の一大方針を、憲法を形骸化させるような段取りで自公政権によって押しつけられた。アメリカ政府やアメリカ軍部のせいではない。日本人の傀儡政権をめざす安倍自民党と公明党の連立政権がもたらしたものである。
今後国内を思想的弾圧が吹き荒れることが予見される。言論の自由、報道の自由、労働の権利、それらに寒風が吹きさらすだろう。国民は官邸前抗議に一万人強が連日集まった。国民は無気力でもないし、無力でもない。さまざまな生活不安や苦悩と悩みながらも、戦後民主憲法の申し子として、自分の愛する子どもたちが戦場で他国民を殺戮することを、そして殺戮されることをおそれ、怒りをもって立ち上がった。この国民の心情を、よく批判される日本共産党は、全国に伝え、支持者たちは党員の努力に呼応して全国30箇所以上で立ち上がった。東京、だけではないのだ。
そして立ち上がっているのは、一党一派だけではない。党派を問わず、国民総体の自覚である。
安倍自公政権は、右翼保守反動派の潮流によって支持されている。それは無視しがたい層を占めるに至った。これには都知事選を4期目に放りだした石原慎太郎氏の長年の「功績」がある。自衛隊幕僚長を務めた田母鬼候補が都議選で泡沫候補とは呼べないかなりの動員や得票をたたき出した。この超極右潮流は、戦前の「革新派将校」(政府や財界の要人を暗殺してクーデターを呼びかけたが、うまく軍部上層部に利用され、戦争軍拡につながった)とも連続する思想的連続性をもつ。
さて、以上のような背景をもとにして自治体の惨憺たる実情がある。ところが来年春には統一地方選挙がある。これは全国の政治地図をオセロゲームのように塗り替える。白色と黒色の地図はどう塗られるだろうか。その際に留意すべき点がある。孫崎享氏のような良心的知識人でさえ、集団的自衛権の与党協議の際には公明党に期待した。市民グループの中にも連日公明党や創価学会に要請行動に日参する人々もいた。「日刊ゲンダイ」政治面は、その時に明確に伝えた。自民党は創価学会の支持と公明党の協力がなけば、国会で50議席以上失う。飯島勲内閣参与が恫喝したように、政教一致が問われれば、創価学会の存亡に影響するだろう。ここまでは通常巷間で言われている。けれどその先がある。 日刊ゲンダイ紙は、驚くべき言説を掲げていた。与党協議は、密室内で行われた。ほとんどのマスコミは、自民党の暴走を公明党が抑止しようとしたと伝えた。しかし、積極的だったのは公明党だったのだという。高村自民党副総裁の提案も事実は公明党副代表の北側一雄氏が内閣法制局に作成させ、それを自民党の顔を立てて、高村氏に土産として持たせたというのだ。公明党には最初から連立離脱のつもりは一切なく、予定調和の枠内で解釈改憲として集団的自衛権成立を目論んでいたという。これらの言説は、一庶民が立証するには荷が重すぎるので、そう報道していたことの紹介にとどめる。
公明党は「平和の党」「福祉の党」というのは、うそではないだろう。けれど、解釈改憲や集団的自衛権をという国家の進路の一大問題で、公明党や創価学会が官邸前の抗議行動に立った一万人強のなかにいたのだろうか。もはや自民党の暴走は公明党には止められない。公明党も仲良く暴走している二人三脚のような出来合いのレースてべあるとしたならば。
いまの日本の惨状を救うためにも、地方自治体の本格的な変格に、日本共産党ほか反軍国主義勢力・政党は心して取り組んでほしい。有権者も心して投票を考えたい。安倍自公政権とその手下の官僚組織が、どのような手段をとろうと、日本版「全権委任法」状況を打開して、ナチスへの道を復古するのでなく、戦後民主憲法の道をあゆむ社会にしたい。
「報道特集」は伝えた。自衛隊が派遣されたイラクなどの諸地域では、武器を行使して殺戮しない自衛隊に対する見方は信頼にも似たものがあるそうだ。もしも自衛隊がそうではない、という状況に変わった時に、日本に対する諸外国の信頼は、大きく揺らぎそれは中国大陸に侵略した第二次世界大戦でのアジアや太平洋諸島での日本軍への記憶へと逆転することだろう。